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コミチさんの作品:【テーマ1「転院/退院」】 ▼エピソードNo.2 「転院/退院」急性期病院の主治医の視点

救急外来から外科へ緊急入院となったある男性に関する申し送りを受けた。

男性の奥さんへの説明の後、手術を無事に終えたが、その男性は気持ちの落ち込みが続き、さらには誤嚥性肺炎も起こした。男性の筋力低下が著しく、車椅子でなければ移動できない状態となった。

胃がんに対する治療は全て成功したため、次は体力回復のため、筋力だけでなく摂食嚥下も含んだ専門的なリハビリが必要と考えたため、担当の看護師同席のもと、男性とその奥さんにリハビリ専門病院への転院を勧める説明をした。

医師「胃がんの治療は無事に終わりましたが、術後の筋力低下がひどく、歩くことができなくなっています。体力を回復して、リハビリ専門の病院に転院してはどうでしょうか」

私は医師としての見地から、連携関係があり信頼しているY病院を紹介したが、明らかに不満げで、X病院に残ることを希望した。

私はなぜ転院を納得しないのか理解できなかった。しかし、今は男性の回復が最優先、Y病院を信じて任せてもらうしかないと考え、「急性期病院で治療を続けるよりも、Y病院の方がリハビリ専門の病院なので機能の回復も早いと考えます」と答え、どうにか転院に同意してもらい、詳細な申し送りを行った。

3週間後、退院した男性の定期受診の日。

その時に奥さんから、「最初に転院を聞いた時は、どこか病院から追い出されるような気持ちになりましたが、Y病院でしっかりした治療を受けられたのは先生のおかげです」と聞き、ハッとした気持ちになった。

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