作品詳細
6年もの間、「テーラー五島」を留守にしていた英次が帰ってきた。最初の客はイタリアの著名なテノール歌手、カルロ・ヴェルヴィッチ。彼が13年前に初来日したとき、英次の父が燕尾服を仕立てたのだった。当時のカルロは実力もあり、自信に満ちあふれていたが、現在ではまったく精彩を欠いて世界の舞台から締め出されている。彼の転落ぶりに疑問を持つ英次は、カルロが今までに歌ったすべての曲の記録を見るうち、あることに気が付く(第1話)。▼ある日、英次のところを若い女性客が訪れる。彼女は、ある事情から今はいない自分の父のために、背広を作って欲しいと注文する。採寸は、彼女の幼いころの記憶だけが頼りだったが、英次はこの困難な仕事に挑戦することを決める。そんな折、その女性の母親がやってきて、「私たち母娘(おやこ)の間立ち入らないでほしい。娘の依頼を断って欲しい」と言う……(第2話)。