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お知らせ  

【ちはやふる小倉山杯記念鼎談】楠木早紀・松川英夫・末次由紀5〜ゾーンに入ると読まれる札が光る〜

※この度の令和2年7月豪雨災害に遭われた地域の皆様に対し、心よりお見舞い申し上げます。

一日でも早く、復旧、復興されますよう、心よりお祈り申し上げます。



去る2月23日、第一回ちはやふる小倉山杯開催を記念し開催された、楠木早紀永世クイーン、全日本かるた協会・松川英夫会長、そして漫画家/ちはやふる基金発起人・末次由紀の3名による鼎談をお届けしています。最終回の今回は、出席された記者の方との質疑応答の模様です。




ー最後に記者の方から追加でご質問などあればどうぞ。 


 質問者1:お三方に一つずつ質問させていただきたいのですが、楠木さんと末次さんには、今日の大会は見てもらうかるたということで、かるたをやったことがない人にも多く知ってもらうということで企画をされたと聞いております。そういう一般の人に対して、どこに注目してかるたを見て欲しいのか教えてください。    

 松川会長に関しては、先ほどお三方のお話の中で、対戦相手はどういうイメージで捉えていますかという質問に楠木さんが答えてくださったんですけど、会長の答えも聞きたいなと思ったので、会長が対戦相手にどのような思いを抱かれているのかお答えいただけると嬉しいです。 


 松川:名人戦というのは大きな、他とは違う大会であることは間違いないんですけども、その中で私が現役の中期、後期に感じたことは、やはり私の対戦相手が、私が若い頃に抱いていたワクワク感をどれくらい持っているだろうかということでした。やはりタイトルに限らず、何か物事を自分の物にしたいというときには、そのワクワク感が一番大事なんだと。ただ成り行きにながされて負けちゃったよとか、知らないうちにやったら勝っちゃったよじゃなくて、なにか自分で納得いくような勝ち方をして、勝っちゃったんじゃなくて、自分が予定通り勝ったんだというような思いを持つために、今まで1年間や2年間、こうやって積み上げてきたものを今日出すんだと、そういうワクワク感がどれだけあるのかということが非常に興味があることだったりする。そしてそれを、実は現役最後の頃、私の後輩である川瀬くんや種村くん、彼らもきっと私と試合するときに持ってくれたに違いないと。むしろ私の先輩たちは、そういうワクワク感というより逆に、私みたいな変なチャレンジャーが現れて辛かったんじゃないかと。でも私は、素直に若手の一人として自分がこのショーにでられるんだというワクワク感は誰にも負けないという思いでやっていたということがありましたから。名人戦では、そんな思いで相手の人を思っていたのは事実ですね。 


 ーご質問のあった”見るかるた”について、末次さん、楠木さんはどう思われますか? 


 末次:今日も、YouTubeで配信をしてもらっていて、見てもらっている人もすごくたくさんいるんですね。やはり、名人クイーン戦くらいのスロー再生だったり、札の枚数差が表示されたりとか、そこまでは届いていないので、見てくれるみんながわかりやすいように工夫する必要がこちら側にはあるなと思いまして、やはりそこは工夫を続けて、分かりやすいから見ても大丈夫だよという風にアピールしていくのが大事だなと思いました。やはり、やらない人にとってはわからない部分が多いと思うので。見てくれた人に満足してもらえるようなサポートをしていきたいと思っています。 


 ー楠木さんはいかがですか? 


 楠木:やはり子供たちも今、「先生の昔の動画見たよ」とか言ってくれるんです。「あれ全部適当に払いよるの?」って聞かれたんですけど、「ちがうよ」って、一つ一つ動画を見ながら説明すると、「わーすっごい」て言うんですね。だから、見るだけじゃなくて、”分かって見る”ということがこれから大事になっていくんじゃないかなと思います。     

