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コミチ代表マンディさんの作品:コミチ×comico縦スクカラーエッセイ漫画コンテスト 結果発表!

コミチ×comico縦スクカラーエッセイ漫画コンテスト(第14回コミチ漫画賞)の総評を書かせていただきます、コミチ代表のマンディ(@daisakku)です。

今回は、コミチ漫画賞を、初めてのコラボ企画・comicoさんとの共同開催という形でやらせて頂きました。

「縦スクロールカラーエッセイ」というかなり難しい制約がある中、150を超えるエピソードが集まりました。本当にありがとうございます!!

今回も本当に激戦で、コミチで配信するならどういう作品が一番合うだろうかと本当に悩み、何度も読み返しました。

そして、ぜひ連載をさせていただきたい大賞1作品・入賞1作品の2作品と、惜しくも今回は選考に漏れてしまったのですが、ぜひご紹介したい激励賞4作品の合計6作品を選ばせていただきました。

詳細は、審査員のcomico編集長・武者正昭さん、しーげるさん、シャープさん、たらればさんによる寸評をお楽しみにください!



大賞

死のうとしていた私の話  みれ


武者正昭さん(@mushachanman

出だしの愛猫の死が切ないです。

押さえたシンプルな色遣いが、かえって痛々しさを増す。

回想形式で語られているから、今はきっと幸せになっているんだろうなという

予想で読むしかありません。ドキドキします。

いったん読み始めたら、目が離せない力作です。


シャープさん(@SHARP_JP

SNSを使うようになった私たちは、他人の人生を垣間見る瞬間が劇的に増えたと思う。SNSあるいはスマホがなかった頃は、偉人や有名人でもない人の生きる様子は、家族や友人知人を除けば、通りがかるとか居合わせるくらいしか、目撃できなかった。だがいまはSNSを通じて、それができる。意図的にしろ偶然にしろ、私たちはスマホを手に、他人の人生を垣間見ながら、自分の人生を生きている。

だから他人の人生を垣間見られるSNSで、自分の人生で起こった出来事を語る、いわゆるエッセイ漫画を描く人も読む人も増えたことは容易に想像できる。私もエッセイ漫画が好きだ。

当たり前だが、人生の出来事にはうれしいことも悲しいこともある。笑えることも泣けることも、楽しいことも辛いことも。だから泣き笑いとか、笑いながら怒るようなエッセイ漫画もあるだろう。

ここで大賞に選ばれた作品は、つらい話だ。家族(正確には婚約者だが、ほかに逃げ場がないという意味では、作者にとってまぎれもなく、その時点での家族だろう)から、暴力的な言動を受ける日々が描かれている。読み進めると、だんだん息が詰まる。読後に、他人の人生を垣間見たとサラリと言えない重い気持ちを残すのは、もちろん描かれるエピソードのしんどさに加えて、語り方、描き方の切実さもあるのだろう。そういう意味で、この作品は大賞にふさわしいと思う。

ところで、どんなにつらい話でも、それがエッセイ漫画として描かれているということは、作者がいまはその状況にないと暗に示しているはずで、読む側はそれが希望の拠り所になるはずだ。つらいことを語るには時間が必要なのだ。どうか作者さんが平穏な現在を送られていますように。 


たらればさん(@tarareba722

かわいい系のキャラクター造形ではありますが、なかなかハードな体験記です。お読みになる場合はメンタルのご準備を。また、2話で更新が止まっており、やや心配しつつ、大賞に推しました。すみません。

今回の応募作のなかで一番「続きが読みたい」と思った作品がこれでした。どんなにつらい経験があったとしても、いまはこうして作品にしていて、作者のなかではとりあえず一定の昇華はされているものだと信じています。なのでぜひ、3話以降の更新をお待ちしております。

さて作品の話です。自分はDVについて詳しいわけではありませんが、「家族」(今回は婚約者ですが)というものの恐ろしい面をこの2話でしっかり描いているなと感じました。

「結婚すると言って実家を出たのだから、もう帰れない」、この「逃げ場のなさ」こそが、暴力と被害の螺旋を加速させるのですよね。このままそばに居続けると、自分が死ぬか相手を殺すか、そういう隘路にまで突き進んでいくだろうと感じます。

生きているかぎり、「どこにも行き場がない」なんていう状況はあり得ないのですよね。しんどくてもそれだけは信じていることが、命綱になるんだと、そう思い出させてくれる作品でした。

