いよいよ5月12日、共感系マンガ雑誌『マンガQ』の第2号が刊行されます。それを記念し、今回掲載されているSNS時代の新進気鋭のマンガ家13名にインタビューを実施しました!
今回のインタビュー相手は、マンガ『蛇女』の作者・しんぺーさんです。
10年以上のブランクを経て、再びマンガを描き始めたしんぺーさん。
しんぺーさんを突き動かす、「描きたいもの」とは何なのか?
SNS時代において、世に熱狂を起こそうとしているマンガ家たちの声をお聞きください!
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ストーカーの心理から着想を得た?!
ーー本日はよろしくお願いします!『蛇女』読ませていただきました!
しんぺーさん:ありがとうございます!
ーー今回の『蛇女』は少し不気味な雰囲気が漂っていますが、どんな想いが込められているのでしょうか?
しんぺーさん:色々あるんですが、第一のテーマは「誰かを選ぶことで始まる」ということです。『蛇女』は、鷲峯が青羽を選んで、1対1で話をするところから物語が展開していくんですよね。逆に言えば、鷲峯が青羽を選ばなければ何も始まらないんです。
ーーなるほど。
しんぺーさん:次いで、加害者と被害者の関係になってしまうストーカーは問題ですが、誰かを選んでもっと知りたい、その人のために何か行動したいというストーカーの心理そのものは悪くないのではないかということを考えていました。
ーーストーカーの心理から着想を得たとは驚きです。でも確かに、冒頭のシーンで鷲峯が青羽の家を覗き見してニヤリとしているところは、ストーカーを彷彿とさせますね…。
しんぺーさん:はい。そして、人は様々なコミュニティで演じ分けていいのではないかということ、さらに言えば、1対1の関係と集団の中での関係は別でいいのではないかということがテーマの一つとしてあります。
ーー青羽と2人で出かけるときの鷲峯の雰囲気が学校とは全く違っていたり、博物館で鷲峯と楽しそうに話していた青羽が、別々の電車で帰りたいと言うシーンにはそういったテーマが盛り込まれているんですね。
しんぺーさん:そうですね。また、漫画の表現としてやってみたかったこともいくつか盛り込んでいます。
1つは、相対するキャラクターである2人、つまり“クラスで浅く広くつながる一方で、誰も選べない青羽“と“クラスでほとんどつながりがないものの、1人の男子を選べる鷲峯“をぶつけてみたかったんです。これは、さっきも言った「誰かを選ぶことで始まる」というテーマにも関連すると思います。
もう1つは、鷲峯が終始不気味で、この終わり方はいいことなのか疑問が残るものの、「2人の関係は今後悪いものにはならなそうかも」という読後感を与えたかったという狙いがあります。
最後に、社会性のある夫を持つことで社会とつながる妻という、今では減ってきた男女の関係を、教室を社会の模式的空間として描いてみたかったという気持ちがありました。
ーー確かに、最後の鷲峯の表情には正直ゾッとしました。でも、青羽を抱きしめたり、口では「楽しかった」と言っているので、鷲峯の本心は読みきれないところがありますね。そういう読みきれないところに、読者の想像の余地を残しているということですね。
表現者や編集者と知り合うことで、ファンとは違うレベルで語り合える
ーーそもそもしんぺーさんが漫画を描き始めたきっかけはなんだったんでしょうか?
しんぺーさん:初めは、小学生のときに自然と漫画を描いて、同じように漫画を描いていた友達と見せ合いをしてました。10年以上の時を経て、社会人1年目のときにまた描き始めました。
ーー10年以上のブランクがあったんですね。社会人になってからまた漫画を描こうと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?
しんぺーさん:こしのりょう先生の漫画倶楽部という漫画制作ワークショップに参加したことがきっかけです。そこでコルクBooksを知り、絵が下手くそでも投稿できそうな場だなと思い、再び漫画を描き始めようと思いました。
ーー実際にコルクBooksに投稿してみて、どうでしたか?
しんぺーさん:ネームで上げてOKという点がありがたいです。最初は落書きのような絵をほぼ毎日あげようとしてたんですが、今ではお題ごとのペースであげることを意識しています。あとは、完成レベルをネームレベルのもの、書き込んだレベルのもので分けるようにしています。
ーーコルクBooksに投稿し始めて、何か変化したことはありますか?
しんぺーさん:漫画の描き方を色々学んで試すようになりました。ほぼゼロからなので、毎回なにかしら学んだことを試しています。また、縦スクロールで読むメディアなので実験的に描いてます。
人間関係に関して言うと、表現者と編集者の知り合いができました。それまで1人もそういった知り合いはいなかったので、ファンとは違うレベルで語り合える人間に囲まれるようになった点は大きな変化ですね。
世の中への「引っかかり」を漫画にして届けたい
ーーでは、しんぺーさんの漫画家としての今後の展望を教えていただけますか?
しんぺーさん:まずは、完結するお話をいくつか作り上げることですね。実はまだ、合計で100ページ分もお話を作ってないんです。短編をいくつか描く中で、描ける絵と内容の幅を広げていきたいと思っています。とりあえず1000ページ分は実験的に色々なお話を試したいです。
ーー短編については、何か具体的な構想はあるんでしょうか?
しんぺーさん:具体的なストーリーや設定というより、僕が漫画を描くときの意識の話になるんですが、読後に何か残るものがあって、誰かと語り合いたくなるものを描きたいんです。今回の『蛇女』もそうですが、問いかけがある漫画が描きたい。一見鬱陶しく思える主張や問いを、お話を通して自然に浮かび上がらせたいと思っています。
ーーこういう人に自分が描いた漫画を読んでもらいたい、というのはありますか?
しんぺーさん:作品ごとで違ってくるとは思いますが、世の中の何かしらに引っかかりがある人に読んでもらいたいです。その「何かしら」をテーマにした物語を作りたいと思っているので、そういう人に届いて欲しいと思います。
ーー最後に、これからコルクBooksやマンガQで漫画を描いてみたい方に向けてメッセージをお願いします!
しんぺーさん:1人じゃないです!漫画を描き始めるとき、今までなら1人で頑張るイメージが強かったと思います。でも、コルクBooksという場は初心者に開かれている上に仲間がいます。自分が描いたものを投稿するという、最初のちょっとしたハードルさえ超えれば漫画を描き続けるためのつながりが作れます。これまでは、技術的なハードルが高すぎて仲間ができず、続かなくて、上手くならないという負の状況があったかもしれません。でも、続けなきゃ上手くならないなら続ける理由を作ればいいんです。コルクBooksのつながりは継続の理由の一つになりえます。
ーーありがとうございました!これからの作品も楽しみにしています。
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以上、『マンガQ 第2号』に掲載されているマンガ『蛇女』の作者・しんぺーさんへのインタビューをお届けしました。
問いかけがあるマンガを描きたいと語ってくれたしんぺーさん。今後の作品も楽しみです!
しんぺーさんのコルクBooksアカウントはこちら。そしてTwitterアカウントはこちらです。
ぜひ、マンガQを手に取り、マンガ『蛇女』を読んでいただきたいです!そして、しんぺーさんのこれからのご活躍に注目ください!