こんにちは、マンガ制作研究組織「東京ネームタンク」のごとうです。
今回は8月のコミチ漫画賞『#画力』に投稿されたネーム添削の第1回目です。
今回の作品はブリ猫。さんの『友情~カラー完成版』。
それでは、作品を振り返っていきましょう。
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8月の投稿作品ということで夏の終わりの雰囲気があってとても良いですね。
カラーで描かれているので臨場感も出せています。
こちらの作品はもっと「情報」を入れてあげるとよりよくなるのではないかと思います。
というのも物語というものは、序盤から中盤に向かってどんどんと盛り上がっていくのがベストな形です。
感情が盛り上がる前の序盤では何を描くかと言うと、ひとつは「いま登場人物たちはどういう状況なのか」という情報です。
序盤に「情報」を描くことで、その後に訪れる感情の盛り上がりが読者に伝わりやすくなり、読者の心をよりグッと掴むことができます。
おそらくですがこのマンガは甲子園の決勝戦のようなものを想定して描いているのではないでしょうか。
だとしたらこの試合は甲子園の決勝戦(=とても大切な試合)だということを伝える必要があります。
このマンガの序盤ではピッチャーとバッターしか描かれていないですよね。
これだと見ようによっては練習試合のように見えてしまう可能性もあります。
練習試合だと思って読み進めていた読者が、終盤の勝って大喜びしているシーンや、ピッチャーとバッターが抱き合っているシーンを読んでも、「たかが練習試合でしょ」と感情移入してくれないかもしれません。
ですので序盤に情報を描くことは読者に感情移入させるためにとても大切なことです。
「これが甲子園の決勝戦の行方を決める最後の一球なんだ」ということがしっかりと伝わるように、例えば観客の描写を入れて大会の規模感を表したり、たくさんの声援が飛び交いチームメンバーが炎天下の中うなだれて疲れ切っている様子などを描くのもいいかもしれません。
序盤に伝えておいたほうがいい情報には「場所・時間・誰が主人公なのか・登場人物たちの関係性」があります。
関係性については、このマンガの場合、メインとして描かれているピッチャーの子とバッターの子がどの程度のライバル関係なのか、この決勝戦に臨むまでにどんな苦労をしてきたのか、甲子園に初めて出場したのかそれとも常連校なのか……など、すべてを事細かに描く必要はありませんが、終盤の感動につながるような情報はもっと伝わってくるといいですね。
また情報を描くことで場面作りがしっかりしてくると、キャラクターの描き方にも影響が出てくると思います。
例えば1コマ目を見ると、このマンガは9回裏のシーンを描いています。
9回裏だったら登場人物たちはもっと汗をかいて肩で息をしていたほうがいいかもしれません。
このように情報を描いて場面のイメージを固めることでベストなキャラクターの描き方も見えてきます。
また負けた側のピッチャーがうずくまっているコマの後に足だけを描いているコマがありますよね。
このコマにどんな意味があるのかが少し伝わりづらいかなと思います。
マンガにおけるすべての情報は、感情をより強く表現するためにあります。
逆に言うと、感情を表現するのに不要な情報を入れてしまうと、引っ掛かりを覚えてしまってその感情に集中できないということが起こります。
より強く感情を表現するためには、必要な情報を伝えると同時に、不要な情報は排除することも大切です。
またこのマンガはピッチャーの子とバッターの子が肩を寄せ合うシーンがグッとくるところですよね。
ただこのシーンでは「2人の間にこういうことがあったから敵同士である2人が肩を寄せ合うことになった」という裏付けを正確に伝える必要があると思います。
なぜなら一般的に考えると、甲子園の決勝戦のような大切な試合で勝者が敗者に肩を寄せようとしたところで、敗者側がそれを素直に受け入れるかというと、そうではないはずだからです。
この2人の間に、こういう関係性があって、それによってこういう感情が生まれて、だから勝者と敗者になった2人だけど肩を寄せ合うんだ、という説得力を持たせられる丁寧な描写があるとより良いクライマックスになると思います。
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