 自分の経験に置き換えてみると、私の父は野球が好きで、巨人戦を小さいうちに付いて行って見ていたんですけど、あのときって、「待ち長い」しかなかったんですよね。ただ今、私は友達と球場に行くくらい野球が好きなんですけども、ルールが分かって、選手がこんな人って分かって試合を見ると、やっぱり楽しくて盛り上がれる。(競技かるたの試合も)放送していただいて、解説もしていただくんですけども、今後期待することとしては、選手同士がその映像を見ながら「ここはこういうことがあってこうだったよね〜」というような、将棋の感想戦ですかね、あんな感じのことがあると、より競技かるたの奥深さが分かってもらえるのかなと。私は野球はできませんが、野球を見ることはすごく好きですし、ラグビーなんかでも、ルールが分からなかったけど見ているうちにルールが分かるようになってきて応援したくなったという経験があるので。競技かるたも、今は名人クイーン戦でも、かるたをやっている人たちが応援に駆けつけてくれる。それも大事ですけど、競技かるたはできないけれど、競技かるたの魅力ですとか、見て応援したいとか、かるたをやらない人の応援団というのがどんどん増えていけば。将棋や囲碁みたいに、かるたの頭脳プレイが浸透していったら嬉しいなという風に思っています。 


 松川:今の話とても面白くて、私昔、NHKで解説やってた時代がございました。その時にやっぱり野球の話が出ました。私も野球を見るのが大好きなんですが、野球解説者でも、面白い解説者とそうじゃない解説者がいるんですね。どこが違うのかというと、結果論でなんでも喋る解説者はつまらないんですね。私がNHKさんに解説を頼まれたときは一番自分がしなくちゃいけないことは結果論で喋るのをやめることだろうと。つまり、今度はこの札が出るぞと、この中のグループから出るんだぞという、何か自分なりの思いを語らなければならないと思ったのです。解説者も一緒になって、本気でその勝負に加わっているとその予測ができるんです。札100枚も読むのに当たるわけないじゃないかとツッコミが来そうですが、実はそのときには全体の大体8割くらい当てたんですよ。だから見ている人からは、あれは中継ではなくビデオじゃないか、後から録音した解説なんじゃないかというような言葉が出てきたんですよ。




ー読まれる札って予測ができるものなんですか? 


 松川:つまり予測というものはですね、私みたいに何千回、何万回も勝負をやってますと、この流れでいくと今度はこの辺のグループから出るぞ、というようなものがやはり分かるんです。ただ外からふわっと見ているだけでは次の札の予測はつかないけれども、真剣に見ていると、この流れだぞと、まさに私が現役時代やっていたことと同じような、札のいわゆる気配が蘇ってきたんですよ。そういうことが見る人と解説者にとって重要なことであって。たとえそれがはずれたとしても、解説者がそれだけ思いを込めて言っているということに対して、それをただ冷静に、ほらちがったじゃないかというような見方は実は、視聴者としてもアマチュアです。アマチュアはアマチュアなりに、プロのアマチュアになってほしいわけです。サッカーでもラグビーでもそうかもしれませんが、ピッチャーでも、ストライクストライク言って、思いっきりストライクして打者の三振取っちゃう、ここでストライクまた出すかよと、でも今回また出しそうな目をしてるとか、三球三振で取っちゃう場合もあるわけですね。そういうのを結果論として言うんじゃなくて、投げる前に、あの目つきは取っちゃうぜ、というような解説者が大事なんですよ。 ところが解説者っていうのは結構引いてみてる解説者が多くて、自分が言ったことが間違ったらどうしようみたいな。そんなつまらない見方で解説してるからみんなつまらないわけです。 


 ー楠木さんも現役時代には、この辺から出そうだなというような予測は立てられていたんですか?


 楠木:予測は全くしないですけど、こう、読まれる際に全体を見ると、本当にゾーンに入ったときは札が光るんですよね。これ、絶対次読まれるというのが、ゾーンに入っていると、本当にマリオがスターを取ったときみたいになるんですよね。 


 末次:もしその光ってる札が相手に取られたらどうしますか? 


