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コミチさんの作品:【テーマ2「人生の最終段階」】 ▼エピソードNo.3 「人生の最終段階」患者の娘の視点

ネットやテレビで「終活」などとよく聞くが、がんで在宅療養している父のことを思うと、縁起でもないと感じていた。私は、家族のサポートを受け、頻繁に父のもとへ通って介護していた。父には少しでも長生きしてほしい、亡くなったときのことを考えたくないと感じていた。

ある日突然、父の容体が悪化し、心肺停止状態となった。急いで、長年父を訪問診療している在宅医を呼んだ。

以前に、父の延命治療について、父と医師の間で話し合ったことがある。父の希望は「もしものときには延命治療を望まない」というものだった。

「何か処置をした方がいいのでしょうか?」

事前に想定はしていたが、実際にこうした場面に直面するととても動揺した。

父の意思は分かっているのに。「それで前みたいに元気になるわけじゃないなら、したくない」

そう、それが父の希望だ。でも、私の中には少しでも長く生きられるなら延命治療をしたいという気持ちの葛藤があった。

「そうだったね。お父さんは、そう希望していたね。」

やがて父は亡くなった。その後、父の持ち物を整理していたら、生前に父がもしものときのことについて様々に書き残していた記録が見つかった。

最期には意思疎通が図れなくなったが、事前に希望を託されていたことで、「お父さんと、最後まで会話ができた」ような気がした。

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