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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:自分のミッションを言語化する【自分の偏見メガネを把握する(4)】

「企画力を高めていくためにはどうしたらいいか?」

この問いに対し、編集者として多くの企画を生み出してきた佐渡島さんが導き出した一つの答えが、「自分の偏見メガネを把握すること」だ。


今月の『企画のおすそ分け』では、4回にわたり、この偏見メガネについて掘り下げてきた。


シリーズ最終回は、自分の信念について。企業と違い、自身のビジョン・ミッションを明確化している人は少ないだろう。しかし、偏見メガネを取り外し可能なものとするには、自分の信念を言語化し、把握することが欠かせない


***


個人のビジョン・ミッションは多様化した


(以下、佐渡島さん)

偏見メガネの3つ目のレンズ、自分の「信念」についてお話をする前に、少し日本社会の変化をおさらいさせてください。


高度経済成長期の企業は売上をあげ、より会社を大きくしていくことが目標の一つとなっていました。個人も概ね同様で、たくさんお金を稼ぐことを求めていました。幸せの基準もほぼ共通。新三種の神器と呼ばれるカラーテレビ・クーラー・カーなどを誰もがほしがった時代だったのです。


しかし、現代社会はそう単純にはいきません。多様化する社会の中で、企業の方向性も個人が幸せだと感じることにも幅が出はじめました。そこで重視されるようになったのが、ビジョン・ミッションです。

近年は、ほとんどの企業が行動指針に落とし込むまでビジョン・ミッションを明確化するようになっています。それを軸にしてビジネスを展開することが一般的になったのです。



自分のビジョン・ミッションを決めよう


僕は、企業と同様に、個人のビジョン・ミッションを言語化することをおすすめしたい。会社では目標が振ってくるものですが、待っていてもおりてはきません。とはいえ、新たに作ろうとするものでもありません。いうなれば、彫刻のように石の中から掘り出していくイメージです。奥底にある自分の信念を発掘するのです。


自分の信念を見極めるためにはどうしたらよいと思いますか? 

信念を明らかにするには、「絶対に許せないこと」を20個書き出す方法が有効です。20個のうち前半には、前回お伝えしたコミュニティの常識の偏見メガネによるものが多いはず。

大事なのは、挙げた項目に対して掘り下げていくことです。


例えば、「時間を守れないのが許せない」という項目があったとします。それに対して、「なぜだろう?」と掘り下げていきます。すると、「人に迷惑をかけるから」という思いが見えてくるかもしれません。

それをさらに掘り下げて、「なぜ人に迷惑をかけてはいけないの?」と考える。「だってそうやって育てられてきたし……」と答えに窮するかもしれません。行き止まりに見えたとしても、「じゃあ赤ちゃんは人に迷惑をかけているけれど、よくないことをしているの?」とさらに突き詰めていくのです。

すると、「人から嫌われたくない」→「人と良好な関係を築きたい」という自分の奥底の理念が見えてきます。


以上はあくまで一例にすぎませんが、深く深く掘り下げていくことで、自分の信念という名の偏見メガネを確認することがきるのです。



信念の偏見メガネを取り外し可能にする


僕の信念の偏見メガネは、「エンタメを時代に合わせて更新する」ということです。こういうメガネをかけていると、すべてを「エンタメとしてどうか?」という基準で見てしまいます。

例えば、友人の結婚式に出ても「なんでこの余興にしようと思ったんだろう?」と気になってしまう。子どもの運動会を見にいってもそう。


自分の信念の偏見メガネに気づくことができれば、それを取り外して社会を見つめることもできるようになります。

僕の場合ならば、エンタメを時代に合わせて更新するという信念があるから、つい運動会まで分析してしまう。しかし、「あ、自分の偏見メガネで見てしまっているな」とわかれば、一旦メガネを外して運動会を眺め、純粋に子どもの活躍を楽しめるようになるかもしれません。


自分のビジョン・ミッションを言語化することで、信念の偏見メガネを把握し、取り外しができるようになるのです。


これまで4回にわたってお届けしてきた「自分の偏見メガネを把握する」シリーズ。

「体調と感情」、「所属コミュニティの常識」、そして「信念」の偏見メガネを認識することで、知らぬ間に作られていた自身のフィルタに気づきます。その取り外しが可能になれば、おのずと企画の精度を高めていくことができるでしょう。


聞き手・構成/佐藤智 @sato1119tomo &コルクラボライターチーム

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