ラリー元
緊張の先輩
シャープさんさんの作品:怒られることを積極的に求める人なんていない。暴力をはらむ叱り方。

怒られることを積極的に求める人なんていない。暴力をはらむ叱り方。

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あくせく働く @SHARP_JP です。みなさんはいつも、どんな心持ちで働いていますか。ちなみに私は褒められると伸びるタイプですし、だいたいいつも褒めてほしい。


褒められると伸びるタイプとはよく聞く言葉ですが、よほどのことがない限り、怒られることを積極的に求める人間なんていないわけで、これほど「私は褒められると伸びるタイプです」と表明する人を見かけるということは、それだけ会社や社会が褒めない場所だという裏返しかもしれなくて、そう考えると暗澹たる気持ちになったりする。


一方でだれかを伸ばす責務を負う人は、自分が褒めるタイプか叱るタイプか表明すること自体、指導の手の内を明かすようで難しいことかと思います。私は指導する立場の経験がほとんどないので、あくまで憶測だけど。


ただ管理や指導というお題目が掲げられる世界において、叱るという行為には、叱る・叱られる時間や関係が無限に続くようなケースがあって、それを目撃するたび、いくらなんでもと思う時がある。


たとえば野球でもサッカーでも、部活の監督が試合に負けた生徒に向かって「なぜ負けたのか」と問いただす場面。おそらく生徒は「練習不足でした」と答える。すると監督は「なぜ練習が不足したのか」さらに問う。「気の緩みが」「なぜ緩むのか」「真剣さが足らず」「なぜそう思う」という風に、終わりが見えない。そしてたいていは根性論な禅問答に突き進む。


問い詰めるという行為は、叱責から永遠に抜け出させない構造を持ち、時に私はそれをとても悪意に満ちたものに感じる。問いの答えにさらに問いを重ねるタイプの指導は、監督を上司に、選手を部下に置き換えた場合、その生々しさがいっそう現実味を帯びる人も多いのではないだろうか。


だから自戒を込めて思うのですが、問い詰めるという行為はそれ自体に暴力をはらむものだから、くれぐれも自覚しなければいけないし、そんなことならお互い、褒めたり褒められたりする方がずっといいよね。



緊張の先輩(しんぺー 著)




このマンガの主人公も叱られています。叱る人は威勢のいい先輩で、バイト中は厳しい監視のもと、接客業のさまざまな配慮に指導が入る。挙げ句の果てには、先輩が引退後もバイトを続けるように約束させられた。


主人公は先輩がいなくなった職場でがんばり続けて2年。厳しかった先輩がふいにお店を訪れる。そこで先輩は後輩の働きぶりを見て、立派に先輩となった後輩を、ようやく「見違えた」と褒めてくれるのだ。


その後のコマ。ふるえるほどの感情を過去の自分へ伝えようとするような、内向きの喜び。喜びを発散するのでなく、噛みしめるような表情。人がほんとうに褒められたと実感した時、喜びは外に爆発しないのかもしれない。それがよく表されたラストカットだ。


思い返せばこの厳しい先輩は、決して主人公を問い詰めなかった。その場の適切なふるまいを、怖いけど細やかに教えていただけだ。なにより先輩の視線はいつも、結果ではなく、後輩の考え方と過程を見ていた。先輩の叱りには、まなざしがあったのだ。その事実を彼は一気に体感できたからこそ、褒められた喜びは過去の自分を回収するかのように、じんじんと内側に響いたのだろう。


ささやかでも、がんばった時間を遡るような褒めがあれば、それを糧にまた未来をがんばれることを、私たちは知っている。そして未来をがんばれるという確信こそが、褒められて伸びた自分の伸び代なのだと、年中褒められたい私は思うのです。


そんなことに思いを巡らせる作品を描いたしんぺーさん、あなたはすごい。また次の作品を楽しみにしています。

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ラリー元
1件の編集コメント
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いつも寸評ありがとうございます!
僕も褒められると伸びるタイプですし、いつも褒められたいです笑
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