大事なことなのでもう一度書いておきます。続き、読みたいです。


しーげるさん(@henshu_shigel

エッセイ漫画は実人生、実生活に基づいたものが多く、どの作品もが、その人にとって、辛いもの大変なものであれ、楽しいもの素敵なものであれ、人生の貴重な瞬間を切り取ったものだと思います。それを読むことで、他人の視点や経験を共有できるというのがエッセイの醍醐味なのかもしれません。だからこそエッセイは優劣ではなく、好きかどうか、必要かどうかでも読まれてほしい。そういう点で、今回の作品たちが賞をきっかけとして必要としている人たちに届くといいなと思います。

大賞作品。簡単に言葉にしては大変申し訳ないですが、この内容を漫画に描くのは、とてもしんどく、勇気や覚悟が必要だったことでしょう。それくらいDVの描写は生々しく、振るわれる暴力の数々は読んでいるだけでも辛いし、どの言葉もエピソードも実際に味わった人間にしか描けない過酷さを伴って描かれていると感じました。相手の顔を塗り潰していること、それでも時々目は描かれているのを見ると、まだまだ恐怖を感じられているのだろうと思います。

応募された作品の続きがブログに描かれているし、そのブログには他の作品も数多く載っているので、今現在はある程度の安全、安心を確保されていらっしゃるのだと思います。そのうえで、勝手な推測ではありますが、まだ救われていない誰か、救いに行ける誰かに届くことを願って描かれたのではないでしょうか。その作者の願いが伝わっていってほしいです。

人によっては、この内容は読むのがしんどい時もあるかもしれません。それでも、少しずつ小出しに、ライトで可愛い絵柄で描かれるエッセイ漫画のフォーマットを取っていることで、読み進めていくしんどさが和らげられているし、それもまた作者の力、漫画の力だと思いました。 




入賞

ワーママは朝がツライ 福々ちえ(ふくふくちえ)


武者正昭さん

子育てあるあるを克明に描いています。読んでいるうちに母親になった気分。

さらっとした絵柄も、意外にネタとマッチしています。

今日もお母さんは大変だ。冷静にエンタメとして読ませる技術に〇。


シャープさん

エッセイ漫画の主戦場のひとつに、子育て(の悲喜こもごも)というテーマがあると思います。入賞作もまさにそれ。子育てのエッセイ漫画は、子育て経験者が読めば共感に、未経験者が読めば勉強になることが強みだろう。朝のワーママにとって、園に子どもを預ける瞬間がエピソードのピークだと思いますが、その後の仕事に取り掛かる「逆に心が落ち着く」場面までが描かれ、その落差にはっとさせられました。 


たらればさん

わたしの母も、(当時そういう言葉はまだありませんでしたが)ワーママでした。自宅の鍵を首からぶら下げて、学童保育からの帰り道に、なぜ自分の家には(専業主婦家庭である友人たちの家のように)いつも母親がいないんだろうと考えていました。

どうすれば母の気を惹けるかと考えて、わざと幼く振る舞ったり、罪悪感に訴えかけるために昼間学校であったことなどを喋ってテープレコーダーに録音して母宛に玄関に置いておいたりしました。我ながら陰湿だなあ。

これは本作の作者である福々ちえさんだけでなく、全国の働く母の皆さんに、当時「寂しい思いをした子供」を代表してわたしから一言お伝えしておくと、「子育て」と同じくらい「(仕事や趣味といった)自分のこと」を大切にしていた母を、わたしはいま、すごく尊敬しています。そういう母だったからこそ、いま子供であった自分は、自分の趣味や仕事を大切にできているのだと感じています。

がんばれ。大人になったとき、幼い頃に見た親の働く後ろ姿が、子の「底力」にきっとなるでしょう。

入賞おめでとうございます。


しーげるさん

子供は常に想定外のことをやらかしてくれるし、大人の事情なんてものにには一切お構いなし。だから離れてほっとしたい時もある。「先生に押しつける!」や「仕事が癒しの時間になる」という描写に共感してしまう人は多いんじゃないでしょうか。

子供は一人一人みんなそれぞれ違うはずなのに、つい「あるある」と思ってしまうのは、それだけ子育てが大変だとみんなが思っていて、その気持ちを分かち合いたいということなんですよね、きっと。エッセイは経験と気持ちのシェアという側面もあるし、それゆえに子育てエッセイは人気なのだと思います。

ところで。スケッチブックを盛大に破り始めたり袋に詰めたりしている時のお子さんの描写。作者の方はその場ではうんざりしていたはずなのに、とても生き生きとした表情を描かれていて、ほっこりさせられました。 



