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「真船、次の会議までに馬車と、御者を探しておいて」


(はて平安時代の会話かな?)とお思いでしょうが

これは数年前私が実際に課せられていた仕事のタスクです。

私真船佳奈は、テレビ東京というキー局の末端で働いており、

当時はADをやっておりました。


ADというと一応定義的には「アシスタントディレクター」

ディレクターのアシスタント役という意味らしいのですが

実際は「あいつにはどうでもいいことやらせておけ」の略語かと思うくらい

謎で変な仕事をする毎日でした笑。


音楽番組で曲中に飛ばす鳩と操縦者を探したり、

地域の古い写真を求め、2週間くらい知らん民家をピンポンして人様のアルバムを見せていただいたり、

アフリカの不老不死の長老を探したり…

今まで持っていた華やかなイメージからかけ離れた仕事に戸惑うことも多く

そして私自身どポンコツだった為

気づけば私は社内で「全然キャラ的におもろくないので存在はよくわからないけど仕事が壊滅的にできないことだけは知れ渡っている謎の女」という位置付けになっておりました。


そこで「努力して一発逆転!ヒット番組メーカーになって全員を見返す!」という進◯ゼミマンガ的な展開は一切なく、

私は日々あった出来事をメモがわりに漫画として書き連ねていました。

日記がわり、と言ったら聞こえはいいですが、実際はデスノートに近い感覚です。


そうして私だけのデスノートをある程度書き連ねたとき、

一会社員なのに当時ツイッターのフォロワーが13万人いるという謎の先輩(そして今は一会社員なのにオールナイトニッポンゼロのパーソナリティをやっている)佐久間さんに

ツイッター上で漫画を紹介していただき、あっという間に出版が決まりました。


出版が決まってから漫画を本格的に描き始めたため、

世界堂に「漫画家はじめてセット」的なものを買いに行ったことを覚えています。

会社で漫画家としてデビューした人は私が初めてです。

当然、周りには漫画を書いている人など一人もいません。


ずらりと並ぶ何十種類ものペン先、

135kg...誰の体重だ?!」と突っ込みたくなる原稿用紙、

何を買ったらいいかもわからず途方にくれました。

仲間同士で漫画グッズを買いに来ている人に「私も仲間に入れてえ…」と声をかけたくなりました。ここから、一冊の漫画を出して、値段をつけて売ることなんてできるのか?!私、大丈夫なのか?!とめちゃくちゃ不安になりました。

(どうでも良い話ですが、この時「すいませ〜んテレビ東京ですけど、あなたそれを買って何するんですか?」とロケクルーに声かけられて逃げました)


それでもなんとか「真船さん、そもそも絵はそんな期待してないんで大丈夫です!」と

言ってくれる心優しい編集担当さんや

お母さん何もわからない!」と戸惑いながらも枠線を引いてくれたアシスタント・母のおかげでなんとか1冊目の書籍を発売し、漫画家デビューしてから3年間が経過しました。


漫画を出してからすぐ部署異動になった為、現在はテレビ制作ではなく編成の仕事をしています。「仕事はヤバイ程できないけど漫画を描いている特殊な人」という独特な地位を築き、ありがたいことにテレビ関連でない漫画やエッセイも書かせていただいています。


ところが、3年経ってもなお、あの世界堂漫画コーナーに初めて足を踏み入れた時の感覚が消えません。むしろ、月日がたつにつれ、「私、大丈夫なのか?!」という気持ちが強まってきました。

我流でそれなりに切り抜けてきたけど、私にはまだまだわからないことばかりです。

何の道具が良いのか。何が面白いのか。私は何を描くべきなのか。

テレビはチームで作るけれど、漫画は自分だけの力で生み出さなければなりません。

すごく孤独な作業です。

仲間が欲しい…そして結局あの135kgってなんの重さ…?」と叫んでしまいたくなります。


本業のテレビマンとしては、私は何一つ成し遂げられていません。

あの謎な「燕の子安貝」的な宿題も、私はちっとも提出できたことがありませんでした。

本当は基礎としてやるべきこと、学ぶべきこと、たくさんあったのでしょうが、せいぜいデスノートに文句を書き連ねることしかしませんでした。

漫画でもきっと、このままだと同じことが起きるだろうなと感じ、コルクラボ漫画専科に応募しました。


コルクラボのお題漫画はずっとツイッターで見ておりました。

とんでもないお題が回ってくるかもしれませんが、馬車の手配よりはきっと大丈夫だと思うので今から描くのがとても楽しみです。

進研◯ミのように、受講したらいきなり「あ!ここ進◯ゼミでやったところだ!」とはならないでしょうが、100本ノックのように地道にこなして、いつか色々な作品を書けるようになりたい!今はその気持ちでいっぱいです。


そして、あの時 世界堂で声をかけたくて仕方なかった、漫画を愛するみなさんとこの場で出会えることが何より嬉しいです。

すんげー長くなってすいません。これから半年間どうぞよろしくお願いいたします。







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