物語を魅力的と読者が感じるかは、主人公や登場人物のキャラクター次第。
では、どうすれば魅力的なキャラを描くことができるのでしょうか?
今月は「魅力的なキャラクターをつくる」をテーマに、キャラクターの魅力を引き立たせるために考えたい4つのポイントを紹介します。
3週目となる今回は、「目標を明確にする」についてお届けします。
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目標や、目標への姿勢で、キャラクターの人柄が伝わる。
(以下、佐渡島さん)
繰り返しになりますが、キャラクターが立つとは、その人物の輪郭が明確になることです。
キャラクターの性格や人柄を読者が理解し、「こういう時。このキャラクターなら、きっとこんな行動をとるんじゃないか?」と、読者が予想できる状態になっていることを目指す必要があります。
そこで、今回紹介するポイントはこちら。
“キャラクターが、どんな目標を立ているのかを明確にしよう”
例えば、宇宙兄弟のムッタであれば、第1話の段階で、30歳を超えても宇宙飛行士の夢を諦めきれなくて、宇宙に行く目標を胸のうちに秘めていることが明確に描かれています。
登場人物をわかりやすく伝えるために、その人物がどんな目標を持っているのかを、早い段階で読者に明確に示してあげることは大切です。
目標や、目標への姿勢で、人物の人柄が読者に伝わります。
ムッタであれば、30歳という年齢になっても宇宙飛行士の夢を秘めていることから、宇宙飛行士への憧れが人並み以上に高いことがわかります。同時に、宇宙飛行士の試験すら受けていない事実や、夢から逃げている言い訳を並べていることから、自分に対して自信を持っていない性格であることもわかります。
また、目標については、宇宙飛行士のような壮大な夢でなくても構いません。
クラスで全く目立たない主人公が、クラスのアイドル的な存在の女の子に声をかけること。パワハラが横行し、残業ばかりの職場にいる主人公が、勇気をだして上司に「今日は定時に帰ります」と申し出ること。どちらも立派な目標です。
まずは、キャラクターをわかりやすく伝えるために、どんな目標を持っている人物なのかを、読者に提示しましょう。
困難に陥った時こそ、その人の本質が現れる
また、長期連載のマンガの場合、連載の途中でキャラクターの魅力をもっと引き出したいと思うことがあります。
そういう時にオススメなふたつのやり方があります。
ひとつは、困難な状況にキャラクターを落とし込むということ。
『宇宙兄弟』でいうと、初めの頃、ヒビトのキャラクターが弱いという課題がありました。物語の序盤でムッタを宇宙飛行士の夢へと引っ張っていくヒビトですが、何事も完璧すぎて、ヒビトがどういう人間なのかわかりづらかった。
そこで、ヒビトが月に滞在している時に、月面の巨大なクレーターに落ちるという大きなトラブルにあえて遭遇させてみました。そこから、ヒビトがどういう風に生還するのかで、ヒビトのキャラクターがわかるだろうと思ったからです。
その後にも、ヒビトには、パニック障害が発生したり、NASAで厳しい処遇に受けたりと、困難が続きます。
しかし、そういった困難に対するヒビトの振る舞い方をみて、ヒビトがどういう人間なのかが明確になってきました。
「苦しい時に支えてくれた人こそ、本当の友達だ」みたいなことをよく言いますが、困難に陥った時こそ、その人の本質が現れると思います。
このキャラクターは、どういう人間なのかを際立たせたいという時には、困難な状況にあえて落とし込むというのは、テクニックのひとつとしてオススメです。
そして、もうひとつは、ライバルを登場させるということです。
困難に落とし込むと考え方は一緒です。存在を脅かすような存在や、「こいつには、負けたくない」と強く思う存在を用意し、ライバルに対する立ち振る舞いで、その人物の人間性が見えてきます。
ライバルを次々と登場させるのは、マンガでよく見られる王道パターンですが、ライバルの登場で主人公の振る舞いに変化があったのかに注目して読むと勉強になると思います。
ライバルの登場で、主人公の人間性が深く理解できるようになったのだとしたら、ライバルの存在は物語において、とても効果的に働いたと言えるでしょう。
是非、キャラクターの魅力を引き出すために、困難な状況を与えることを意識的に試みてください。
聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム
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