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KADOKAWA 「タテスクコミック大賞コミチ支部」・縦スクロール漫画の手塚治虫はまだいない  by コミチ。nc-0

縦スクロール漫画の手塚治虫はまだいない

~8/4KADOKAWA 「タテスクコミック大賞コミチ支部」オンライン勉強会レポート

この記事は8/4に開催した KADOKAWA 「タテスクコミック大賞コミチ支部」オンライン勉強会 を記事化したものです。

 

10レーベルをつくってきたKADOKAWAの立ち上げ請負人が、タテスクコミックに取り組むまで

– 本日は「KADOKAWAタテスクコミック大賞コミチ支部」のオンライン勉強会ということで、講師にタテスクコミック編集部コンテンツプロデューサーの土方隆さんをお迎えしました。よろしくお願いいたします!

土方: よろしくお願いします!

 

– まずは、土方さんのご紹介からです。

– すごいのは「コミックアライブ」「フラッパー」「ジーン」「ブリッジ」「MFブックス」などなど、10個ものマンガやラノベのレーベルを立ち上げられているとのこと。司会の私は以前「 編集長の部屋 」という記事を書いてまして、これまで沢山の「編集長」の方々と話をしてきましたが、土方さんのように、沢山のレーベルに関わっている方はいらっしゃいませんでした。

土方: 最初はKADOKAWAに合併する前のメディアファクトリー時代に、青年誌マンガに関わるところからスタートしました。

私はマンガの98%は面白いものだと考えるくらいマンガを愛しています。普通の方なら所属する編集部のカラーにあった作品を作ることを考えると思うのですが、あらゆるマンガに関わりたいと考えているうちに、次々レーベルを立ち上げることになっていきました。

現状まだまだKADOKAWAに無いものもありますので、もっと立ち上げたいと思っています。

 

– 希望したからと言って出来るものでもなかなか無いと思いますが、、、

土方: そうですね。巡り合わせや時代の流れもありました。以前所属していたメディアファクトリー[1]はマンガ編集部が無かったので「コミックアルファ」を立ち上げる機会を得ました。ひとつひとつ利益を上げて行き、広げていきました。チャンスを与えてくれた上司もいましたし、時代的にも色んなコンテンツが立ち上がっていく時代でした。

当時は会社も小さかった割には、雑誌の種類も多岐にわたり、映像展開はもちろん、フィギュアやグッズなど色んな事をしていたため、今のKADOKAWA同様、一つの作品を様々な形で収益化することが出来ていました。そのため、様々なことを手がけてきました。

当時、社内外で「どんなマンガが流行っているか?」と相談され、意見を言うような機会がありました。MFブックスを立ち上げる前にも、コミケの控室で「今はなろう系が流行っている」という話をしたら、実際になろう系アニメが立ち上がったなんてこともありました。

 

– 『無職転生』を立ち上げたMFブックスにも関わられたとか。

土方: KADOKAWAはラノベのコミカライズや映像化を沢山してきました。なろう系が出てきたときに、ラノベの読者より少し年齢層が上の世代が対象だったと思います。『無職転生』や『盾の勇者の成り上がり』など、大人向け雑誌の「コミックフラッパー」でコミカライズすることを進めたりしました。

 

– KADOKAWAでなろう系に力を入れ始めた時の話をうかがえますか。

土方: 当時、ラノベより上の世代の人にウケる作品を作っていくことを考えていました。ラノベより前の時代に、新書版小説と言って『旭日の艦隊』など架空戦記が大人向けの層として流行していました。ハイファンタジーもそうでしたが、ここの市場が小さくなっていました。

そこで、大人向けになにかないかと探していて浮上してきたのが「なろう系」の書籍化でした。異世界転生については、歳を経れば経るほど、若い体に転生したいという個人的な思いもありました(笑)そうした思いは普遍的だと思います。

 

KADOKAWAタテスクコミック編集部とは?

