現在あらゆる仕事において、人をワクワクさせる『企画力』というものが求められています。
この連載では、コルク代表で編集者の佐渡島庸平さんが、長年温めてきたマンガの企画を紹介しながら、ヒットする企画の考え方を同時に伝授していきます。
2月は『他メディア展開から、企画の強度を磨く』をテーマに、企画の磨き方について話をしていきした。
面白いマンガのネタを思いついたとしても、登場人物、舞台設定、展開方法など、企画の味つけとしてアイデアを膨らませない限り、ヒットは生まれません。
最終週の今回は、キャラクターグッズで成功しているキャラクターが持つ3つのポイントから、企画の磨き方を紹介します。
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名前の響きだけで、イメージが伝わるか?
佐渡島:今週は、キャラクターグッズとして成功するために必要なポイントを抑えることの大切さを伝えたいと思います。
初歩的なことから言うと、グッズとして多くの人の手に届くためには、キャラクターの名前の響きがまず重要です。
キティちゃん。ミッキー。リラックマ。ぐでたま。
全て音がいい。その名前を耳にしただけで、キャラクターとしての強さを感じます。
同時に、音を聞いただけで、そのキャラクターの持っている雰囲気が連想できるようにしたいです。
例えば、宇宙兄弟のムッタやヒビト。
ムッタは南波家の長男なのに、六太(ムッタ)です。これは「愛嬌はあるけど、あまりかっこいい奴ではないだろう」という名前を懸命に探した結果生まれました。そして、弟のヒビトはムッタと比べると、シュッとした響きです。
「ムッタとヒビトという音を並べてみた時に、それだけで二人の関係が読者に伝わるようにしたかった」と小山さんは言っています。
キャラクターの名前を考えたら、自分で声にして音を確かめる。そして、周りの人にどんな印象を持ったかを聞いてみる。
まずは、音の響きを徹底的に磨いてみてください。
シルエットとキーカラーが企画の幅を左右する。
佐渡島:また、グッズ展開において、シルエットのデザインが大事だと僕は考えています。
ミッキー。キティちゃん。ドラえもん。コナン。ドラゴンボール。
これらのキャラクターは、そのシルエットを見ただけで、キャラクターを認識できます。
円が三つ重なる形を見た瞬間に、誰が見てもミッキーだと認識できてます。空を眺めてる時ですら、その形の雲をみると、「あの雲、ミッキーに似てるなぁ」と思いますよね。
シルエットが強くなると、グッズ展開の幅が一気に広がります。デザインが圧倒的にしやすくなるからです。
例えば、Tシャツを作るにしても、漫画家が描いている絵をそのまま使うとなると、デザインに制約が生まれます。どうしても、絵の主張が強くなってしまう。一方、シルエットだけでキャラクターが伝わるのであれば、クールな表現、シンプルな表現など、様々なアレンジが可能となります。
リアリティ寄りの作品だと少し難しいかもしれませんが、それでも、宇宙兄弟ではムッタとヒビトの二人が揃っていればシルエットだけで伝わるデザインにしています。
そして、シルエットのデザインを磨いたら、作品のキーカラーも考えてみてください。
紫と白と緑といえば、エヴァンゲリオン。
オレンジと黒と赤といえば、ドラゴンボール。
青、赤、白といえば、ドラえもん。
強い作品は、色の組み合わせを見ただけで、作品が伝わります。
以前、エヴァンゲリオンの新幹線がありましたが、この企画は色の力が強いから成立しているわけです。このようにキーカラーで作品を伝えることができると、様々な企画が可能になります。
シルエットとキーカラー。
キャラクターをデザインする際には、この2つを意識してみてください。このデザインの差が、グッズ展開における企画の幅を大きく左右するはずです。
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さいごに:真のクリエーターになるために。
佐渡島:今月は『他メディア展開から、企画の強度を磨く』をテーマに、企画の磨き方について話をしましたが、最後に大切なことを伝えたいと思います。
それは、他メディア展開について考るなかで、自分が向き合っているメディアでしかできない表現とは何かを考えて欲しいと言うことです。
真のクリエーターとは、自分が表現の場として選んでいるメディアのことを、誰よりも深く理解している人なのではないかと僕は考えています。
漫画家であれば、他のメディアのことも全てわかった上で、「じゃあ、マンガにしかできない表現とは何か?」という問いに対する自分の答えを持っている人こそ、マンガ文化を先に進めることができるだろうし、圧倒的な支持を得るでしょう。
そのメディアにしかできない表現への答えは多種多様であってもいい。ただ、クリエーターであれば、きちんと自分の言葉で語れるようになって欲しい。
だから、クリエーターを目指している人であれば、ある作品が他メディア展開をされていたら、全部を見比べて、それぞれのメディアごとの特徴を考えることが、勉強としてすごく重要だと思います。
自分が向き合っているメディアでしかできない表現とは何か?
その答えを見つけて、イノベーションを生む作品を世の中に送りだして欲しいと思います。
聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム。
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