【SNS編集】なゆみんと愉快な課題たち【2week】・【インタビュー】矢野睦実先生の新連載作品に迫る！【制作秘話】 by 編集者・なゆみんの作品

なゆみんさんの作品：【インタビュー】矢野睦実先生の新連載作品に迫る！【制作秘話】

こんにちは！フェチはスーツ男性と香り！編集者のなゆみんです。（以下、略称”な”）

今回私は『僕らの極夜探索』『満ちても欠けても君が好き』を描いた漫画家の矢野睦実さんに取材をしました。

本来なら、新連載について紹介していきます。と書いていくのですが今回は切り口を変えます。

「自分の好きを見失いかけてた漫画家が自分の好きを取り戻すまで」

矢野さんの新連載が新しく完成するまでの記事を書いていこうと思います！

お話を伺っていく中で、矢野さんには新連載に関する悩みがありました。

矢野「商業で漫画を描いているのですが、読者に面白いと思うものを読んでもらえるために、企画に走った漫画作品を描いていたんですね。担当さんとも打ち合わせして描いていたのですが、段々と自分の「好き」が分からなくなってしまって。Twitterで連載作品『つる駒ちゃんは諦めない』をあげても反応が伸びなくて、SNS漫画の描き方も分からずどうしようかと悩んでいました。それでコルクの編集者枠の人に声を掛けようとした時に、なゆみんさんから丁度声を掛けてくれたので嬉しかったです。」

な「タイミングが同じだった事に私も驚いています(笑)」
「では、『つる駒ちゃんは諦めない』は企画の面白さを意識した作品ということでしょうか？」

脳筋女戦士に子作りを迫られる
アンドロイドと保護者のAIの話。

＊ただしアンドロイドに生殖機能は無い

pic.twitter.com/tbA4DLs7ns— 矢野睦実 (@shizennikaere)

矢野「言ってしまえばそうです。話の元ネタは去年11月頃にTwitterやコミチに掲載したキャラクターデザインと予告漫画で。」「そこをベースに描きたかったのですが、読者にとって面白いと思われるのは、アンドロイドに子作りを迫る女の子の話だろうなと。そこで、企画の面白さを重視して描いたのが『つる駒ちゃんは諦めない』でした。出来上がったのはいいものの、子作りを迫る女の子とアンドロイドで連載(話)を続けられるのかな…内心不安に思っていました。アンドロイドに生殖機能はないし、話のコレドナ感はあるけど連載を続けて描くとなると苦しい部分が正直ありました。」

（作品画像： https://comici.jp/shizennikaere/episodes/702f5903a1f7f）

矢野「ネームはパパっと描けるんですけど、いやこれは私にしか通じないとかTwitterのSNS媒体でも上手く伝わるのか？みたいな視点が分からないのもありました。」「全ての要素を描きたくなっちゃうので(笑)闇堕ちしたバディって良いよねみたいな、自分の中で描きたいものがどんどん出てきて。。」

矢野「本当に描きたいのはアンドロイドとAIロボットのバディもので、予告漫画では描きたいものや自分のフェチを全部詰め込んだんですね。めっちゃ性癖じゃんって。元々人間同士ではないアンドロイドとロボットだからこそできる関係性(バディもの)って面白いなと。機械同士のバディで人間ができない事を考えた時に、失った相棒をデータをもとに作ってしまうというのは、私の中の萌えとしてありました。相棒の1人(AIロボット：コルト)が、元相棒(アンドロイド：19号)を作り上げてしまった事に対して罪悪感を抱いてほしいなと。」

(画像：https://comici.jp/shizennikaere/episodes/72b2af93c5f8e）

矢野「でも、コルトと19号という機械同士のバディだと、暗めの物語になるんですよね。コルトからすると19号という死体を操っている闇があるので。私の中でそこは萌えでもありフェチになるんですが、読者にとっては重すぎるなと。暗さをぶった切るにはと作ったキャラが、「つる駒ちゃん」です。脳が筋肉でできている女の子ですね。明るくて強い意志をもって何事も諦めないキャラクターにしました。どんな闇が降ってこようともコルトや19号を前向きにさせてくれる存在にしたかった。」

な「矢野さんが描く作品はどれもキャラクターデザインにこだわりを感じるのですが、連載作品『つる駒ちゃんは諦めない』にもこだわりが？」

矢野「そうですね。コルト(AIロボット)は描きやすさを重視したので、簡略化していますがこれはこれでいいかなと(笑)他の2人のキャラクターデザインは、去年11月頃にTwitterで掲載した方が自分の中では好きだったんですよ。強い19号(アンドロイド)に子作りを迫る話でできたのが「つる駒ちゃん」になっているので。キャラデザインを着物ベースに変えました。19号(アンドロイド)の方は、去年の11月から考えていたバディ(相棒)が元ネタになっていて。最初は相棒デザイン(チャイナベース)で描こうとしてましたが、今のつる駒ちゃんの性格とは違うなって。」

矢野「でも元から考えていた2人のデザインが自分は一番好きですね。チャイナ風で太ももがでている所とか可愛い。「つる駒ちゃん」は脳筋設定なんですけど、元ネタの女の子は気が強くて何事にも頑張る性格で、そういう女の子が好きなんですよ。だけど子作りを元にした話に合わせて、性格もキャラクターデザインも変えてしまいました。」

