31016 3 3 false AKr0aAnDteXYr8O2KgVoVcLuJSpr3p3U 647d2dce1c467e20ef2f92ea03683b97 0 0
コミチ代表マンディさんの作品:第13回コミチ漫画賞結果発表!

第13回コミチ漫画賞の総評を書かせていただきます、コミチ代表のマンディ(@daisakku)です。


前回(第12回コミチ漫画賞)より、大賞作品は公式連載権を獲得することになりました!

前回大賞を受賞したうえはらけいた先生とは何度も連載会議を重ねておりまして、来春には配信開始出来るのではないかと思います。


今回もどのような漫画家さんのプロデュースが出来るのがすごくワクワクしながら審査させて頂きました。

そして、審査員の皆様も口を揃えて仰っていますが、今回良作があまりにも多く選考が本当に難航してしまいました。


「漫画家さんの創造力って本当に素晴らしい!!ワクワクする!!」


何度もそう思いながら、読ませて頂きました。

そんな中、ぜひコミチで連載をして頂きたいと思う大賞&準大賞の2作品、及び、ぜひ沢山の読者に読んでもらいたい2作品を入賞として、計4作品を選ばせて頂きました。


詳細は、審査員のしーげるさん・シャープさん・たらればさんによる寸評をお楽しみにください!



大賞

HOFAH平成(元ヤン×未亡人の百合) 青9HP


シャープさん(@SHARP_JP

最初に断った方がいいと思うので言いますが、今回の大賞選考は良作がありすぎて、結果票が割れ、2度の決戦投票をしなければいけませんでした。そして私は実のところ、こちらの大賞作に票を入れていません。私以外のお二人が最終選考で1位に選ばれています。で、なんで私はピンと来なかったのだろうと思いながら再読したのですが、理由がわかりました。私の読み込みが浅かったのです。 


3度目に読み通すころには物語に夢中。読めば読むほど、その構成に驚きます。そして読めば読むほど、ハードな(人生を生き抜く人の)ストーリー。そこにマイノリティや裏社会といった視点が、重い棒で私の脳をゴンゴン殴るように繰り広げられます。 


たぶん他にも、私が受け止めきれていない仕掛けがあるはず。タイトルの意味も気になるし。みなさんも読み込んで、その奥行きをご堪能することをおすすめします。そして私は読後、なぜか映画「シド・アンド・ナンシー」を思い出すようになりました。それを確かめるには、シド・アンド・ナンシーも見返さなければいけない。



たらればさん(@tarareba722

「コミチ賞」は毎回3名の合計点数で「大賞」が決まるんですが、わたくしが推す作品が選ばれるケースが少なくて、いつも「ぐぬぬ…」と空を仰いでいたのですが、今回は!! 今回は最初からわたくしの一押し作品が選出されました!!! おめでとうございます!!! なぜかわたくしも嬉しいです!!

 かなり独特のタッチ(アメコミ風?)と各コマの構図、人物描写、ストーリー、そしてコマ間の使い方など、秀作ぞろいの今回の中でも白眉でありました。

 特に、縦スクロールマンガって構図が単調になりがちなんですが、本作ではしっかりと計算されていてスピード感があったのと、なにより最後のカット、最高!! めっちゃくちゃカッコよかったです!!

(一点だけ、タイトルの「HOFAH平成」がどういう意味なのかわからず、一読者としてはそこが残念でした)



しーげるさん(@henshu_shigel

次々に訪れる想定外の出来事。何が起きても淡々と受け入れてるように見えるユウママさんと、そんな彼女に惹かれたために、とことん彼女の大変な道行きに付き添い続ける主人公。エピソードは暗く重いのに、どこか飄々として明るいキャラクター描写に、独特な色彩で描かれた世界観からはポップな感じすら受け、次々にページをめくってしまった。 


それにしても、なんだろうこのテンポ感は。驚くほどテンポが早くて、それでいて破綻しないところに、抜きん出た個性を感じる。従来の漫画のテンポではなく、音楽、それもリズムミュージックのようなテンポで作ってる感覚。作者の方はどのようなものを摂取して育ってきたのだろうか。 


今回の大賞候補作はどれも素晴らしいものばかりで本当に悩んだけれど、この作品が最も、「なんでこれを描けたのか」想像がつかなかった。この作品の他に、一体どんなものを描くのだろうか。その興味を最も惹かれたので大賞に推しました。 



準大賞

文子と早春の煙 第4話 旅への誘ひ 石河カド


シャープさん

純文学というパブリックイメージをマンガで表現する、あるいは私小説の持つ世界観をマンガ化する、それに成功したマンガなのだと思います。小説のマンガ化とかマンガのノベライズとは別のかたちで、個々の作品としての小説ではない、ある小説ジャンルが持つ「感じ」をマンガにできるということは、すなわち漫画表現の懐の広さを表しているのではないか、と思った次第です。 



たらればさん

一気に最新16話まで拝読しました。衒学趣味全開のストーリーとキュートな絵柄にものすごい期待を抱いております。ぜひ完結まで読みたいので、そのぶん今回は評価を抑えました。文芸サークルのダメなところが全部入っていて、悶絶しながら続きをお待ちしております。



しーげるさん

文学に励む学生を題材に、まるで私小説のように切々と心情を描いていく作品。主要人物三人の三角関係がはらむ危うい関係性と繊細な言葉のやりとりに、読んでいてひりひりさせられた。この三人の関係の結末がどう描かれるか、最後まで見守りたい。 


