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シャープさんさんの作品:見えない部分

自社製マスク(B級品)をつけています、 @SHARP_JP です。マスクを着ける日常が、2年を超えている。たまにいつからだっけと思い出してびっくりする。マスクをつけた春夏秋冬が、もう2回巡ったのだ。それだけ続けば、さすがにマスクをつけたわれわれの生活は、すでに新しい日常だろう。

 

私はしなくて済むならはやくやめたいと思う側だけど、もはやマスクがないと落ち着かぬと言う人もいる。マスクが感染る/感染すという心配を減じてくれるのはもちろんだけど、顔を半分覆うマスクで合法的に匿名性をまとうことができるようになった生活こそ、落ち着きを感じる人もいるのだろう。有名人でも公人でもないのにだれもがすぐに撮られる時代をうっすら緊張しながら生きる私たちにとって、マスクは朗報だったのかもしれない。

 

マスク姿しか知らない人も増えてきた。ただでさえ顔や名前をなかなか覚えられない私は、そのぼんやりさをマスクのせいで加速させている。あなたと私の間にもう匿名性は必要ないでしょうという時でさえ、私は失礼な匿名性を発揮してしまう。ようやく名前とマスク付きの顔が一致したころ、マスクなしで対面して振り出しに戻ることさえあるから、ここで謝りたい。目は口といっしょに見てはじめて、口ほどにモノを言うのではないか。

 

それにしても人は、見えない部分をいかに勝手に想像するか、マスクによって思い知らされたのだ。マスクの下が思っていたとおりだった人など、私はついぞ会ったことがない。それはかんたんに言えば、われわれは見えない部分を見たい方へ補正する、ということなのだと思うけど、それ以上は自分にブーメランとなるからやめておく。ただでさえ私は、Zoomがあるからシャツだけ着替えておくかと思う横着な人間だ。下半分が半パンな者に、マスクの下半分を語る資格はない。

 

 

職務質問(油沼 著)

 

 

マスクにサングラスに帽子をかぶった人を見かけようものなら、以前はテレビに映る人か逃亡を続ける人かと憶測したけど、いまはなんとも思わない。みんながマスクを着けることで、匿名性を過剰に追求する仕草の見え方も変わってしまった。不審者のムーブが変化したのなら、おもわりさんの職質もいまはまた、別のサインを検知しているのだろうか。

 

このマンガもどうやら実話に基づいたものだそうだから、職質の現場も難しくなっているのだろう。とはいえ、かつて決定的に不審と判断していた点がすべて、コロナによって理由のある行動に反転してしまったわけで、あらためてわたしたちは今、たいへんな時間に生きているのだと思う。

 

そしてなにより、そんな行動を従来の仕事に加えなくてはならなくなった人に、ご苦労さまですと言いたくなるマンガだった。ほんとうにご苦労さまです。私たちの社会の見えない部分には、多くの人の努力と労力があるのだ。私もまだまだ、マスクをつけて生活します。

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2022/8/25 コミチ オリジナル
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