僕が一番気に入った作品は、つづきぱわさんの課題(今まで一番美味しかった秋の味覚)の『焼き芋』(https://comici.jp/articles/o/70235/)です。
この作品を読んだ時、一度目は面白さを言語化できなくて、「なんかわかんないけど心にひっかかる」という感想でした。
その後、別の方の作品を読んでいるなかで、面白いものもたくさんありました。
ただ、今日。課題提出の最終日に、どの作品について感想を書こうかなあと考えた時、まっさきに頭に浮かんだのがこの作品でした。
感想を述べるにあたって「なんかわかんないけど一番気に入りました」だけではコルクラボに参加したいみがないし、つづきぱわさんにも失礼なので、ない頭を精一杯絞って再読すると、朧げながら理由が見えてきました。
それは、この焼き芋という作品が、心の言語化しにくい部分に触れたから。なのではないかなあと思います。
絵のタッチは柔らかくて、一見ほのぼのなんですが、登場人物の一挙手一投足がとても緻密で、引き込まれます。
また、方言も良い。8割理解できるくらいなのがリアルで良い。
さらに、登場人物の男の子が半袖のおばあちゃんを気遣う優しさを、あの台詞、コマで本当に自然に表現していてすごい。あそこで顔を写さない、あとなんだろう、背景が黒なのも、火や体を表現するためだったのかもしれないけどセンスに見える。狙ってなさというか、まったくイヤらしくない。
何よりも、男の子が火を見た時のキラキラとした表情が綺麗で、初めて大きい火を見た時の興奮、わくわくがストレートに伝わってきました。と同時に、ノスタルジーというか、もうこんなに純粋な感情の動きを経験することはないんじゃないかという切なさがこみあげてきました。
「あっちいあっちい」といいながら服を脱ぐ部分も絶対に必要で、作品の世界観に浸れる要素として機能していると感じました。
最後の台詞も、わかる。動きながら食べる感じ。駆け出しそうな状態で、振り返りながら。そうなります。楽しくて、じっとしていられなくて。
もっというと、最後のページ、男の子の目、開いてないのが本当に良いです。
作者のつづきぱわさんは、この作品について切なさをメインテーマにしたわけではないと思うんですが、読者が作中から「切ない」と言う感情を掬い取れるのは作品としてすごく深く作られているなあと感じました。
メインテーマではないだろうけど、確かに切ないし、随所がリアルだから短い作品でも世界観に浸れて余韻を味わうことができるし、普段言語化することがない、現実から少し離れたところにある心の端っこの方がふわっと動く感じ。
読めて良かったなあと思えました。
最初に作品を読んだ時、「なんかよくわかんない」だけだとすぐに忘れてしまう。
また、「これは切ない物語だ」「これは笑える物語だ」「これは怖い物語だ」という風に、感想を一言で表せる作品。これは、わかりやすいと言う部分では良いことでもあるのですが、記憶には残りづらい(埋もれてしまう)。
だけれど、初めて読んだ時に「面白いけどなんで面白いのかわかんない」作品は、残る。頭だけでなく、心に残る。
心に残った理由を知りたくて、「また読みたい」と思う。
これってすごいことだなあと思いました。
ありがとうございました。
最後に、贅沢を言わせていただくと、いつの日か、あの火の部分と夕焼け・焼き芋、最後の男の子に色が入った作品を読んでみたいなあと思いました。調子こいた読者ですみません…。