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東西サキさんの作品:【2020年12月】"漫画ソムリエ"東西サキ先生のピックアップ新連載

皆さんこんにちは、漫画ソムリエの東西サキ(@tozai69)です。

普段は、東京ネームタンクでマンガの【持ち込み先・進路相談】をしたり、マンガの技術や情報を交換し合うマンガ技術研究会というところで活動したりしています。


そのマンガ技術研究会の活動のひとつとして、時代感に追いつくために「常に最新の新連載をチェックする」というものがあります。


このコラムでは、毎月さまざまな雑誌やサイトで始まる何十作もの新連載の中から、特に皆さんに注目していただきたい作品をご紹介します。

「この作品がなぜ今始まったのか?」「どういったところがその作品の魅力なのか?」という視点から新連載を解説していきたいと思いますので、ぜひそれぞれの作品をチェックしてみてくださいね。



ハム子とガオくん / 桃白茉乃

連載開始:別冊マーガレット 2020年12月号


コワモテ男子と小動物系のヒロインはどちらもピュアで、応援したくなるキャラクター2人の恋愛を見守るラブコメという現代的な作品。少年誌、青年誌ではこういった『見守る系ラブコメ』は最近人気がありますが、少女誌ではまだ珍しい印象です。

ラブコメにおいても読者はストレスを感じたくないという今の時代性を反映しているのではと感じたのでピックアップしました!



シャドークロス / スガワラエスコ

連載開始:ヤングジャンプ2020年11月26日号


情報の伝え方が上手いです! 

冒頭ですぐに主人公の驚いた表情を入れて読者の好奇心を刺激し、次に彼女が何者で何を欲しているのか、という興味を引っ張りながら即ペアの青年を登場させる。次から次へと興味の対象を移しながら見せたい画を大きく取ることで、冒頭では段取りっぽいセリフを極力排し、「この作品は何を期待して読めばいい作品なのか」を読者に印象づけていく技術がスゴイです! 

展開がかなり速い作品なんですが、印象づけたい場面を大きく取り、伝えたい感情を丁寧に描いているので、速いと感じさせないのが上手いな~と思いました!



バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ / 原案:板垣恵介 原作:猪原賽 作画:陸井栄史

連載開始:月刊少年チャンピオン 2020年12月号


本作品は『刃牙』シリーズの人気キャラクターである「列海王」を主人公としたスピンオフ作品です。

作画を担当されている先生が『刃牙』シリーズの打ち合わせの様子をレポ漫画にし、ネタとして異世界転生ものに仕立て上げた1コマを描いて『月刊チャンピオン』に掲載されたところ、雑誌発売後にその1コマがバズり連載となった作品だそうです。

「宇宙開闢より138億年」というモノローグからスタートする異世界転生は、スケールの大きさからして板垣先生的でありユニークです。

本作品は「板垣先生が異世界転生を描いたらどうなるのか」というリアリティにこだわっているので、同じような人気作品のスピンオフとは趣が異なります。たとえば、現地人が浴びると皮膚が溶ける血を舐めておきながら「麻辣味!」で済ませて主人公の無双を期待させる演出や、モブキャラの顔が『刃牙』シリーズ本篇に登場する観客の顔になっているなど、『刃牙』シリーズのスピンオフであるという点を存分に生かしています。また、1話をあえて週刊連載っぽいページ構成にしていて、サブリミナル的に『刃牙』シリーズを読んでいる気分にさせてくれます。

主人公がエキセントリックなキャラクターなので、目線キャラクターとして常識人を据えるのもなるほど~と思いました。



フールナイト / 安田佳澄

連載開始:ビッグコミックスペリオール 2020年23号


SFやファンタジー作品は、いかに読者にその設定や世界観への興味を持たせ共感させるのかが肝です。

ただ本作は、植物が枯れ酸素も薄くなった世界で人間は人を植物に変える技術を開発し、わずかな酸素を作り出して生き延びている……というかなり突飛な設定。そこに、現代日本を反映したような貧困に苦しむ青年を主人公とすることで、「こんな未来もあり得るかも……」と考えさせる演出が見事な作品です。随所に入る作品を象徴するような絵もグッときました!



赤ずきんに狼男は懐かない / ナツミ

連載:【電子版】花とゆめ 23号(2020年)Kindle版


ヒロインが、森で出会った狼男の青年を人間社会で生きられるように訓練していくという物語です。

クールなヒロインが人間のルールがわからない青年のボケにツッコミをいれていく形式になっていて、ラブコメディというよりギャグ漫画寄り。ファンタジーやヒロインが活躍する設定の作品が多い『花とゆめ』でも異色だと感じました。

狼男のヒーローは、ギャップ萌えの先駆けとも言える『伊賀野カバ丸』をなんとなく彷彿とさせます。『伊賀野カバ丸』は、颯爽としたスマートなヒーロー像が当たり前だった時代に、焼きそば片手に登場するなどの独特なキャラクターで甘く切ない恋物語を夢見る少女たちに衝撃を与えましたが、本作は「エキセントリックなヒーローをしつける強いヒロイン」という部分に時代性を感じました!



気になる新連載はあったでしょうか?どれも今後の展開が楽しみな連載ばかりですので、ぜひチェックしてみてくださいね!

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2020/12/8 #コラム
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