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コミチさんの作品:▼エピソードNo.8 「一般募集」ほむほむ先生選定(患者視点)

テーマ 流産、入院、診察


結婚してすぐ妊娠したことがわかった。突然のことで戸惑いもあったが、エコーで胎嚢・心拍が確認できるようになると、次第に小さな命に愛着が湧くようになっていた。9週を迎えて初めて母子手帳を貰って受診した妊婦健診で、稽留流産をしていることがわかった。

内診台のカーテンの向こうで先生がいつもより時間をかけて色んな角度から確認したり、小声で看護師さんに他の先生を呼んできてもらっている様子がわかった。カーテンを開けられてエコーの画面を見ながら赤ちゃんの心拍が確認できない説明を聞いた。

その間は、心臓の音がうるさいと感じるほどバクバクしていて、本当に自分に起こっていることなのか信じられなかった。何か夢でもみているんじゃないかと思いながら内診台を降りて診察室に戻ると、先生が私をみて一言「うーん、今回はダメかもしれませんね」と。

私は先生のあまりの軽さに驚きとショックを感じた。流産は珍しいことではないとわかっていたし、先生にとってみれば、私はその珍しくないうちの1人なんだということもわかっていた。それでも、病院の会計待ち中に貧血を起こしてしまう程度には混乱していた。

先生のその態度は、私が悲しむ事さえ否定しているかのように感じられ、子供を失ったショックと流産手術に対する不安に加えて、不信感と怒りを感じた。私にとっては代わりのきかないたった1人の大切な赤ちゃんなのに。そんな気持ちで、帰りの車の中でやっと泣けた。

数日後に手術をして、1ヶ月後の術後検診でのこと。その際は、診断をした先生とは別の先生に診察をしてもらった。その先生は病理検査の結果などの説明をする時、「残念ですが、やはり稽留流産でした。」と言ってくれた。

私にとって、先生から「残念ですが」という言葉を聞けて、やっぱり悲しんでいいんだという何か許されるような心が少し軽くなった気がした。先生も一緒に悲しんでくれたことが、なんだか嬉しかった

患者に言いにくいことであっても、伝えなければいけない先生の立場は辛いと思いますが、患者に寄り添ってくれるだけで救われる気持ちもあるんだと実感した経験でした。

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