心も身体も疲れてしまった、でもがんばらなきゃ、休んじゃダメだーー。これ以上ないくらいにがんばっている人ほど、そう思ってしまっているのではないでしょうか。
Twitterに「全部をおやすみして、できない自分を受け入れられることができるようになった話」というコメントをつけてマンガを投稿したにいのさん(@niinomr)も、かつてはそう考えていました。
にいのさんのこの投稿には2万件以上のいいねが集まり、「私の話かと思った」、「涙が出ました」といった声が寄せられています。
家の中でバイト先の先輩の声が聞こえる、本が読めない…体からの危険信号
ある日突然、にいのさんに「家の中でバイト先の先輩たちの声が聞こえる」という異変が起こりました。しかも、聞こえるのはにいのさんを責めるような言葉やクスクスと笑われているような声ばかり。
「ありえないことだと頭では理解していながらも怖かった」にいのさんはそう振り返ります。
にいのさんは、当時勤めていたアルバイト先の環境にストレスを感じていました。
眠れない、バイトの時間が近づくとお腹が痛くなる……ついには本が読めなくなって、ごはんの味もわからなくなってしまいました。
「でも がんばらなきゃ」。それでもにいのさんは整腸剤を飲んだり、マインドフルネスについて書かれているサイトを読んで体や心をコントロールしたりすることで、なんとかバイトを続けようとしていたそうです。
そしてついに、にいのさんの心は限界を迎えます。
感情が抑えきれず、興奮しやすくなったり毎日涙を流したりと、感情の起伏が激しくなってますます追い詰められてしまったそうです。
そしてある日、にいのさんはお父さんに連れられて病院へ行くことになりました。
そこでお医者さんに告げられたのは、「少し全部おやすみしましょう」という言葉。
しんどすぎることからは逃げたっていい。
にいのさんは、お医者さんのその言葉をすぐに受け入れられたわけではありませんでした。
「お世話になってるバイト先だからやめてはいけないんです」、「私は大丈夫なんです」。泣きながらそう訴えたそうです。
「がんばれないことはマイナスなことだ」そう思っていたにいのさんにとって、自分のつらい気持ちと向き合うことは簡単ではありませんでした。
それでも、お医者さんの「しんどすぎることからは逃げたっていい」という言葉に、にいのさんの心はほぐれていきます。
「困っています…」はじめて自分の気持ちを吐き出して、にいのさんはおやすみをすることを決めました。
がんばれない自分、弱い自分……それを直視しなければいけないように感じて、「休むこと」に消極的だったにいのさんですが、実際には休むのは悪いことばかりではなかったと言います。
「マンガが読める…理解できる…!」
過度のストレスから、本を読んでも内容が理解できなくなってしまっていたにいのさんですが、心と体を休めるうちに自然と回復していきました。
友達と出かけたりやりたかった勉強をしたりと、だんだんとできることが増え、東京への引っ越しも決まりました。以前のバイト先の近くを通るたびに罪悪感を抱いてしまっていたというにいのさんは、環境が変わることで気持ちも切り替えることができたそうです。
「なんでもできるようにならなくていいんだよ」恩師からの言葉
そして東京へ引っ越してきたにいのさんは、荷ほどきをしているときにあるものを見つけました。
それは、小学校高学年のころに参加していたミニバスケのコーチからの卒業祝いメッセージカード。
「なんでもできるようにならなくていいんだよ にいのにとくいなことがあって それができることがいちばんすてきなことなんだから」
そう書かれたカードを目にしたにいのさんは、「ワハ」と笑いつつも涙があふれて止まりませんでした。
「10年以上前にもらった言葉なのに、今の自分に言われているようだった」と言います。
中学生になったらバスケットボール部に入りたいと思っていたにいのさんは、周囲と比較すると遅いタイミングでミニバスケへの参加を決めたそうです。
「それでも、コーチはとても丁寧に一人ひとりに合ったメニューで教えてくれていたことを覚えています。」
恩師について、にいのさんはそう振り返ります。
「なんでもはできなくてもいいんだった……できることをやろう…」恩師のその言葉をお守りにすると決めて、にいのさんのおやすみは終わりました。
「がんばれないときに自分を責めなくていい 死ななくていいし生きていていい」。 かつては休むことをマイナスに捉えていたにいのさんですが、ご自身のおやすみ期間を経て、「がんばれないときはゆっくり休んで心を癒してほしい」と語っています。
今回マンガを投稿したことで、「自分もこんなふうになった経験がある」といった共感の声や、「大切な人に届いてほしい」という気持ちでリツイートした、という反応もあったそうです。
今、かつてのにいのさんと同じような状況にいる人に向けてメッセージをいただきました。
「助けてほしいよ、と声を出すことは勇気がいることですが、あなたのことを大切に思っている人は、そういう時にこそ声をかけてほしいと思っています。『大人になるということは、人の頼り方を知って、一緒に協力して生きていくことができることだ』と先生に言われて、なるほどなと思いました。
おやすみをすることは、不安や罪悪感がはじめは芽生えてしまうと思います。けれど今までおざなりにしていた自分の心や体を十分に休ませて、大切にすることを、まずは目指してほしいなと思います。
なにもできないときも、おやすみしているときも、自分を責めず生きていてほしいなあと思い描きました。」
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