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コミチ代表マンディさんの作品:第12回コミチ漫画賞結果発表!

第12回コミチ漫画賞の総評を書かせていただきます、コミチ代表のマンディ(@daisakku)です。


コミチ漫画賞は今回から大きくリニューアルし、大賞作品は公式連載権を獲得します。

漫画家さんとしては、公式連載という「チャンス」、

コミチにとっては、大賞作品を本気でプロデュースする「強い意思」、

だと思っています。

コミチ社員やガチコメ編集部など、メンバー一丸となって作品を売っていきたいと思ってますので、漫画家のみなさん今後ともよろしくお願いします!


そして、今回大賞&強化ジャンル賞を獲得したのは、SNSでも話題になった『コロナ収束したら付き合うふたり(うえはらけいた作)』です。

この作品はまさにwithコロナ時代にあった物語で、いま見るべき作品です。

たらればさんの寸評にもあるのですが、以前コミチで主催した『SNSアカウントNight』というイベントのレポマンガをご覧になればわかる通り、うえはらさんは本当に、「あるシーンを切り取る」能力が高い漫画家さんです。

みなさま、ぜひ一緒にうえはらさんを応援してください。


それでは、審査員のしーげるさん・シャープさん・たらればさんによるコミチ漫画賞の寸評です!



大賞&強化ジャンル賞

コロナ収束したら付き合うふたり(うえはらけいた)


シャープさん(@SHARP_JP

流行りといって差し支えないと思いますが、タイトルからもわかるとおり、何日後の未来に結末が決定している系の作品です。が、そう思いながら読みはじめても、幼馴染のふたりの歳月を最後まで追うのを止めることができませんでした。


物語は幼稚園の入園式から30年ほどの時間が描かれます。それを連続してぐんぐん読む私は神のような俯瞰する視点とともにあり、その一方で毎話提示されるパーソナルなエピソードをていねいに読もうとする私には、いつしか親戚のような親密な視点が備わっていた。そんな相反する視点を行ったり来たりしながら、マンガは圧巻の結びを迎えます。時に叙事詩と呼ばれるような長い小説の読後感を、こんなにかわいらしい漫画から得られるとは思いもしませんでした。


またこの作品は、ふたりが持つ携帯電話やスマホの細かい描写に顕著ですが、90年代から現在にいたるまでの日本の文化史のような側面もあります。たまごっち、ケータイ、コンビニ、ふたりの職業にいたるまで、出てくる小物や背景が、特にいま30代後半の人(それは主人公たちと同じ年齢だ)には、まるで自分史のように読めるはず。そしてもれなく泣くと思う。ほんとうに素敵な話、いや素敵な人生でした。



たらればさん(@tarareba722

SNSマッチョ達による夜会』で見事なレポートマンガを投稿してくれた、うえはらけいたさんの力作が大賞受賞でした。

 約120話というWeb連載の四コママンガとしては長編ですが、非常に魅力的な作品でした。今回のコミチ賞のテーマは「恋愛」だったのですが、応募作にはいろんな形の恋愛模様が投稿されるなかで、一番ストイックで一番「これを恋愛と呼んでいいのだろうか」と考えさせられる作品だったと思います。

 恋愛という感情は、「信頼」だとか「敬意」だとか「友情」といった領域と重なりながら隣り合っていて、そのどれでもあってどれでもない気持ちや関係性なのだと思います。そうした状況をとてもうまく表現した作品でした。

 個人的には、おさむくんが学生時代に付き合っていた後輩の女の子が、作品のアクセントとしてとても効いていて、好きなキャラクターでした。しあわせになっていてもらいたい。あと、つかさちゃんのお母さんも。

 一点、アフリカの太鼓とトランペットは、伏線があったとはいえ、もうちょい別の身近なものに置き換えたほうがよかったのでは…と思いました。


 なお今回は大賞受賞作のデキがかなり突出していましたが、

不思議なメガネと隣りのヤンキー』じゅんたさん

ふつうのひと』asaborakeさん

は、通常のコミチ賞であれば充分大賞にからむ実力のある作品だったと思います。続きが読みたいので、ぜひ投稿を続けていただければと。



しーげるさん(@henshu_shigel

幼なじみ2人が出会ってからの10,000日を描いていく物語。幼稚園時代を丹念に描き始めた出だしから、初めは「一体どういう話なのか?」と思ってしまいましたが、最後は全てが繋がって、2人が付き合うべくして付き合い始める圧巻の出来。


コロナ禍の現在で終わるようになっている、というか、現在から逆算して作ってるのだと思いますが、その時々の文化や流行り、感覚もしっかり再現されていて、よほど調べたのか記憶力や観察力がいいのか、作家としての力を感じます。これだけディテールをしっかり描写できるところ、それもかなり象徴的なものを選び抜いてるところなど、なかなか簡単にはできないことです。


それに、幼なじみ同士の2人がそれぞれの歩み方で、大事なものに気づいていく過程もしっかり描かれていて、人の人生の捉え方も素敵だなと思いました。2人の「手」の距離感にフォーカスした恋愛感情の描写にもぐっときます。最後の幼稚園前でのシーンはやばかったなあ。


素晴らしい観察眼、視点、まなざしを生かして、次はどんな作品を描かれるのか。新しい連載作品を心から楽しみにしています。



縦スク賞

なんで?(みさみ)


シャープさん

淡いマンガでした。恋愛がはじまりそうな空気感も、絵のタッチと色も。意図的なのかそうでないのか、男の子は好意を寄せてくる女の子に「なんで?」と問う。その「なんで?」のコマが、縦スクロールによって繰り返し現れるわけですが、その繰り返しがなんともいえない「はぐらかし」を感じさせてくれました。まさに縦スク賞だと思います。



たらればさん

 2020年9月のコミチ賞に『つまらないって罪なんです』みさみ著 を投稿していただき、大賞候補となりながら惜しくも無冠となった、みさみさんの短編です。おめでとうございます。

 縦スクロールを意識したコマ運用で、「間」の使い方とカラーの色合いが印象的な作品でした。何を考えてるのかわからない男子にやきもき…と思いきや、何を考えてるのかわからないのは女子だった、ということですよね。恋愛未満の関係をうまく描いているなあと思います。

 ちなみに「若宮くん」は、なぜ理由を聞きたがるのでしょうか。そこらへんが描かれると、さらに作品に深みが出るなと思いました。



しーげるさん

勇気を振り絞って声をかけた主人公の女の子。彼女の表情がとっても可愛い! 好きな人からの「なんで?」返しって地味にダメージでかいと思うのだけど、それにめげず頑張って会話を続ける様も健気でいい。彼の方もきっと好意はあって純粋に「なんでか」知りたいだけなんだろうけど。この二人の会話が噛み合う時まで、ずっとニヤニヤできそうと思える作品でした。色のチョイスも素敵なので、今後が楽しみです。



***



冒頭に述べた通り、今回よりコミチ漫画賞はリニューアルしました。

大賞受賞者にはコミチでの【公式連載】を行なっていただき、コミチで全力プロデュースします!


最後に、第13回コミチ漫画賞の強化ジャンルは、

SNS時代のマンガ登竜門をめざすコミチらしいジャンル「エッセイ」です。


くわしくは、第13回コミチ漫画賞募集ページをご確認ください。

応募しめきりは、2020年11月22日 日曜日です。


奮ってのご参加お待ちしています!


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2020/10/14
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