13000 1203 1203 false WmdHdeTlZM4gjjBLLTkzWzbrhW1a9E0g b067583b9581f7496dfbd743b2638f06 国際マンガ・アニメ祭IMART「ジャンプの世界戦略」講演メモ 0 0

いつもお世話になっております、コミチの早坂です。


本日11/15に開幕した国際マンガ・アニメ祭IMARTの特別講演「ジャンプの世界戦略:MANGA Plus 海外配信の狙い」に参加したので、講演メモを共有します!


IMARTについて:https://culturecity-toshima.com/event/1055/


漫画家さんが知っていて損はない情報だと思うので、ぜひ目を通してみてください〜。


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「ジャンプの世界戦略:MANGAPlus海外配信の狙い」

登壇者:伊東敦さん(集英社・海賊版対策)籾山悠太さん(集英社・少年ジャンプ+副編集長)

モデレーター:椎名ゆかりさん(海外コミック翻訳者、ライター、東京芸大非常勤講師)



◎椎名さんによる、北米マンガ市場のおさらい


MANGAPlus:週刊少年ジャンプを全世界に向けて、集英社が直接同時配信を行っている


北米におけるMANGA売上状況

2000年代半ばがピーク。(NARUTO人気)徐々に下降し、現在はまた上昇傾向(アニメ配信の影響)


アメリカのコミックス総売上中のデジタル比率は10%程度

日本のデジタルコミックスの売り上げに対して、北米のデジタルMANGAの売り上げ比率は10〜15%

日本国内のデジタルマンガ市場に対して、アメリカのMANGA市場は1%程度→一つの要因は海賊版


スキャンレーションの弊害

・経済的ダメージ

・作品的ダメージ:誤訳、複雑な人間関係が伝わらない

・Fワードの連発

EX.僕のヒーローアカデミア



◎集英社のターン


1.MANGAPlusとは

1)対象地域:全世界(日本、中国、韓国からはアクセス不可)

2)更新タイミング:日本と同時

3)言語:英語、スペイン語(人口の多さ、Youtube上の海賊版動画の再生回数を分析した結果、スペイン語圏が最も多かったことを考慮)

4)作品:連載中の約40作品(地域によって多少のばらつきあり)

5)価格:最初の3話、最新3話を無料配信(MANGAPlus内はすべて無料)

6)運営形式:ジャンプ編集部内で直接運営(これまでは海外企業とライセンス契約を結んでいた)

7)広告:収益の一部を作家に還元


2.なぜ始めたのか

1)日本の漫画は海外で人気があるのか

”マニア”と一般人の熱量の差

日本のコミックスは海外では高価(ジャンプコミックスは日本円で1000円以上)

ライトユーザーの獲得


2)海賊版、危機感と可能性

アメリカでは1兆3000億円がタダで読まれている→マネタイズできる最大規模は5000億円(アンケート調査の結果)

・最大手海賊版サイト:MANGA READER.NET

・インドネシアの海賊版サイト:なろう系作品が人気

・Youtubeの紙芝居動画

→ライトユーザーを獲得するチャンスでもある

これまでは正規版が数日内に読める国は15カ国くらいしかなかった

そもそも海賊版しかない国の方がはるかに多かった

・中国の海賊版サイトでは、最近日本の漫画が見つかりづらくなっている(2013年はトップページの多くが日本の漫画だったが、現在は中国の漫画作品がほとんど)

