このコラムでは、毎月さまざまな雑誌やサイトで始まる何十作もの新連載を読んでいる漫画ソムリエ・東西サキ(@tozai69)が、特に漫画家の皆さんに注目していただきたい作品をご紹介します。
今回ご紹介するのは、「コミックDAYS」で連載がスタートした『殺し屋やめたい』(作:外木寸)です。
本作の主人公は、移民として生きていくため暗殺を生業にしている女性・ローズ。彼女には紅華という女学生の恋人がいますが、暗殺者である自分の正体を打ち明けられずにいます。
そして紅華もまた、同性愛がタブーとされている宗教の神父である父親に、ローズのことを話せずにいるのです。
最近、同性間の恋愛や殺し屋を題材にした作品が増えてきた印象があるのですが、今回ご紹介する『殺し屋やめたい』はその中でも異色な作品で、個人的にイチオシです!
優れた企画性
主人公・ローズは、ある神父に対して暗殺の罪を告解しています。そして、その神父は恋人・紅華の父親です。
聖職者という職業柄もあり、"同性愛"と"殺人"はどちらも大きなタブー。主人公のことを思うと読者としては最も警戒すべき人物ですが、本作のユニークさは、この父親を単なる恋愛の障壁として描くのではなく、主人公の知らない恋人(娘)の恋愛観と主人公の裏の顔、両方を知る中立な立場として設定した点にあります。
読者は父親を通して2人の恋愛を客観的に見ることになるので、「真実がバレたらどうなる?」というハラハラはもちろん、恋愛における虚構と現実を楽しむことができます。
この「恋愛を立体的に見せる」という企画性がユニークでした!!!
絵柄・演出の魅力!
本作は画面が描きこまれていて、殺しの描写もリアルです。これが"殺し屋"というファンタジーに現実味を与えています。
そしてこのリアリティが、「殺し屋をやめたい」というヒロインに対して「そう上手く事が運ぶだろうか?」という緊張感につながっています。
いつか嘘がバレるというハラハラにアクションやサスペンスへの期待が加わり、ジャンルレスな魅力が生み出されていると感じました!
緊張感と緩さの同居するジャンル不明な魅力をもつ本作、ぜひ読んでみてください!単行本が出たら僕は買いますっ!
☆『殺し屋やめたい』の注目ポイント☆
・「恋愛を立体的に見せる」ための優れた企画性
・緻密に描き込まれた絵柄と、それによる演出の魅力
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