奨励賞

「ニーチェ先輩の話」縦スク版(完結) 胡麻


武者正昭さん

とっても心温まる良い話。ニーチェ先輩の人柄に癒されます。

絵柄もホッとさせてくれます。静かな回想の中に一滴の悲哀も。

青春って、振り返ると切ない。

ニーチェ先輩はその中心で静かにたたずむ象徴なんですね。


シャープさん

私がエッセイ漫画を好きな理由に「余韻が感じられること」があるのですが、この作品を読まれた方はその意見に頷いてもらえるのでは。犬のヤマネさんが、先輩の人生と作品に余韻をもたらすことに、大きな役割を果たしている。 


たらればさん

これはどちらかというと「ヤマネ先輩の話」では?? という読後感を持ちつつ、ニーチェ先輩のこのほかのエピソードがあるんだと感じて、本作を推しました。ニーチェらしさをぜひ感じさせてください。次回作をお待ちしております。


しーげるさん

結婚式での大宮のおばちゃん、ラストのヤマネさん。年老いてからの両者の絵がとても美しい。「煮られ続けてカチカチになったこんにゃくを探した」エピソードといい、時間を経ることにポジティブな印象を感じて、ただの郷愁じゃないところが素敵だなと思いました。 



「料理」を楽しむにはどうすればいいの? にいろはるをみ


武者正昭さん

ある日、ひょんなことから料理に目覚めた私。

しゃにむに突き進む姿がほほえましい。

友人を巻き込みながら、料理名人になるのか?

それとも妥協するのか?他人事ながら目が離せない。

そんな魅力があります。


シャープさん

プロセスを描くのは漫画の得意分野だし、プロセスが興味深いのが料理の奥行きだと思います。この作品は料理へ挑戦をはじめるプロセスが描かれていて、月並みな言い方ですが、続きが楽しみになる。 


たらればさん

世にこれだけグルメマンガが溢れているというのに、その分野ど真ん中に突っ込んでいった作者の勇気を評価しました。続ければとりあえずレシピは貯まります。あまり凝らないタイプの料理マンガ、需要あります。ここに。


しーげるさん

経費にするため、漫画を面白くするため、料理を楽しむというきっかけが面白い。動機は不純なくらいでいいんですよね。また、全体にテンポがよく、カラーとモノクロのメリハリも効いていて、ヒキも良く、どんどん読みたくなりました。続きが楽しみです。 



ほんなら辞めたるわ!!第1話 上原 美聰(うぇだこ。)


武者正昭さん

職場あるある。問題のある同僚に振り回され、

理解のない上司になだめられ、きりきり舞いの美聡が不憫です。

でも、見守っていたくなるような明るい絵柄でもあります。

頑張れ美聡。


シャープさん

反射的にあの「うっせぇわ」の歌を思い出しました。私たちが日頃心の中で抱く「怒り」を代弁してくれるような、スカッと系エッセイ漫画でした。 


たらればさん

色使いが独特です。もう少しコマ割りを圧縮したほうがいいかも。構図とセリフを工夫すると、このシナリオを説明するのに半分くらいのコマ数でいけるはずです。そうすると、もっと盛り込める内容が増えるかと。


しーげるさん

かなりの怒りを感じる激しい描写。それに対して、1話目で描かれているネタは、まだ辞めるに至るほどのことではないように感じます。これからどんな事情が明らかにされるのか。作者さんにとっては大変なことだったはずですが、「何があったのか知りたい」と思ってしまうのが人間の性ですね。すみません。続きが読みたいです。 



赤ちゃんの言葉 ヤマモト喜怒  


武者正昭さん

赤ちゃんは無敵。話題の中心。一家の光。一喜一憂。

小ネタが畳みかけるように読み手に突き刺さります。

独特な絵柄も我が家の一大事「赤ちゃんの言動」にマッチしている。


シャープさん

こちらも子育てエッセイ。絵の圧がすごいし、ご家族の顔がみんないかつくて、それだけで笑いそうになった。 


たらればさん

ご自身も息子さんも、まったく可愛く描くつもりがないところに痺れました。ネタの面白さのみで勝負する気なんだろうなと。面白かったです。


しーげるさん

すごいテンションに、すごいビジュアル。ネタの1つ1つもそうですが、全力で家族の時間を楽しんでる雰囲気が伝わってきて幸せな気持ちになります。 



***



今回大賞のみれ先生、及び、入賞の福々ちえ先生にはぜひ公式連載をして頂き、コミチで全力プロデュースさせていただきたいと考えております。

両作品とも素晴らしい縦スクロールカラーエッセイで、どう編集&プロデュースすべきか本当に楽しみです。


そして、次回の第15回コミチ漫画賞も、おもしろい企画を考えております。

現在、企画の詳細を詰めているところですので、近日中にお知らせいたします。

お楽しみに!!


募集ページは近日公開予定なので、詳しくはぜひそちらでご確認ください。

奮ってのご参加お待ちしています!

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2021/3/5
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