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シャープさんさんの作品:密

今年の漢字は「密」でした、@SHARP_JPです。私は「禍」と予想していたけど。思えば「密」は密教の密だし、清水の舞台でお坊さんが密の字を大きく墨書する様子を見ていたら、これは選ばれるべくして選ばれた字なのだと深く納得した。 


そもそも三密だって仏教用語だ。生命の現象は、身密(身体)・口密(言葉)・意密(心)の3つの不思議によって成り立っているが、それは仏さまも同じなのだから、われわれ人間は仏さまと合致するようにがんばれ、という考え方だった(はず)。そう考えるとますます、今年の漢字に奥行きが感じられてくる。


それにしてもたいへんな一年だった。さんざんな一年だった。しかもそのたいへんを、どうやら今年でリセットできる見通しは立たなさそうで、さんざんは現在進行形のさんざんへと変質しようとしている。じわじわ忍び寄る災厄というものが、これほど人を息詰まらせるとは、ぼんやりした私は想像だにしなかった。


先日ちょっとした機会があって、高名なお坊さんの護摩行を見ることができたのだが、お坊さん御一行がマスク姿で現れ、そして燃え盛る火を前にマスク姿で祈祷されるのを目にした時、私は心の底から「いま直面している災厄は平等にわれわれの前に降りかかっている」ことを実感した。


だれひとりとして例外なく、それも世界中で例外なく、無関係にいられない災い。だれひとり例外なくを、おそらく仏教では衆生と呼ぶのだろうけど、どんなに高名なお坊さんからのんきを顔に書いたような私まで、衆生が等しく危機にさらされ、各自が行動を問われている。そして災いに転じてしまった人を、高い職業意識と思いやりで、いまも身を粉にして対処する人がいる。私は息を詰め、ただ頭を下げるばかりだ。


今年の漢字ははらいやはねが多いせいか、筆が止まった先々でぽたぽた墨が垂れている。その様子を目にしたら、あらためて私たちがおかれた現実を考えてしまった。密の字が、また私に迫ってくる。


居酒屋zoo1ページ漫画(丸山ミユ 著)


動物園の動物たちが夜な夜な集う居酒屋があれば、動物たちも年の暮れには一年を振り返り、その年の漢字を話題にガヤガヤするのだろう。だけど、動物園の動物たちが夜な夜な集う居酒屋があっても、今年は動物たちも集まることができず、みんなでガヤガヤすることは叶わないだろう。


来年の暮れにはどうか、動物も人間もガヤガヤできる世界になっていてほしい。私は無力だから、そう願うことしかできない。だけど平等に降りかかる災厄は、平等にわれわれひとりひとりができることを与えているようにも思うのだ。私はできることをできるだけやりながら、平癒を祈りたい。 

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