6665 4 4 false ooV1PSvnl6VWnua0RAXv2mvwdoiS6nDz 05cefb3438682809766c3e756296d936 わずか1%の違いで、世界は大きく変わる。物語の設定にリアリティを持たせるには?【リアリティを生み出す(4)】 0 0
佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:わずか1%の違いで、世界は大きく変わる。物語の設定にリアリティを持たせるには?【リアリティを生み出す(4)】

リアリティが乏しいと、作品へのツッコミどころが多くなってしまい、物語の世界に没入することを妨げてしまいます。


フィクションの創作に携わる人であれば、リアリティをどう作品に生み出すかは永遠のテーマなのではないでしょうか?


そこで、今月の『企画のおすそ分け』では、「リアリティに生み出す」をテーマに話をしていきます。


最終週となる今回は、「リアリティのある設定のつくり方」です。


***


1%を超えた変化に読者はついてこれない

(以下、佐渡島さん)


はじめに伝えたいのは、ファンタジーやSFのような、現実離れをした世界を物語の舞台として設定した場合であっても、リアリティのある設定は大切です。


面白い作品というのは、現実離れをしたように見えても、実は僕たちが生きている現実世界の秩序から大きくかけ離れてはいません。


ハリーポッターでも、魔法を学ぶという設定以外は、生徒と先生の関係や、学校のあり方など、イギリスの学校の仕組みと大きく違いはありません。


ドラゴンクエストのような世界であっても、お金で物々交換をしていたり、王様のもとに国が成り立っていたりと、設定が異世界なだけであって、世界の秩序は乱れていません。


これは、作品世界の秩序が現実世界とかけ離れていると、読者が物語の世界を理解することができずに、作品に没頭ができないからです。


ファンタジーやSFの醍醐味は、まるで異世界に迷い込んだかのように、その世界観を楽しむことだと思いますが、その世界の仕組みは現実世界とほとんど変わりません。


言い換えると、人間とチンパンジーが、たった1%のDNAの違いで大きく変わるように、世界もわずか1%の要素の違いで大きく変わるんです。


しかし、新人漫画家がファンタジーやSFに挑戦する場合、1%を超えて変化した世界を描き上げてしまうことが多いように感じます。そうすると、設定を理解するのに時間がかかって、物語が頭に入ってこない。


そのため、僕はファンタジー作家であろうが、リアリティのある設定とは何かを考えることは大切だと思います。


個別の感情の変化を、いかに自然に描けるか

リアリティのある設定をつくるために大切なのは、世の中にとって何が一般的なのかを理解することです。


僕らが知っている技術の常識や、人間関係の一般的な構築の仕方とか、いわゆる社会一般の常識を抑えることが、リアリティを生み出すために大切になってきます。ここから大きく逸脱したものばかり描いていると、作品からリアリティが損なわれていきます。


例えば、スマートフォンが世の中に現れる前に、未来の電話を描いたとします。その時代に、スマホのような電話を描いたとしたら、ガラケーよりも大きな画面の電話を使っていることに違和感を感じる人が多いのではないかと思います。


もし、逸脱したものばかりを描く場合は、逸脱したものを描いているということを表現とセットで説明する必要があります。


面白い物語を描ける人とは、何が一般的なのかをわかっていて、逸脱した描写がある時には、そのことを伏線として描き、読者にシグナルが送れている人だと思います。


では、何をもって一般的とみなすかというと、これは非常に難しい問いです。なぜなら、自分が所属しているコミュニティによって、何が常識かは変わるからです。


そのため、僕は物語を読んで、「何が一般的なのか?」という感覚を養うというのが良いのではないかと思っています。なぜなら、多くの人に受け入れられている物語というのは、一般の常識をベースに描かれているからです。


また、設定をどこから伝えるべきかというラインの見極めが必要です。ここまでは常識だから伝えなくてもいいけど、ここからは説明しないと読者に伝わらない。この判断がとても難しいです。伝えるすぎると、うざったいと思われるし、言わな過ぎても、伝わらない。


これも様々な物語に触れて、うまいバランスを見つけていくしかないと思います。


冒頭でも伝えたように、リアリティが作品に欠けていると、作品へのツッコミどころが多くなってしまい、物語の世界に没入することを妨げてしまいます。


様々な物語に触れながら、リアリティのある設定とは何かを考え続けてもらえたらと思います。



聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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