編集者枠の上田です。
今回、投稿されたマンガの中から、ぼくが一番気に入った課題作品を感想交えてご紹介します。
「秋色カーディガンのひととき」作:鮎
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タイトルを読んだ時、秋になり寒くなってカーディガンを着た時のあたたかい話を予想したのですが、読み進めていくうち、主人公が置かれている状況を知って寂しい切ない感情がじわじわ湧き、読後なんとも言えない気持ちになりました。
ぼく個人のグッとくるポイントになりますが、自分だけが内に秘めた感情を抱えていく切なさや寂しさ、割り切れない気持ちがある中で、少しでも空元気だけど前に進もう、または曖昧なまま誤魔化して長年抱えていく、そういう主人公に自己投影してしまいます。
昔好きだった人をいつまでも想ったり、思い出を大事にしたり、でもその相手は、自分のことを忘れている、もしくは気にはしていない。絶望まではいかないけれど寂しさはある。相手にわかってほしいとまでは言わない、でも時折自分を気にしてほしい、そんな気持ちにさせられる作品です。
同性で少し好きだった人。
作中の想い人が異性の相手と一緒に写っている写真を見た時に、ぼくは最初少し衝撃を覚え、その後「そっか・・・」と少し寂しい気持ちになりました。過去一緒に彼女たちがお揃いのカーディガンを着て歩いた紅葉シーンは、より一層主人公の想いの感情を際立たせているように感じて、繊細で複雑で純粋で切ない。
捨てる捨てない。
ラストの断捨離シーン。想い人との思い出のカーディガンを捨てるか捨てないか。着なくなったものを物理的に捨てるという単純な話ではない。主人公は葛藤します。寂しいのか、悲しいのか、相手を好きだった自分を否定したくないのか、忘れたくないのか、読者によってシーンの受け取り方は様々かと思います。
大事にしておきたい感情を無理に今捨てることはない。主人公が迷い迷い最後下した決断は、どこか切なく、寂しいけれど、尊い。
捨てられないものが家にたくさんあります。死ぬまでに、どんどん捨てて、それでも手元に残っているものが自分が本当に大事にしたかったものになるのかもしれない。感情とともに。
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鮎さんの作品の意図や解釈とは、もしかしたら違うかもしれませんが、ぼくなりにこの作品を読めてよかったです。
ありがとうございます。
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