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シャープさんさんの作品:背中を押したい

ブラックなんとかやサイバーなんとかとか、セールがにぎやかな時期になりました。@SHARP_JPです。みんな、なにかを買う。不況だデフレだコロナだと言ったって、背に腹は変えられないから、なにかを買う。


なにかを買うには理由がいる。ないと困るから。便利になるから。たのしそうだから。あの人が喜ぶから。自分を変えられそうだから。なにかを買う人はまず、それを買う理由によって、買う必要に迫られる必要があるのかも。


なにかを買うと決めると、次は選ばなければいけない。いちばん安いモノ。いちばんカッコいいモノ。安くはないけど機能がいいモノ。好きな企業のモノ。よく売れているモノ。みんなが知っていたり、だれも知らなかったりするモノ。


なにかを買う人はいそがしい。買うと決めたはいいものの、あっちとこっちを比べたり、昔と今を比べたり、周囲の人と比べたり。無数にある選択肢の中から、ひとつを選ばなければいけないから。選ぶには決め手がいるはずで、アレではなくコレと決断を迫られるあなたは、どこか背中を押されるのを待つような気持ちにならないだろうか。


その背中を押す仕事が、私なのだ。会社のアカウントには最後に背中を押してほしいと、数々のリプライが寄せられる。エゴサをすれば、押されるのを待つ背中がたくさん見えてくる。ひとり暮らしの冷蔵庫、候補を前に立ち尽くす背中。割れたスマホを握りしめ、現行モデルと次のモデルの間で決めかねる背中。壊れた洗濯機にあわてふためき、予算額を境にグレードをいったりきたりする背中。


そんな背中を見かけるたび、私はそっとリプライをする。できるだけやさしく、かつ冷静に、こっちだよとささやくのが私の仕事だ。しかし私の仕事にも、強力なライバルが存在する。あなたの友人からの評判や口コミ、そしてネット上のユーザーレビューである。私はそれらに勝てた試しがない。


4コマ ギャラクシー「さよならはエモーション」(ノチノメイサク 著) 


むかしはなかったもののひとつに、ネット上のユーザーが書き込むレビューがあると思う。私たちはすっかり、カートの前にレビューへ目を通すという行為が定着した。いつのまにか、見ず知らずの人の言葉が、リアリティをともなう時代になった。私や企業の広告が、それに勝ることはもうないのかもしれない。


そしてレビューといえば、もっとも馴染みのあるのはアマゾンのアレであろう。こう書くと、今回の作品のネタバレになってしまうようで申し訳ないが。買うと決め、選んだ人を、決済へと背中を押す最強の存在。私たちはあまりにもその存在を受け入れてしまった。


ただし、いまの私はひとつだけ、アレに勝つ光明を見出している。レビューの書き方がテンプレ化しているからだ。テンプレ化した言葉は威力を失い、時に滑稽に響く。それはこのマンガのオチを見れば、よくわかるだろう。だからいまがチャンスなのだ。レビューの背中押し力が弱まったいまこそ、私や広告の背中押し力を見せる時だ。お仕着せのない言葉で、こちら向きに背中を押す時なのだ。


だから、あっちとこっちでお迷いのみなさん、リプライお待ちしております。最後に背中を押してほしい時は、私にお申し付けください。やさしくそっと、推しますので。 

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