テーマ 入院
まだまだ若輩者で担当した患者さんは少ないし、医療職の癖に人の名前がなかなか覚えられない性格の私でも、唯一覚えている患者さんがいる。
Aさん。資格を持ってから初めて、わたしが担当した患者さん。
・・彼女が退院する時、私は感謝されなかった。
初めての自分の担当に、やる気は人一倍あった、つもりだった。ただ、どんなに真面目に聞いていた大学の資料も、患者さんの前では紙切れと化すばかりだった。麻痺の回復は難渋し焦りさえあった。
そんなことを知ってか知らずか「理学療法士の〇〇さんは凄いわね」と彼女は毎日呪文のように唱えていた。
退院日、彼女が病院へ書いた手紙には「〇〇先生」への感謝の言葉が書かれていたし、私のことはその他大勢のスタッフの一括りにされていた。
疑いもなく、特別感謝されるのが当然と思っていた自分が恥ずかしかった。
・・そういや「作業療法士は黒子だ」って言われてたっけ。
『そもそも、作業療法の達成は「先生のおかげ」と感謝されることではない。患者さんが「1人でに良くなった」と思えるようにすることだ』・・そんなことを先生が言っていたっけ。
やっとスタート地点に立てた気がした。