みなさま、あっという間に夏が過ぎ、秋の香りがしてきましたが、どのようにお過ごしでしょうか?
冬生まれなのに、夏が好きなコミチ代表のマンディ@daisakkuです。
第3回目のコミチ賞も、126ものたくさん作品が集まりました。本当にありがとうございます!
少し画力というテーマが難しかったと思うので、ここで少し詳しく「画力」について説明させてください。
マンガならではの「画力」とは何か?
僕なりの解釈は、
1.キャラの主義がわかる表情
2.キャラの主義を表すポーズ
3.キャラの主義がわかるセリフ
です。
例えば、ドラゴン桜の桜木。
彼の主義である「東大至上主義」であり、
それがわかる表情・ポーズ・セリフをしていると思いませんか?
(引用:ドラゴン桜2・1巻表紙)
また5ヶ月後に同じ「#画力」というお題でコミチ漫画賞を開催するので、ぜひ参考にしてもらえたらと思います。
それでは各受賞を発表します!
<大賞>
シンジュウの森(井上ハヤオキ)
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(シャープさん @SHARP_JP コメント)
画力がテーマの大賞は、井上ハヤオキさんのシンジュウの森。タイトルの「シンジュウ」は神獣であり、なおかつ臣従あるいは心中なのかな、と深読みさせますが、いずれにしろ大きな妖怪譚へと進むのでしょう。物語は日本の昔話を想起させるような和テイストであるものの、画は無国籍なイメージでありながら、都会的な雰囲気させ感じさせ、なんとも不思議な印象をもたらす。
たとえば背景の田舎の風景は切り絵の影絵なのに人物はアジアのマンガっぽい、あるいはビーグル犬のチャップはヨーロッパの絵本に出てきそうなかわいい犬なのに、唐突にダイナミックな墨絵表現を見せる。そして随所で描かれる犬や人間の動きは異様に鮮やかだ(回想シーンの犬と主人公が雪にダイブするコマが特に好き)
この画の魅力をうまく言い表せないのだけど、おそらく私が認識するよりずっと多くのテイストと、マンガ表現の実験がミックスされた結果、私に不思議な魅力をもたらしているのだろう。音楽でいえば、バレアリックというか、オールジャンルの良質なミックスCDを聴いた気分に似ているのかも。まだ1話目ですし、これから村の秘密とともに、画が持つ魅力の謎も明らかになってほしいです。
(たらればさん @tarareba722 コメント)
回を重ねるごとに秀作が増えて選出が難しくなるコミチ漫画賞ですが(嬉しい嘆き)、今回の大賞候補も大いに悩み、一番「続きが気になる!」という本作が受賞となりました。独特のタッチとミステリアスな展開、そしてなにより犬の話! ということで、おめでとうございます。続き、読ませてください。
(勢い余って検索して「第8話」までこちら http://mavo.takekuma.jp/title.php?title=117 で発見しました。ラリった鎌鼬さんが好きです)
今回のお題である「画力」という点で見ると、背景の描き方、より厳密にいうと背景の省き方がとてもうまいなと感服しました。あえて描かないことで「効果」を狙ったコマが多数あり、作品全体に独特のトーンを演出していました。
登場人物の描き分けも見事で、誰一人見間違わない。これだけ個性的なキャラクターたちがずらずら出てきたので、ぜひとも全員活躍させてほしいなと思います。特にお父さんや住職など、ちょい役がのちの展開の伏線になっていると、作品への思い入れが強まります。
何度も書きますが、ぜひ続きを。そしてなんとか終わりまで描ききってほしいです。
(柿内さん@kakkyoshifumiコメント)
正直、狭い意味での画力(上手/下手)には興味がないので、自分の「線」で描こうとしているかどうかだけで判断しました。とても良い画だと思います。ただ、キャラも背景も何もかもが全体的にはっきりしすぎていて、一枚絵の「版画」みたいになりがちなので、コマが続く「漫画」として、もう少し読みやすさも気にしてもらえると、より上達するかもしれません。
<ラリー賞>
・ヨナ書~総集編~ Book of jonah 解説付き(chiku)
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(シャープさん @SHARP_JP コメント)
物語ることが絵画表現に成しうることのひとつなら、人類が太古から受け継いできた大きな物語、つまり宗教をマンガで再構成するという試みは、しごく真っ当な行為だと思います。絵巻物を見るような、それでいて何にも似ていないchikuさんの絵が、旧約聖書という、私たちにはあまり縁のない物語を眼前にしてくれる。
ある種の伝説や寓話はたぶん、人智を超えたものを表現するために、わかりづらかったり、不思議な展開をするものですが、描き直しを繰り返すラリーを通じて、ていねいに物語に向きあった様子が見て取れます。古来の物語をマンガでもう一度物語るという試みはもっと注目されていいのかもと、この作品で思わされました。
(たらればさん @tarareba722 コメント)