– タテスクコミック編集部の話に移ります。コミチでは、ウェブトゥーンカオスマップを作っていまして、それによると、1月に二十数社だったウェブトゥーンスタジオが、この7月には60近くまでに増えていました。

コミチサイトより https://comici.jp/webtoon

– その中でも、いわゆる大手出版社の中でもKADOKAWAはタテスクコミック編集部を早くから立ち上げ、作品も多く投入されています。この辺りの狙いをうかがわせてください。

タテスクコミック編集部サイトより https://tatesc-comic.com/

土方: 社内で開催した新規事業のコンテストがありまして、そこで若手3人が出してきた企画がきっかけです。面白かったのが、ウェブトゥーンの企画を出してきた3人が編集ではなく、書店の営業や海外事業推進部の担当者から出てきたものなのです。よりマーケットに近い部署からの提案で、韓国や中国の事情にも通じていました。海外では小説原作の展開も多く、KADOKAWAの作品も活かせるのではないか?という企画でした。

私は、そうした若手スタッフの経験面を補う形で、タテスクコミック編集部の立ち上げに携わっています。「タテスクコミック」の商標一つとっても、考えないといけないことは沢山あります。また、作家や編集者がやりたいことをなかなか言語化できないこともあるのですが、そうした部分でサポートをしています。

 

– 先ほど「なろう系」立ち上げのいきさつをうかがいましたが「タテスク」立ち上げの際はどんなことを考えていたのですか。

土方: KADOKAWAは、小説など原作になる作品が本当に豊富なんですね。マンガをタテスク化することも良いのですが、原作小説をタテスク化展開していくことについては、KADOKAWAの一番の強みが活きると考えました。コミカライズ案件は沢山してきましたしね。

 

漫画家ができるチャレンジ「縦スクロール漫画の手塚治虫はまだいない」

– なるほど、そんなタテスクコミック編集部について、参加した漫画家さんたちが得られるメリットのお話をしていっていただきたいなと考えています。

まず、このタテスクコミック作りに参加した漫画家さん達には、どんなチャレンジになると思われますか?

土方: 今まで通りの横組みのマンガをつくられている漫画家さんにとって、タテスクの表現を身に着けることは、大きなメリットになっていると思います。読者がタテスクを読む時間は従来のマンガに比べてとても早いです。そこに対応する力を身につけることは、覚えることも多いですが、面白いことだとも思います。

なぜ面白いのかというと、今のマンガのフォーマットは沢山の先人たちが作り上げてきたわけですが、おおもとには手塚治虫という偉人がいるわけです。ただ、現在のタテスクコミックの世界には、手塚治虫は生まれていないはずなんです。

つまり、あなたがタテスクコミックの第1人者「タテスクの手塚治虫」になるチャンスは、まだ十分にあるんです。

もう一つは、この新しいタテスクの表現であたながつくりたい作品をつくるチャンスだと思うんです。高度に発展した横マンガは、読むことに慣れてない人には広がりにくいと言われています。一方で、タテスクの表現はシンプルであるがゆえに、横マンガを読みなれてない世界中の沢山の人にとって手に取りやすく、その人達に広く自分の表現を伝えることが出来るチャンスがあります。

 

– KADOKAWAのタテスクコミックだからこそ、漫画家さんができることはありますか?

土方: アニメ化、グッズ化、海外展開など、良い作品がより広い方々に伝わるように、世界に向けて色んな形で発信できるのがKADOKAWAの強みです。私も多くの作品をそうして展開してきました。

KADOKAWAの中で、小説・ラノベ、コミック、ゲームなど様々な作品を別の分野に展開することが議論されています。ひとつの読切作品が、いきなりアニメ化を検討されるようなこともありました。

 

– ちょうど最近、アニメ化で話題になった『俺だけレベルアップ』も、KADOKAWAのグループに近い、アニプレックスの製作、Cruchrollの配信ですね。[2]

土方: そうですね。世界的な枠組みだと思います。タテスクコミック編集部からの展開もそうなることを期待してやまないです。

日本でコミックを作り、アニメ化して世界に伝わり、それを見た海外の人からハリウッドでの実写化がオファーされたりということが、KADOKAWAの日々の作品作りの中から実際に起きたりしています。

 

– どんな漫画家に来て欲しいと考えていますか?

