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シャープさんさんの作品:成人式は残酷な場所なのかもしれない。大人になる話。

あけましておめでとうございました、 @SHARP_JP です。本年もやんわりよろしくお願いします。お正月を過ぎ、次の季節の行事といえば成人式です。荒れる荒れると毎年言われ続け、もはやどれほど荒れるか期待すらされる、なんだか不憫な成人式。ちなみに私は、自分の成人式に出なかったはず。どうもそのあたりの記憶が定かでなく、式に出たもののあまりにしんどくて思い出を消した、という可能性も否定できないのですが。


それにしても選挙権が18歳になったのに、成人式はいまだ20歳の年、というのもチグハグな気もするのですが、当事者のみなさんはどうなんだろう。選挙という社会の仕組みに初めて参加しつつ、ゆるやかに大人の称号を獲得した方が、心の準備もできていいのでしょうか。どちらにしろ、ある境目から突然、大人としてカウントされるのも、唐突な話ではある。

ハタチオメ3(ちえむ 著)


そんな成人式のお話です。成人式で顔を合わすのは言わずもがな、いつかどこかで空間を共にした、同級生なわけですよね。しばらく会わなかった気恥ずかしさやら、驚くほど変貌を遂げた友人の眩しさやら、やっと解放されたクラスの序列に再会するやら、成人式はそれぞれにとって、悲喜こもごもの場所なのでしょう。


飲み会のビール瓶のように「さあ君たちは今から大人だ」とぐいぐい距離を詰めてくる成人式というセレモニーが、大人未満だったかつての人間関係や息苦しさをありありと再生してしまうというのも、なんだか残酷な気もします。その残酷さが大人の入り口だぞと言われても、それはそれで苦々しい。


この作品で成人式に着物を着てきた彼女も、成人式の会場前でかつての同級生がキラキラする様と自分を比べてしまう。そして少し、黒い気持ちになる。他人は他人、自分は自分、と割り切れるのが大人かもしれないけど、そんなこと、成人式の現場でいきなり獲得できるものでもない。第一、大人の私でもそんな割り切り、できたことなど一度もない。


だけどここで、着物の彼女は別の角度で大人に飛躍する。成人式の着物の準備をせっせと行う、母親のことを思い出すのだ。娘の成人式を喜ぶ母親の顔をスマホ越しに見て、彼女は自身の20年でなく、母親が母親として成人した20年に思いを馳せる。それはたとえ肉親だとしても、他者の過去を思いやる行為だ。


同級生と比べて落ちこもうが、キラキラした場所から逃げ出したくなろうが、他者の時間を想像できる彼女は、もう立派な大人だと思う。そして自分のことはいったん保留してでも、母親の20年間を「ハタチオメ」と祝福できた彼女は、まさにその瞬間、成人を迎えたのではないか。


一方自分を振り返れば、ハタチどころか現在進行形で、大人としての心構えが整っているとはとうてい言えず、うつむくばかりだ。いつも他人と比べてしまうし。キラキラした場所苦手だし。だけど私だってかろうじて大人だから、着物の彼女のように、他者の時間を想像し、他者を祝福することくらいはできる。


新成人のみなさん、おめでとう。ようこそ、こちら側へ。

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