ところで原稿は何でどうやって描いてるのでしょうか? デジタルで投稿されていながらも、アナログの風合いを多分に感じる原稿。それが作品の、少しノスタルジーを感じる世界観とも絶妙にマッチしていた。



縦スク賞

01はじめての登園 ineedyou31219


シャープさん

何度も言っているような気がするのですが、スマホで下へ下へと一コマずつ読んでいく縦スクは、時間を辿ったり遡ったりという、時系列表現と親和性が高いと思っていて、この作品は幼稚園へあがる前の親子ふたりっきりの幸せで濃い時間の回想が、スクロールごとに積み重なっていくように感じられ、泣きそうになる。というか泣いてる。 



たらればさん

「03」まで含めて、ずっとニコニコしながら拝読いたしました。温かいタッチと色づかいが内容とよく合っています。さすが本職のイラストレーター。縦スクロールにも合っている構成で、まさに縦スク賞にふさわしい作品でした。おめでとうございます!

 一点気になったのは、ineedyou31219さんの作品は(「感動」を描こうとしているのはよくわかるのですが、そのわりには)感情の描写がストレートすぎるところです。「感動」という言葉は「【感】情が【動】く」ということです。不安に覆われていた気分が晴れたり、苦しく悲しい気持ちが達成感や喜びに転じたりしたとき、人の感情は動きます。その動いた幅が大きければ大きいほど、「感動」という心境を強く感じます。「起承転結」でいうと、「起転結」でまとめているように感じます。もう一歩丁寧に「承」を描くと、作品にもっと奥行きが生まれるかと思います。



しーげるさん

クレヨンで描いたような描き文字が、作品にマッチしていてとても可愛い。また、全体の絵のタッチも柔らかく、お子さんの絵もぷくぷくしていて、幸せそうな感じにあふれている。作品全体が愛情表現になっているかのようで、とても温かい気持ちになりました。 



強化ジャンル賞

先生を漫画に描いたらバズったので謝りに行った話 さく兵衛


シャープさん

私はエッセイというものが大好きで、おそらく昨今のSNSで爆発的に数が増えたエッセイマンガの恩恵に与る人間です。ですから、この作品が私はこよなく好きです。どう好きかをうまく言えない感覚とパーソナルな出来事を覗き見する感覚が両立するのがエッセイマンガのいいところだと私は思うのですが、それはつまり「この人いい人だなあ」と他者を好きになる感覚と似ている。だから私はいま、この作者と友だちになりたい。とはいえ、手土産を選ぶシーンからマンガがはじまる点など、ただ自分の出来事をつらつら語るのではなく、ちゃんと読ませる構成がなされているので、それもまたいいと思うのです。 



たらればさん

 さまざまな感想が入り乱れておりますが、「この教授、研究室を訪ねてきてくれて嬉しかっただろうなあ…」というのが一番大きいです。もう少し批評っぽく書くなら、教授の描写、特に数コマだけ「眼」を描き込んだ描写がすばらしい。

 大学教授には「研究者」という側面と「教育者」という側面があって、その(かなり隔たりがあり、時に相反する)職務のバランスをとっているわけですが、今回はその「教育者」としての面が強く出ていて、なんだかほっこりしました。

 ぜひこれを機会に、哲学にまつわる本を読んで、またこのテーマで描いてほしいなと思います。



しーげるさん

今回は強化ジャンルであるエッセイ作品が多く、しかも素晴らしい作品ばかりだった。個人的な感想ではあるけれど、エッセイというものに賞をつけるのは難しい。他のジャンルよりもフィクション度が低く、実生活と近いものが多いため、漫画そのものよりも、作者の人生に優劣を決める気分になってしまうからだ。そして、もちろんだが人生の優劣など決めようがない。 


そんな中で、この作品は、「先生に謝りに行く」という非日常的な出来事を扱っていて、かつ、「先生に謝りに行くと一体どうなるのか」最後まで惹かれるものがあった。そこでの先生との会話や先生の状況から、お互いが会うべくしてこのタイミングで会ったのではという運命のようなものを感じて、淡々とした描写ながら大きな物語性をも感じさせられた。また、なぜか青一色の原稿なのだけれども、それを生かした後半の見事な場面にも心を動かされた。 


賞には選ばれなかったけれど、「会社の電話恐怖症だった私が、電話で感謝されるまでの話」、「30代から始めるこの世のあらゆるすべて」、もぜひ読んでみてほしいし、読まれてほしい。 



***



今回大賞の青9HP先生、及び、準大賞の石河カド先生にはぜひ公式連載をして頂き、コミチで全力プロデュースさせて頂きたいと考えております。

両作品とも素晴らしいストーリーと画力で、本当に楽しみです!


そして、次回の第14回コミチ漫画賞は、超・スーパー・スペシャル企画となります!

現在、企画の詳細を詰めているところですので、近日中にお知らせ致します。

お楽しみに!!


事前にテーマと締切だけお伝えしておきます。

テーマ:縦スクカラーエッセイ漫画(15コマ以上)

応募締め切り:2021年2月7日(日曜日)

です。


募集ページは近日公開予定なので、詳しくはぜひそちらでご確認ください。

奮ってのご参加お待ちしています!


面白かったら応援!

2020/12/16
作品が気に入ったら
もっと作品を描いてもらえるよう作者を応援しよう!