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ごとう隼平さんの作品:「こっち見んな姫」/伊吹天花

こんにちは、マンガ制作研究組織「東京ネームタンク」のごとうです。


今回は、6月のコミチ漫画賞『#主人公のキャラ』に投稿されたネーム添削の第3回目です。


今回は伊吹天花さんの作品です。ぜひ、一度読んでから講評を見てください。



「こっち見んな姫」/伊吹天花


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冒頭でキャラについて伝える

中国の女の子(シエジー)のキャラが非常にいいですね。「チンジャオロースにするぞ」というセリフは個性的ですし、カップに「別に」と書くのも彼女の「変な子さ」をよく伝えられています!


キャラクターの情報・場所などの必要な情報を最初に与えるということがよくできていますね。


また東京ネームタンクでは“コレドナ感(=これどうなっちゃうの感)”というものが、物語には欠かせない要素であると紹介していますが、彼女自身の性格によって、このどうなっちゃうだろう、という興味を持たせることができています。



構成によってキャラの描き方は変わる

まずは全体的な物語の構成の話をします。


こちらの作品は、メインの女の子2人のやり取りを眺めてて楽しい!という「萌え」を押し出した作品なのか、語り手である黒髪の女の子(ふに)がシエジーに振り回される主観型の作品なのか、作者の伊吹さんがどのような気持ちで作られたか確認したいです。実はそれによって描き方が変わります。


もし前者なら、この2人の表情を磨いていくのが効果的です。「こういう子が最高に萌えるんだよな!」という、作者も読者もキャラクターたちを他者として愛していく作品になります。


このように「萌え」を押し出した作品にしたいのであれば、自分に自信がないシエジーを可愛く描きましょう。自信がない様子や表情を可愛らしく強調するといいと思います。


あるいは後者なら、ふにの感情をもっと知りたいですね。


例として、「その時に私シエジーってすごく優しい娘なんだって分かったの。だから、自分に自信を持っていいと思うよ」とふにが言う5P目のシーンを挙げましょう。


ここでは、語り手であるふにが、シエジーの優しさを知ってどんな気持ちになり、どうしてこのセリフを言ったのか、という「感情の流れ」を描いてほしいです。


「この子はなんて優しいんだろう」という感動なのか、それとも「この子に自信をつけてあげなきゃ」という責任感なのか、はっきりさせたいですね。


本当にシエジーにシエジー自身の優しさを伝えたいのであれば、ふににはもっと必死な表情をさせるのも良さそうです。



ジャンルを提示する

冒頭ではジャンルの説明をできたら良いと思います。


初めのうちは喫茶店でのアルバイトのマンガとして読んでいたので、後半にかけてファンタジー要素が出てきて、やや唐突に感じてしまいました。

「中国からの留学生が実は神様だった」ということを読者に意外と思わせるためには、最初に伏線を張っておくことが効果的です。


方法としては、冒頭でファンタジーな要素を持つものを印象づけておくとよいと思います。


例えば、コーヒーに花びらが1枚入っているのをふにが見つけて、「あれ?これ何だろう」というシーンを入れたり、キーアイテムであるお守りをもっと印象的に見せたりすると効果的です。


「ファンタジーなものが出てきてもおかしくない」という、このマンガの世界観を説明する情報を読者に与えておいてほしいのです。


事前に情報が与えられていたとしても、シエジーが神様であることに読者はじゅうぶん驚きます。意外すぎると読者が受け取りきれませんので、バランスよく伏線を入れることを心がけてみてください。



感情の波を大きくする

この作品では、語り手であるふにの感情の波が、後半にいくにつれて高く盛り上がっていくようになっていません。起きる出来事によってその都度感情の強さが上下するので、全体的に波打っています。


どうしてこうなってしまうかというと、語り手であるふにの「最終的な目的」が決まっていないからなんです。小さな目的はその都度その都度描けています。しかし作品全体を通したふにの目的は決まっていません。


例えば、「シエジーが仕事をちゃんとできるようにしてあげたい」という目的を設定したとしたら、「してあげたいのに→上手くいかない」という流れが続くことでふにの感情が盛り上がっていきます。


あるいは、「シエジーに、マナーを守るという日本のルールを覚えさせたい」という目的を設定したとしたら、5P目の「自信を持っていいんだよ」というくだりは目的とセリフがちぐはぐになってしまいます。


これはふにの「最終的な目的」が決まっていないことで、発言がブレてしまっています。


そのブレをなくすために、まずはこのストーリーの中での、ふにの「最終的な目的」を決めましょう。そうすると感情の大きな波が作れますし、それによってストーリーも盛り上がります。


魅力あるキャラクターを描くことができていますので、より生き生きと活躍してもらい、良い作品に仕上げてもらえたらと思います!引き続き頑張ってくださいね!


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