ミキサー×コミチ漫画賞(第16回コミチ漫画賞)の総評を書かせていただきます、コミチ代表のマンディ(@daisakku)です。
今回のコミチ漫画賞は、数々の人気作の編集を手がける編集プロダクション『ミキサー』さんとの共同開催という形でやらせていただきました。
ご応募いただいた作品を読んで、縦スクロールフルカラーというフォーマットに加え、「彼氏もの彼女もの」というテーマ設定はやや漫画家さんを悩ませてしまったかなと思います。
今回は、大賞・入賞は選出なしという形で、特別賞を選出させていただきました。
詳細は、ミキサー・北室さん、しーげるさん、シャープさん、たらればさんによる寸評をお楽しみください!
特別賞
専属の花嫁 みつき溯
ミキサー・北室美由紀さん(@ktmrmiyuki)
Webtoon読者さんに刺さりそうなストーリーで1話から興味深く拝読しました。
縦カラー向きの絵柄と着彩方法なので、これからももっと上手になっていきそうです!
縦カラーを描こうという意思をとても感じましたが、横漫画の表現技法を使ってしまっているため、テンポが悪くなっていました。
コマ間が詰まりすぎてしまっているために起こっているテンポの悪さなので「コマ間をもっと大胆にあける」「モノローグをコマとコマの間に配置する」ことを意識するだけでも、この作品の読みやすさが格段にアップすると思います。
鎖や髪が枠線の役割を担う表現パターンはとてもセンスがありますので、そういった表現パターンをもっと増やして自由に描いてください。
キャラクターの魅力を際立たせるために、特に1話での善悪はわかりやすく表現することがとても大切です。
前編でリリアが主人公を叱る場面では、ややリリアの正当性が薄いエピソードになってしまったのがもったいなかったです。 個人的にはリリアが報われなさすぎてしょんぼりしてしまったので、主人公はしっかり成敗され、リリアが幸せになる未来が見たかったです。
この度はご応募ありがとうございます。
シャープさん(@SHARP_JP)
『サレタガワのブルー』など、人気作数々の編集を手がけるミキサーというプロダクションと連動した今回のコミチ漫画賞。残念ながら応募作すべてが、ミキサーから担当編集がついて連載という選出条件に満たなかったため、大賞/入賞なしという結果になりました。ガチで審査されていることがよくわかります。ただし1作だけ、惜しかったという意味で特別賞に選ばれたのが上記の作品。
広い意味で恋愛ものといえるのでしょうか。そもそも今回の応募規定が「彼氏もの、彼女もの」である。応募ページにはご丁寧にも、彼氏、彼女、同性、異種間、動物など、自由な相手との「関係性」を描いてください、との補足も付け加えられているので、この作品もたしかにその条件にはまっている。自由な相手との恋愛だ。
ただしその関係性は自由ではない。捻れまくっているとも言える。特にマンガにおけるメイドと使用人という関係性は、たいてい「ご主人さま〜」といった牧歌的な支配関係を前提に描かれるが、この作品はそうではない。主従も入れ替われば、主人公である使用人は恋愛観を根底からこじらせたまま、バッドエンディングに突き進む。その勢いに気圧されてしまった。力作だと思います。
たらればさん(@tarareba722)
「おお、これ噂のメリーバッドエンド来るか!!??」と思っておりましたら期待どおり。作者ご本人もその旨を語られており、個人的にとても腑に落ちました。地位も名誉も金銭もある独善的な主人公が、なんの環境的な変化もないまま改心するはずがないですよね。もともと愛情というものは独りよがりで残酷なものです。特に自分自身をうまく愛せない人間が、なんの訓練もなくいきなり誰かをうまく愛せるようになるわけがない。
そうした世間知とも合致しつつ、一読者としては、お相手であるリリアについてはもう少し掘り下げてほしかったなと思いました。美しくて生意気で勝気で、そのうえ無謀である彼女は、なぜ挑戦的な態度を取り続けたのか。たとえば主人公の元を離れた元恋人と関係があったとか、リリアが監禁されている部屋の奥に元恋人の干からびた亡骸があるとか。そういう背景や関係のつながりがあればもっと物語に深みが出たかなとも思います。あと主人公は絶対に反省せずこのまま社会的に破滅してほしい。
しーげるさん(@henshu_shigel)
「彼氏もの彼女もの」というお題から想起される甘い雰囲気とはかなり距離感のある作品。主人公もヒロインも、最初から最後までほぼ相手を睨んでいるような表情ばかりが描かれている。それでも最初のつかみが効いているのもあり、2人の緊張関係がどんな結末を招くのか気になってぐいぐい読まされてしまった。無駄のない描写と集中力を切らさない展開は縦にも合っていて良かったと思います。
ただ、主人公が一方的にヒロインを従属させるだけの内容にとどまってしまったのは惜しい。なぜ、わざわざ「専属」にさせられる危険のある仕事に応募したのだろうか。彼女側の事情も深掘りすることで、双方向の「愛憎」関係にまでできていたらもっと読み応えのある作品になった気がします。
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特別賞を受賞されたみつき溯さん、おめでとうございます!
また、難しいテーマだったにも関わらず、たくさんのご応募ありがとうございました。
また次回のコミチ漫画賞を楽しみにお待ちください!
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