 楠木:あ、絶対に取られないんです。過去の動画を見返してると、やっぱり凄まじく速い札があるんですけど、それは全部ゾーンに入っていて、次読まれる札が分かって、というのがあるので。ただ私はかるたやってますし、永世クイーンでもありますが、人の試合を松川会長のようにそこまでしんどく見ることはできないです(笑)。    

 ただ、もし可能なら、名人クイーン戦とか、選抜、全日本みたいなタイトル戦では無理だと思うんですけど、こういったちはやふる小倉山杯のように、見てもらうというのを主に置いた大会で、見ている人に次に読まれる札がわかる、この札が読まれますよっていう表示があったら、見せる大会だからこそできる面白さだと思うんです。だから選手は一つの試合に集中していて、読手にも予め100枚決まっていてそのとおり読んでもらう、もちろん選手には極秘で。ただ選手とみんなが音を聞いて、やってみようとか並べてみようとかしながらYouTubeで見れる。そういうことができると、もっと見る人が増える。私は会長のように熱心には見れませんが、それでも面白いと思います。


 松川:楠木さんが仰ったようなカメラワークは大賛成ですね。これからは見てる人の方が優位に立ってる、そのくらいの思いで中継しないと、今の視聴者の満足感は得られないと思いますね。


 楠木:私たちも、試合後に見て、やっぱり速いよねとか、あれはすごかったとか言えますもんね。


 ー他の方はご質問いかがでしょうか? 


 質問者2:二つほど質問があって、まず末次さんに質問なのですが、漫画をこれまで描いてきて、このエピソードは自分的に描いていて感動したり、苦しかったりだとか、印象に残っているシーンというものはありますか? 


 末次:205話ですね、話数が出てくるくらい苦しくて、描くのも大変だったんですけども。ここはとても大事なところだと。東西決定戦で、太一と新が戦った試合の3試合目。決着がつく試合のラストの勝ち方が、ここはすごい大事だという思い入れが強過ぎて、締め切りはよく守るんですけど、今回ばかりは無理だ!と、なんか描ける、けど、なんか描けるで描きたくないからちょっと時間をおこうと思って、締め切りを少しだけ破って1日ぐるぐる迷ったりして。普通は32ページで描き終えなければいけないところを37ページまでになっちゃって。37ページになってしまったけどここは本当に大事なシーンなので5ページくださいと編集部にお願いしたくらい少しも削りたくなかった。思い入れのある回でしたね。一緒にかるたをしてくれてありがとうという新の本心がで出るところ、それで太一も救われる部分があったので、すごく、それもやっぱり田舎でかるたの遊び相手があんまりいない中でやってきた男の子がかるた友達を得る。ずっと長くやってくれて、とても強くなってくれて、お前に勝ちたいと言ってくれる相手を得るというのはすごい嬉しいことだろうと。孤独を埋める相手として生まれて、育って、成長してくれた相手を抱きしめるみたいなシーンは、やはりすごく思い入れが強いシーンでした。 


 質問者2:ありがとうござます。かるたを通じて人と繋がりを得ると言うのはかるたの一つの魅力だと思うんですけど、競技人口もどんどん増えてきて、小さいお子さんから大人まで幅広い年齢層の方の心を掴む競技かるたの魅力って何だと思いますか? 


 末次:あり得ないくらいの研鑽だと思いますね。1枚、2枚、速く取れる札があるのは分かるんです。でもその数が尋常じゃないから全部取られる。そして対戦相手はこの札だけでも狙ってる、という札しか取れないんです。それくらいの絶望を、そこまでの心を全部に分散させて、執着させるほどの集中力を、人は普通の生活じゃ絶対に発揮しないような磨き抜かれた努力を、皆さんしてらっしゃる。その特殊な頑張りを、是非みんなに見てもらいたいと。海外の人にも、こんなにここまでできる人がいるんだよと言うミラクルな感じをびっくりしに見にきてもらいたいなという思いがあって。みんなぽかんとすると良いよって気持ちがあって。もしその中で、自分もこんなになるんじゃないかと思う子がいたら始めて欲しいし、無理だなって思ったら物語を楽しんだり選手を応援したり、時々配信とかを見たりして楽しむみたいな、超人の集いを楽しんで見てくれる人が増えたら良いなと思います。 



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楠木クイーンは2020東京オリンピック公式聖火リレーの走者に選ばれていました。当日、鼎談の場にはなんと楠木クイーンが持って走る予定となっていた聖火のトーチがサプライズで登場。全員で楠木クイーンにエールを贈りました。残念ながらオリンピックは延期となってしまいましたが、基金一同、来年を楽しみにしています。





<完>



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