キャラクターが命。キャラがすべて。
物語において、必ず言われることです。佐渡島さんも常々、「物語の圧倒的な魅了は登場するキャラによるもの」と言っています。
では、どうすれば、魅力的なキャラを描くことができるのでしょうか。
そこで今月は、「魅力的なキャラクターをつくる」をテーマに、欠かせない4つの要素「主人公のリアクション」、「周囲からのリアクション」、「ライバル」、「欠点」について具体的に解説します。
今月の内容は実のところ、そのまま自己分析の方法論でもあります。どうすれば自身のtwitterで個を際立たせていけるのか。リアル社会も含めて、キャラづくりへの理解を深めていきます。
2週目となる今回は、キャラを魅力的にするための「周囲からのリアクション」についてお届けします。
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本人のセリフだけではキャラは濃くならない
(以下、佐渡島さん)
今回は、「周囲からのリアクション」について。
キャラクターが立つとは、人としての輪郭が明確になることです。
明確にするための1つの方法が、輪郭の線をはっきりと太くする「本人を濃くする(=主人公のリアクション)」と前回説明しました。その対になるのが、「その人物の周囲を塗る」手法です。周りの人のリアクション(反応)によって、その人物がどんな性格か浮かび上がらせます。
例えば、サッカーがものすごくうまい高校生を主人公にしたマンガを描いたとします。ストーリーの1コマ目で、「オレは、日本一サッカーがうまい高校生だ!」と本人に言わせたら、キャラは立つのでしょうか?
立ちません。こういった指摘を新人マンガ家にすると、「本人が日本一と言っているんだから、キャラが立っていますよね?」と不思議そうな顔をします。僕は、「本人が言っているだけで本当に信用できるの?」と返します。
読者は本人の言葉だけでは、この少年が本当のことを言っているのか、ただの妄想狂なのか判断できませんよね。
本当にサッカーがうまいのかどうかは、周囲のリアクションで説明できます。例えば、主人公の少年がグラウンドでサッカーをしていた。そこに偶然、日本サッカー協会の理事長が車で通りかかり、「ちょっと車を止めてくれ。あの子は誰だ!?」と驚嘆したとします。
サッカー協会の(サッカーに詳しいであろう)人間の言葉を受け取った読者は、「ずば抜けてサッカーがうまい少年なのだな!」と受け取りますよね。主人公のアクションに対する周囲のリアクションは、客観性を備えています。
人気マンガに2次創作物がたくさん生まれるワケ
「周囲のリアクション」は、「周囲との関係値」ともいえます。
物語とは、はじめから終わりまで登場人物が1人で面白いものはありません。物語の面白さは、主人公をはじめそれぞれの登場人物が、いろんな出来事や人とどういう関係値を結ぶかにかかっています。
例えば、アイドルグループ嵐。5人の関係値に、ものすごい興味があるわけですよね。
解散を控えた嵐が仮に、5人全員で「おつかれさま旅行」をした、とします。旅行の様子は、最初から最後まで隠し撮りされていたとします。
我々はその映像で何を見たいのか。5人がどこへ行ったか。何を見てどんな食事をしたのかではありません。圧倒的に知りたいのは、5人それぞれがどんな話をしたか。5人の関係性はどういうものだったのかではないでしょうか。
彼らの関係値はすでに多くの関心があるから、嵐はもはや何をしたって面白いともいえます。
人気マンガ作品に2次創作が起こるのも、同じ理屈です。
『SLAM DANK』の桜木花道と流川楓が同じオフィスで働いていたら? 製造部と営業部にいたら? そんな2次創作物が支持されるのは、ライバルである桜木と流川の関係値が共通認識としてあるから。2人の関係値自体は予想可能ななかで、舞台や時代、年齢など状況を変えて再生産したら、2人はどんな風にしゃべり、ぶつかるのか。読み手はそれを楽しむのです。
関係値を描こうと人物同士のエピソードを描くことで、自然と個々のキャラも立ちます。一方で、登場人物一人ひとりのキャラが明確に立っているから関係値が面白くなることもあります。
「関係値を描くこと(周囲とのリアクション)」と「主人公のリアクション(本人のアクション&リアクション)」は、卵が先かニワトリが先かのような関係。両方を丁寧に描くことが必要なのです。
(翌週へ、続く)
聞き手・構成/平山ゆりの @hirayuri&コルクラボライターチーム
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