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シャープさんさんの作品:部屋と頭の混沌

ひと文字目を書き出す瞬間、このコラムの掲載がクリスマスイブだと気づきました。@SHARP_JPです。それがどうしたと言わんばかりに、煌びやかなイルミネーションとは無縁の内容でお送りしようと思う。そういえば今年は、ツイッターでもクリスマスの呪詛をあまり見かけない気がする。だれもが等しく困難だった年だから、クリスマスどころではない、というのが2020年のリアルだろうか。


そんな年だから、忘年会を見送るようにクリスマスを見送る、というのも妥当な判断だと思う。しかし安易になかったことにできないのが掃除だ。大掃除だ。例年なら見て見ぬフリもできたかもしれない。だが人生における家のウェイトが増した今年は、そうもいかないだろう。みなさん、大掃除と家電のメンテナンスからは目を逸らさない方がいいよ。


といいつつ、私だって重い腰を上げたわけではない。大掃除の懸案事項は種々ある。中でも、断捨離方面は手付かずの問題だ。


どちらかというと、私はモノが多い方である。いや、多い方という言い方ではぬるい。私の居住域には、本が縦に横にうず高く積まれ、何枚あるかわからないレコードは遺跡のごとく壁と化している。いまとなってはよくわからないガジェットも、なぜ残しているのか説明ができない紙やおもちゃの類もたくさんある。汚部屋とはいかないまでも、モノによって生み出される混沌が、たしかに私の部屋には存在する。


いつか整理し、捨てなければいけない。そんなことはわかっている。だが私は、自分の部屋が混沌を湛えていることに安らぎを覚えるのもまた事実なのだ。たとえば頭の中で無秩序に点在する記憶と記憶がとつぜん結びつき、アイデアにメガ進化する瞬間。たとえばかつて何度読んでも意味がわからなかった文章が、時間と思索の迂回を経て、ある日するする読めるようになっていた経験。


そのような私の中で起こる出会いの快楽が、私は私の外でも起こるのではないかと期待しているのだ。部屋の混沌の海である日、モノとモノが、あるいはモノと私の記憶が、偶然の出会いと必然の運命を生むかもしれない。それを待つ気持ちがある限り、私の部屋は片付かないのだろう。


掃除とメンタルの関係は深いと思った話(小柳かおり 著)


だがおそらく、そんな時は訪れることはない。頭の中と部屋の散らかりは別物なのだ。物理的な混沌は、ただの混乱でしかない。それはこのマンガを読む通りだ。


さらに言えば、部屋にあふれるモノは、混沌という現象を招くだけではない。なにかと理由をつけて買い、理由をつけてとっておくモノは、その時々の自分の言い訳なのだ。モノにあふれた部屋はつまり言い訳の集積でもある。もはやそこにあるのは後悔か、後ろ向きの自己憐憫だけだろう。


だからこのマンガで作者が思い切ってモノを整理したのは、自分への言い訳をきれいさっぱり捨てることでもあったのだ。家具で塞いでいたカーテンが風にそよいだ瞬間は、自分の風通しもよくなった瞬間だった。部屋と心に清々しさが訪れる。そして、その清々しさをマンガから感じた私とそこのあなた。やるなら今だ。重い腰を上げるなら今だ。あまりに混沌とした年の終わり、せめて部屋には秩序をもたらそう。


それからもうひとつ。エアコンを掃除したら部屋が具体的に清々しくなりますよ。こちらもお忘れなく。 

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