（画像：元ネタとなったキャラクターデザイン：左：19号：右：バディちゃん：）

矢野「去年から考えていてバディの方が好きで愛着があるのですが。」

なゆみん「なら今回の新連載では、好きなものを中心とした話を描きませんか？」

「矢野さんの“好き”や“フェチ”に存分に生かした物語を読んでみたいです。」

矢野「…そうなんですよね。物語においても「つる駒ちゃん」が諦めないだけで、「つる駒ちゃん」が子供を諦めないっていう話じゃないんですよね。つる駒ちゃんがどんどん19号(アンドロイド)に対しても、コルト(AIロボット)に対しても諦めない話になってくるのが良いと思っているので。」

矢野「なので、書きたくもない話を描こうとしていたんです。子供を持つことに対して私自身が何も思っていないのにも関わらず。企画とキャッチ―さだけで出来た話だったんですね。どちらかというと元から考えていたバディもので、暴走した19号(アンドロイド)をしょうがなく人間の女の子が止めにいく話を描きたいと思っていました。お金を貰えるからしょうがなく止めにいってるんだよ、みたいな強気の女の子の方が描きたい。つる駒ちゃんではなくて、メイリイちゃんという女の子です。今の商業漫画でもそうですけど、子作り系の話はもういいよと思ってるぐらいなので。その事にいま気づけて良かった。」

な「矢野さんは新しく描く新連載、物語を通して読者にどんな影響を与えたいと考えていますか？」

矢野「どんな漫画を読むときも作者のフェチや萌えがどこなのかを見ちゃうんですよね。最近だと福田晋一先生が描く『その着せかえ人形は恋をする』。福田先生が描くギャルやばいですよ。ギャルに興味なくてもギャルを好きになってしまう程に。何の作品に対してもそうですけど、8割ぐらいフェチを感じる作品が好きで、本当に嫌いな人は嫌いだけど、この作家さんはこういうのが好きなんだな！って分かる漫画。自分もそういうマンガを描いていきたいと思っています！なのに見失いましたね(笑)関係性萌えとか。バディフェチとか。」

な「矢野さん自身作品をどんな人に読んでもらいたいですか。同じフェチ好きでしょうか。フェチをまだ知らない人でしょうか。」

矢野「私の作品を読んで、フォローしてくれる人はたぶん同じフェチ好きなので、同類の関係性フェチの人にも見せていきたいですね。ここまでやるかっていうぐらいに(笑)あまり関係性フェチが好きではない人にも関係性フェチを好きになってもらいたい。あと、はじめて私のマンガを読んでくれた方に「あれ、この漫画好きかも？」って思ってもらえるような間口の広さも共にありたい。フェチを感じて好きになってもらえる漫画を描いていきたいと思っています。」

企画の面白さを優先するあまり、「自分の好き」を描くことを見失いかけていた矢野さん。自分の好きを取り戻してもほしい。その想いから連載漫画の企画内容をもう一度見直すことにしました。

■キャラクターデザイン

好きを全開にして描いた去年のキャラクターデザインを元に、現在の新連載と通ずる要素、ヒロインの女の子が(気が強い・明るい・諦めない)などを活かしながらも、キャラクターデザインは矢野さんの“好き”が詰まったチャイナモチーフのデザインへ。メイド×チャイナ服のメイリイちゃんが生まれました。（かわいい）

前→後

■話の構成

・主人公メイリイ(元つる駒ちゃん)→人間女子(目的：お金を稼いで贅沢な生活を送ること)

・相棒コルト →AIロボット(目的：19号を元の19号に戻すこと)

・相棒19号→アンドロイド(目的：自分を作り上げたコルトの言う事を聞くこと)

バディものが大好きで2人の関係性に萌えを感じる矢野さん。子作りをメインにしていた物語ではなく、アンドロイドとAIロボットという機械同士のバディものをメインとした物語に。萌えを感じる暗めの設定はそのままに、相棒を引き立たせるキャラ：メイリイちゃん(元つる駒ちゃん)を主人公に変えた異世界ファンタジーへと組み直していきました。

↓具体的な話を読みたい方はコチラ！↓

https://comici.jp/shizennikaere/episodes/41aa9de41a8f0/

取材を通して、バディものが好き・気が強くてヤバ目の女の子が好きなど。矢野さんの“好き”と“萌え“が創作の原動力になっている。矢野さんのフェチが詰まったキャラデザインや作品はどれも生き生きとしていた。きっと、矢野さん自身好きなキャラクターや物語を描くことを心の底から楽しんでいるからだろう。商業誌で読者の事を意識するあまり、自身の好きを見失いかけていた矢野さん。新連載課題を通して“好き”を取り戻し、自身の好きと向き合った上で新たな新連載作品を読者に届けようとしている。成長の一歩を踏み出した矢野先生と新連載の今後に目が離せない。

矢野睦実先生、自身の連載もある中、取材にご協力いただき誠にありがとうございました！

●矢野先生が描いた漫画作品はコチラ！

”フェチ”を感じる新連載第1話 https://comici.jp/shizennikaere/episodes/41aa9de41a8f0/

■矢野睦実漫画家(公式プロフィール)