→出版社の海賊版対策の成果・日本の漫画を使わなくても十分広告収益が上がる状況になった


3)韓国・中国プラットフォームの世界進出

ウェブトゥーンの進出

・韓国:NAVERウェブトゥーン MAU/6000万人

→Googleplayの「Comics」カテゴリ100カ国で1位

「日本の漫画が海外で人気」という言説への疑問


4)直接展開の意義

エンタメコンテンツの海外展開の重要性

→ジャンプ+の作品では、フランスでは日本の部数の2倍売り上げているものもある

・国ごとの反応を編集部が連載中に把握することができる

→ライセンス展開をきめ細かく行うことが可能

EX.フィンランドで、「銀牙」が国民的大ヒット


3.始めてみてどうだったか

MAUは伸び続けている

スペイン語の更新作品数は英語の作品数よりも少ないにも関わらず、スペイン語圏での人気が高い

英語・スペイン語圏以外の国(インドネシアなど)でも人気が高い


1)作家・ライセンシーの反応について

Twitter上で、リアルタイムで全世界の読者からリプライが送られてくる

ライセンシーは大歓迎


2)海賊版漫画アプリ「MANGA ROCK」閉鎖について

ウェブサイト閉鎖、アプリストアからの削除、お詫び文掲載

ただ、閉鎖前からのユーザー向けに新規作品の公開は続いている、未だ対策中

閉鎖後、MANGAPlusのユーザー数は一定数増加した


3)発売日前に流出する海賊版について

ネタバレサイトの摘発、食料品店などでの早売り→ネット上にアップを規制、流通業者の横流し逮捕

買っても罪にはならないため、根本的な対策は難しい

cf.「BORUTO」の移籍:「Vジャンプ」は「少年ジャンプ」に比べて海賊版の流通が少ない

移籍後、MANGAPlusのBORUTO閲覧数は2.5倍に増加


4)Redditについて

・海賊版で読むのがいいのか、正規の場で読むのがいいかという議論

【正規の場派】

MANGAPlusはどこでも日本と同時に読める、好きな作家の応援にもなる

早売りの海賊版を読まずに、公式での配信の後に語り合おう

Redditの漫画コミュニティが本当に求めていたもの

翻訳の質も高い

【海賊版派】:多数派

コミックスを買って応援はするけど、できるだけ早く読みたい

どちらでもいいけど、読者への制限はやめてほしい(話題にするな、という意見の押し付けはやめてほしい)

→議論が起こる時点で、一歩前進


5)SPY×FAMILYについて

MANGAPlusでも非常に人気が高い

ジャンプ+のオリジナル作品のため、紙の作品から海賊版というルートがない

連載開始と同時に海外で人気が拡大→ライセンス展開もスピーディーに

これまでは海外でヒットするのは、アニメ→漫画の順だった


6)今後の「MANGAPlus」について

タイのユーザー数が多いため、タイ語でも地域限定で作品配信を考えている

→タイでは英語の海賊版の流通数が多い

将来的には、あらゆる言語で配信したい



Q&A

・海外向けに漫画の作り方が変わるのではないか

→作家や編集者の考え方によるが、最近はすでにその兆候がある。実際に海外で売れている実績がある作品の場合は特に意識することもある。

・SPYFAMILYは、設定の段階から海外を意識していたのか

→そうではない。MANGAPlusで配信した一番の理由は「めちゃくちゃ面白いから」

・SPYFAMILYはなぜ週刊少年ジャンプではないのか

→担当編集の判断

・市場として大きいはずの中国・台湾・韓国に配信しない理由

中国:市場が独特なため、別のアプローチを考えた方がいい

韓国:すでに別サービスでユーザーを獲得しており、市場も大きい

台湾:展開はしているが、作品数は少ない(韓国と同じ理由から)

・全ての作品が載っているわけではない理由

→表現の問題。性的表現などが世界に受け入れられるか。 cf.「NANA」の海外展開


集英社が直接運営するため、リスクが分散できない

海外も視野に入れた作品作りができるような編集者教育の実践


日本の漫画を海外展開する場合、アニメ・ゲームで人気なものがほとんどで、なおかつほとんどジャンプ作品


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メモなので、文章のつながりがわかりづらいところなどがあったらすみません。

明日以降の講演にもちょこちょこ参加する予定なので、またこんな感じで共有したいと思います〜。





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