コルク代表で編集者の佐渡島庸平さんが、温めている漫画の企画を「おすそ分け」としてシェアするこの連載企画。
1月の企画の立て方のテーマは、「大きな時代の流れを読む」です。
絶対に揺るがない不可逆な時代の流れとは何かを考え、その流れにのることで作品を多くの人が読みたいと思うものに仕上げる。そんな「大きな時代の流れを読む」という企画の立て方で考えた、具体的な企画の題材を4つ紹介しています。
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人類史上、最も注目を集め続けるイベント。
佐渡島:4つ目となる企画は、「オリンピックをテーマとした競技を描く」です。
これは言わずもがなですが、オリンピックというのは4年に1度は必ず開催されて、毎回毎回、確実に盛り上がります。
人類の歴史の中で、こんなに注目を集め続けているイベントは、あまりないと思うんですね。
なので、オリンピックが舞台となるような競技で漫画を描くというのは、大きな時代の流れを読むという意味で、ヒットを生むことのできる確率がすごく高いんです。
でも、世の中を見渡すと、オリンピックを舞台にした漫画って意外と少ないんですよ。体操を題材にした『ガンバリスト! 駿』がありましたが、それも連載が終了して随分経ちます。
サッカー、野球、バスケットボールを題材にした漫画は沢山ありますが、そのほとんどがプロスポーツであったり、高校選手権が主な舞台になっていて、オリンピックを目標にして戦っているわけではないんです。
そう考えると、オリンピックが舞台になって、多くの人が語りたくなる競技を漫画の題材とにするのは、他に作品が全然ないので、関心が集まりやすいんです。
そこで、今回は数あるオリンピック競技の中でも、特に僕が企画として面白い漫画が描けそうな2つの題材についてお伝えします。
オリンピック競技で、ヒットの可能性が高い題材とは?
佐渡島:まず1つ目は、サーフィンです。
サーフィンは2020年の東京オリンピックで初めて正式種目になり、今注目が集まっています。
そして、サーフィンが好きな人というのは、どの時代にも安定的にいて、サーフィンについて熱く語りあっています。競技人口が少なくても、長く存在できているというのは、サーフィンの競技としての奥深さが強いからだと思うんです。
これって、ワインと一緒だと思います。ワイン好きって、いつの時代も存在するじゃないですか。しかも、ワインについて深く語り合っている。それはワインが語りたくなる奥深さを持っている飲み物だからなんです。
だから、ワインの奥深さを描いた漫画『神の雫』は、すごくヒットしましたよね。それまでワインを題材にした漫画は『ソムリエール』くらいしかなかったので、ワイン好きの人にも読まれるし、ワインの奥深さを知りたいと思っていた人にも歓迎されました。
サーフィンもワインと同様に奥深さがあり、多くの人がその奥深さに1度は触れてみたいと思う題材なんじゃないかと思います。しかも、オリンピックというドラマが生まれる瞬間を物語に組み込むことができます。
なので、ヒット作品を生み出すという意味では、サーフィン漫画はすごく可能性がある題材だと思っています。
そして、2つ目は、パラリンピックです。
パラリンピックは回を重ねるごとに規模が大きくなってきて、注目度合いも増してきています。
そして、テクノロジーの進化により、技術による人間の身体へのサポートの質もどんどん伸びてきています。先日、乙武さんがモーターを搭載したロボット義足をつけて、義足訓練を開始したことも大きく話題になりました。
もしかすると、このまま技術が進化していくと、義足の人の方が、義足じゃない人よりも100メートル9秒台を早くきる可能性があるのかもしれない。
そうすると、パラリンピックの方が、オリンピックよりも見応えがあるという時代が訪れるかもしれません。
そして、健常者と身体的にハンディキャップをもっている人の差とは何かを、みんなが考え始めるようになる…。
そんな少し先の未来を描く漫画は、とても読んで見たくなりませんか?
大きな時代の流れを読むという意味でも、未来においてテクノロジーがますます進化していくというのは、絶対に不可逆な流れなんです。
パラリンピックを目指すアスリートたちを主人公にした物語というのは、大ヒット漫画になる可能性がとても高いと思います。
…ということで、オリンピックをテーマにした題材として、僕が最も注目しているのは、サーフィンとパラリンピックです。
これからもオリンピックは絶対に多くの人を惹きつけてやまないイベントとして存在し続けるでしょう。
オリンピックをテーマに、この2つを題材に漫画を描いてくれると嬉しいですし、「この競技を題材にした漫画の方がもっと面白いものが描けそう」というものがあれば、その競技を題材にチャレンジしていってもらえると嬉しいです。
聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム
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