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シャープさんさんの作品:クリスマスの贈り物

クリスマスですね、@SHARP_JPです。ここを読む大半の人は、サンタクロースからプレゼントなんて、はるか昔のご無沙汰だと思う。中には姿や中身を変えたサンタクロースから、現在進行形で高価なプレゼントをもらうきらびやかな人はいるかもしれないけど。


ドイツではサンタクロースが悪い子を戒めるなまはげのような意味合いを持つらしいと最近知って、おもしろいなと思ったのだけど、そういう多少の違いはあれ、世界中でサンタクロースは子どもにプレゼントをあげている。私も子ども時代の限られた期間、12月の朝に目を覚ますと、プレゼントが枕元にそっと置かれていた。もちろんそれは遠い過去のことで、だからいまでも時々、あの体験はなんだったのだろうと、記憶を反芻しながら考えることがある。サンタクロースは親が代行していたと知る前の体験のことだ。


サンタクロースのプレゼントとはなんだったのかと考えることすら何度も繰り返すほど、私はずいぶんと大人になってしまったから、いまでは私の心の中に、少し確信めいた手触りのようなものがある。冬の朝に目が覚めるとプレゼントが置かれているという体験は、よくわからない他人から贈与を受けることがあると知ることなのだ。


親でも友だちでもない人から贈り物をもらう。どこにいるかも知らないし、会ったことすらない人からモノを贈られる。しかもそれは、自分が欲しいと思っていたモノだったりするのだ。人間は生きる上で他者から突然、贈与を受けることがある。しかもなんら見返りを要求されることなく。クリスマスは、人生にはそういうことがあると前もって知るリハーサルなのかもしれない。


振り返ると、サンタクロースのプレゼントは人間の幸福には交換とは別のかたちがあると知るきっかけだったのだ。等価を原則としたモノのやりとり、見返りを要求する行為、損得や勝ち負けとして示される因果関係など、交換が導く「取引の当たり前」とは異なる現象が、世の中にはあると信じられるようになった。


つまりは金では買えない「贈与」という幸福が、たとえささやかながらも人生に存在する予感を、私たちはサンタクロースのプレゼントを通して覚えるのだろう。だからこそサンタクロースはいまでも、世界中でせっせとプレゼントを配らざるをえないのだ。昔も今もサンタクロースの仕事は激務だけど、やりがいのあるだいじな仕事だと思う。



サラリーマンと屋上(かっぱ子 著)



仕事にまみれて忙しい大人は、すぐ贈与のことを忘れてしまう。徹頭徹尾、貨幣と交換に貫かれたわれわれの仕事は、このマンガのように、容易にサラリーマンを屋上に立たせてしまうのかもしれない。


だけど決して人生はそれだけではないことは、マンガをクスクス読んだ人が理解する通りだ。私たちは大人になっても贈与されることがある。そしてその贈与はかつてあなたがした贈与だったかもしれないのだ。そう思えるだけでも、気持ちは少し暖かくなる。


今年もまたたいへんな年でした。みんながみんな、それぞれがんばったのではないでしょうか。だからせめてきょうは、大人も子どももメリークリスマス。



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2021/12/23 コミチ オリジナル
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