土方: どんな編集者に聞いても、難しい質問ですね(笑)

まだ完結に至ってない作品を、誰かに一緒に考えて欲しいという風に考える人に来て欲しいです。そういう作家さんのほうが、双方とも幅が広がりやすいと思いますね。

特にKADOKAWAは、アニメ化したものが実写化に繋がることなども良くあります。作家さんによっては、そうしたことが想定外で驚かれることもあるのですが、そうしたことも面白そうと興味を持てる方のほうが、ものごとに興味を持ち続けられる姿勢があって良いと思います。

自分の手から離れた作品がどうなるのか、面白がれる人ほど、自分の作品を大きくできる力のある人だと思います。

実際の担当編集者さんだと、また違うかもしれませんけど(笑)

 

– ちょうど、現場の編集者のみなさんからもメッセージをお預かりしているので、ここでご紹介します。

「ちょっとでもこのタテスクコミックに興味を持たれたら、是非参加して欲しいです。特に、去年第1回のタテスクコミック大賞で賞を取られた作家さんは、漫画経験がほぼ無いところから、受賞し現在の連載至っています。経験無くともチャレンジしていただきたいです」

「連載を前提とした企画で応募可能(読切だけではない)一番デビューに近い賞になれば良いなと考えています」

土方: 本当にそうです。もともと新人賞とは、作家の力量を市場に早く出させるために、読切で応募のことが多いです。この賞はそうではなく、結末をイメージせずとも投稿可能で、それを我々編集部と一緒に面白いものに育てていくことができます。

 

タテスクコミック漫画賞コミチ支部とは?

– ありがとうございます。ここで漫画賞のご案内をさせていただきます。

KADOKAWAタテスクコミック大賞は、11月まで募集されている賞なのですが、今回ご紹介しているのはその「タテスクコミック大賞-コミチ支部」というものになります。

8/1-8/31の募集期間に限り、コミチのサイトにアップする、ないしはシークレットモードという一般に公開しない形で、賞にチャレンジすることが出来ます。応募方法がより簡単になっています。

賞についての詳しい内容は、以下をご覧いただき、是非ご応募ください!

https://comici.jp/stories/af871fd2b5cf1

– 最後に土方さんから一言、漫画家さんたちに向けてタテスクコミック編集部の思いをお伝えいただけますか。

土方: マンガは色んな形で時代とともに変化してきました。手塚治虫が作った形はもちろん、更にここに来てタテスクコミックという形になってきました。

これは本当にチャレンジしがいのあるものだと思います。新しい作品が沢山生まれ、新しく時代に残る、時代を象徴する作品がここから生まれて欲しいと思います。

そして、そうした作品が生まれてくることをお手伝いしたいです。

今回ご紹介した賞は8月末までの募集ということですが、持込はいつでも受け付けておりますので、いつでもタテスクコミック編集部に持ち込んでいただければと思います。

楽しい作品お待ちしています。よろしくお願いいたします!

以上

本レポートのもとになる勉強会のアーカイブ動画はこちらです。

 

[1]メディアファクトリー: 2011年にKADOKAWAに買収されるまでは、リクルートグループだった出版社。小説や漫画、グッズ展開など広く行っていた。2013年にKADOKAWAに吸収合併され、今もブランド名が残っている。

[2]アニプレックス(アニメ製作)、CrunchRoll(アニメ配信):いずれもソニーのグループ会社であり、KADOKAWAにも大きく出資している。この2社とKADOKAWAの関係性も深まっている。 https://www.kadokawa.co.jp/topics/5381/

 

 

 

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2022/8/10
作者