朝、夫がトイレからなかなか戻ってこなかった。心配して見に行くと、夫はトイレで吐血し、うずくまっていたので、驚いてすぐに救急車を呼んだ。
検査の結果、胃に腫瘍があり摘出手術が必要であると診断され、そのまま急性期のX病院の外科に緊急入院となり、入院から2週間後に手術が行われた。
その後、胃がんの手術は無事に終了したと聞いたものの、夫はふさぎこんだ状態が続き、さらには誤嚥による肺炎を起こした。
車椅子でなければ動けないなど、なかなか元のようには回復していないように思え、また症状について医師と十分にコミュニケーションが取れていないと思い、不安を感じていた。
そのような中、ある日医師から、別の病院(Y病院)への転院を切り出されたが、不満な気持ちを抱いた私は「確かに今の状態だと、病院のお世話にならないといけない。でも、わざわざリハビリ専門の病院に移動しなくても、先生も丁寧に説明してくれるし、看護師さんも知った人が多いこのX病院でリハビリをもう少しできないか」と強く訴えた。
しかし、医師の答えは、専門治療が必要なのでY病院を勧めるというものだった。
それを聞き、医師が自分たちのことをしっかり考えてくれていないように感じてしまった。胃が原因で入院したのに肺炎にかかったことにも納得がいっていなかったし、X病院には治しきることができないのだと考え、これ以上争う気力もなくなり、「わかりました。まぁこれ以上言っても、先生も立場があるでしょうから」と答え、夫はY病院へ転院した。
初めはこんな古い病院で大丈夫かと内心疑っていたが、Y病院のスタッフはとても熱心にリハビリ指導をしてくれた。
さらに、胃切後の食事摂取の方法を説明してくれたり、誤嚥性肺炎の既往から嚥下リハビリも継続して行われたり、夫が日常生活でできていること・できないことについて看護師が把握していたり、細やかな申し送りがされていた。
何より、夫は見違えるようにやる気が出て、みるみる体力回復し、食事もとれるようになった。
ふさぎ込んでいた夫が元のように元気になっていく様子を目の当たりにし、X病院の言った通りだと感心した。
3週間後、退院した夫の、X病院での定期受診の日。私は心から、医師に感謝の気持ちを伝えた。