古典を絵にする場合、衣服や背景で苦労するケースが多いのですが、いったい1コマ描くのにどれくらい時間をかけたんだろう…と思えるような、力の入った絵柄で見事に描ききった印象です。羊かわいい。
おそらく旧約聖書の解釈や史実との関連をとてもよくお調べになられたのだと思います。そうした記述を踏まえて、chikuさんなりの解釈を描かれたのでしょう。そのうえで、やはりもう少し説明が必要ではないかな、と思う点がいくつかありました。特に「邪悪なはずのニネベの民が、なぜヨナの言葉(神の教え)をすぐに受け容れたのか」という点は、この一連のエピソードのポイントになるので、できれば作品内でわかるようになっているとありがたかったです。
『歴史とは何か』(E・H・カー著)いわく、歴史とは現在と過去の事実との(絶え間ない)対話を指します。他ならぬchikuさんなりの解釈は、古典(この場合は旧約聖書)と読者との対話の架け橋になるのではないでしょうか。
(柿内さん @kakkyoshifumi コメント)
とにかく「16回」もラリーしたのが素晴らしいです。もっと完成度を高められるのではないかと自分の作品を疑い続けるのには、めちゃくちゃ体力がいります。今後も、これくらいでいいか、ではなく、これ以上はできない、ところまで、自分の頭脳をハードワークさせ続けてください。
<新人賞>
ブレストブ(I・Match)
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(シャープさん @SHARP_JP コメント)
今回のコミチ漫画賞のテーマは #画力 です。私なんぞにマンガの画力を語られても…と自分でも思いますが、スラスラ読めて、グイグイひきこまれるという作用が画力のひとつなら、読む側の私にだって、評価はできる。そういう意味で、今回の新人賞は画力の作用を私に自覚させた作品でした。カツアゲに悩む生徒がブレスト部のドアをノックする冒頭から、グッと引き込まれる。
ブレストといえば私たち会社員にはおなじみのワードですが、高校の部活にするには、あまりに奇妙なものです。その違和感がエンタテイメントとして描かれ、私は驚きました。とりわけブレスト中のアイデアを応酬しあうコマでは、ゲーム的な表現も感じられ、スピード感とテンポが楽しめた。ブレストの4ルール、否定しない・自由に・質より量・アイデアを結合するという解説もスムーズ。
それにしても大人のブレストだって、相手の意見を否定しないといった基本的なルールすら守れない人が多い中、高校生がブレストを通じて、陰湿ないじめを軽やかに解決するストーリーはお見事。ブレストのプロセスと実行を描くというのは、ビジネス書としても展開できそうで、今後の可能性にわくわくします。
(たらればさん @tarareba722 コメント)
今回なにげに最激戦区は「新人賞」でした。受賞作は、あえての王道(「変わった部活の部員たちが学校でよろず相談を受けてさまざまな事件に挑む」は、『SKET DANCE』や『涼宮ハルヒの憂鬱』など偉大な先行作品がひしめいています)を狙った本作品でした。
本作を評価したポイントは、ストーリーの7割が「教室で生徒同士が話し合っている」という、わりと動きのないシーンが続くにも関わらず、絵柄と構図で工夫して読ませているところです。本来であれば登場キャラクターにもっと癖を付けるとコマに動きを出しやすいのでしょうけども、あえて一見ふつうの男女学生を描いていて好感が持てました(個人的には、書記の保谷ひばりさんの役割がもうちょい鮮明になるとよかったなと思いました。ホワイトボードへの書き出しは部長がやっているので、「アイデアをパソコンにすべてメモしておくこと」(もっというと「ブレインストーミングの効能」全般)に意義付けができると、さらによくなると思います)。
あとこれは他の新人賞候補作の話なんですが、裏海マユさんの『かんなびと』、とても好きな絵柄とストーリーでした。ぜひ次回作が読みたいです。
(柿内さん @kakkyoshifumi コメント)
とても真面目な方だと思いました。評価されるマンガを描こうとするあまり、漫画っぽい漫画を描いてしまっていませんか。漫画として一応完成しているので今回は新人賞ですが、今のままではココが天井かもしれません。あえてキツイことを言いますが、屋根裏より上に行くには、一度川に落ちて自分を取り戻したほうがいい。自分を出すのが怖いから、誰かの皮を被ったものしか描けない。バランスはいいが個性が無いので、もう何か捨てちゃえば。自分の強みを探して、そこを伸ばしてください。
最後に、次回のコミチ漫画賞は、
お題:#ストーリーテリング
期間:9/16〜22
です。
ストーリーテリングを辞書で引くと、「物語を話して聞かせる」とあります。
マンガでいうストーリーテリングとは、
「キャラの動機がわかって、それをどう実現したか?」
ではないでしょうか?
例えば、ドラゴン桜の桜木は、「東大至上主義」で、落ちこぼれの学生が東大を目標にする話です。
4コマ漫画で、起承転結を表現するもよし、
8ページのマンガで、ストーリーテリングを表現してもよいです。
WEBマンガならでのストーリーテリング待っています!