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シャープさんさんの作品:買ってほしいから、買ってほしいと言うこと。

のれんに腕押し具合には自信があります、@SHARP_JPです。あいかわらず私には覇気がない。覇気がないのに最近また、私の仕事(ツイッターしたりツイッターしたりする仕事)を知った上でお会いする人から、公式アカウント運営のポリシーを問われることが多くなりました。


小さなマイルール(スマホからツイートしないとか)はあるものの、ポリシーと大上段に構えるような見識はいまだにないし、むしろポリシーを掲げない、場当たり的な柔軟さこそが公式アカウント運営のコツなのでは、と思ったりもする。だからそういう質問を受けるたびに私は「ポリシーを 語りだしたら 要注意」とでも墨書して、ないポリシーを高々と掲げたくなる。


おそらく自分の行動原理をポリシーと称したとたん、それは制約と宣誓となって自らを縛りはじめる。それでもなおポリシーを語りたくなるなら、そこには柔軟さを失いつつある思考か、賢そうなことを言いたがる肥大した自意識がいるのだろう。


だからいつも自戒を込めながら、私は「率直でいろ」と自分に言い聞かせる。率直でいようとする限り、覇気や威厳はないけれど、柔軟性は失われない気がするから。


ツイッターはいい意味でも悪い意味でも透明です。発信する側も受信する側も、自分の中に潜む意図が透けて見えてしまう。そこには透明ゆえの純度の高いコミュニケーションがあるわけで、だからこそみんな、これほどまで活発にツイートするのでしょう。


純度ゆえの動力が、時に奇跡のような善意を実現することもあるし、巨大な悪意を形作ってしまうこともある。限りなく透明なツイッターは、あなたの中にある善意も悪意も、私の中にある善意も悪意も、合わせ鏡のように映す装置だ。だから私もあなたも、ツイッター上のコミュニケーションに自制と正気が求められるわけだけど。


そして鏡のように透明なツイッターで、企業がモノを申す時、もっとも注意しなければいけないのは「取り繕わないこと」ではないだろうか。つまり、率直であろうとすること。嘘も目論見も、すべてが透けて見える世界だから、せめて率直であることが企業とお客さんのコミュニケーションを保証する必要条件だと、私は考えています。


そん時はそん時である(ケンケン 著)


率直であろうとする企業アカウントは、この作品で面接を受ける彼に似ているのかもしれない。漫画家志望の彼が生活の基盤を確保しようと受ける採用面接で、漫画を優先する意思を表明する。受かる前から辞める意思があることは、本来言わずに隠しておくことだ。


しかし社長は彼の採用を決断する。その決断は、率直なやりとりがあったからこそだろう。「漫画が軌道に乗ったらどうするか」という質問自体、雇う側の率直さの表れだし、彼も率直に答えた。彼はその後、社長からの食事の誘いも観たい映画を理由に断り、さらなる率直さを示してしまうが。


ここでの彼のふるまい(と社長の決断)は、一般的には非常識な行為だろうけど、この会社は彼にとって働きやすい場所になるはずだと、私なんかは思うわけです。だって彼と会社の間に、風通しのよい関係がもう築かれているから。一度、率直なやりとりをしているから。


たぶん私は、企業とお客さんも、率直さを挟んで向き合える関係をどこか夢見ているのだ。いくらかっこいいCMを作ろうが、映えたりバズったりする広告を仕掛けようが、企業の「モテたい、儲けたい」という思惑が透けて見える時代に、「買ってくれ」と取り繕うことなく言えること。その率直さが企業とお客さんの間に風を通すような気がして、きょうも私は虚飾を排した言葉をツイートする。


そういう本音が、案外まかり通らないかなと思いながら。

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