ラリー元
トランス・トメ
シャープさんさんの作品:わかったふりする顔ばかり、うまくなる仕事の話。

わかったふりする顔ばかり、うまくなる仕事の話。

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大人は夏休みが終わったころですね、 @SHARP_JP です。暑中見舞いを出す暇もなく、すっかり残暑見舞いの季節になってしまった。うだるような暑さでも、去りゆく段だと知ってしまえば、どんな夏だって名残惜しくなる。


とか言いつつ、まとまった休みを終えた大人は、ふだんのかんたんな仕事でさえ、しばらくぶりに目の前にすれば、動悸・めまい・息切れ等、心身の不調を訴えるのが世の常です。私もさっきから、開いたメールがいっこうに読み終わらない。視界に入る文字の意味するところが、さっぱりわからない。なんだブランドリフトやアドベリフィケーションって。PVだとかCVだとかKPIだとか、私はいまどこにいるのか。なにを読んでいるのか。


そもそも私は仕事柄、意味がわからないワード、特に英語による専門語をカタカナにしたワードに遭遇することが多い。だいたい私がいま所属する部門の名前が「プロモーション統轄 デジタルマーケティング部」ということからして、そもそも仕事のなにを表しているのかよくわからない。みんながモノをあらゆる手段で効率よく買うこの時代、モノを売るのにデジタルとアナログの線引きもないだろうし、自社製品を推して宣伝する行為にわざわざプロモーションという名を冠する必要性も、私にはわからない。


ただどうしても、デジタルと区分けされた分野(ツイッターの運営もデジタルに区分けされる)で仕事を割り振られていると、英語カタカナがふんだんにブレンドされた、よくわからない会話が飛び交う環境に身を置くことになる。メールも、会議も、提案されるプレゼン資料も、かすかな意味しか掴めなくて、受信するこちらが「バカなのだろうか」と自信喪失するようなワードを日々浴びるわけです。なんだよ、CPCとかノンターゲとかビューアビリティとかSMOとかカスタマージャーニーとかクリエイティブディレクターとか。省略したりカタカナにするくらいなら、ぜんぶ日本語に訳してくれ。長くてもいいから。


ましてや私の勤める会社は、スマホもプラズマクラスターも作る家電メーカーだ。必然的にカタカナが多くなる。そして私はいつしか、わかってないのにわかったふりする顔ばかり、うまくなっていくのだ。



トランス・トメ(小山コータロー 著)


だから今回、この小山コータローさんの作品を読んだら、妙に共感してしまった。やれビッグデータだクラウドだ、そんなワードを耳にしても、なんら具体的な像を結ばない自分のポンコツ脳を隠すために、うすい頷きを繰り返す毎日。


だけど、ビッグデータやクラウドと聞いてうまくイメージできない私でも、ビッグカツやクラウドさん太郎なら、ありありとイメージできる。なんなら味までイメージできる。いつもは読者を煙に巻く小山さんの不思議マンガだけど、今回は夏のせいか、心に響いてしまった。


私に限らず、よくわからない英語カタカナを浴びせられて、それをわからないと申し立てもできず、あいまいな顔をしてやりすごす人は多いと思う。意味を伝達するのが言葉の使命である以上、コミュニケーションの不全を引き起こした責任は、英語カタカナを使った側にあると私は思うのだけど、そういう言葉を多用する人にかぎって、相手より上に立ち、惑わそうという無自覚な魂胆があったりするからタチが悪い。


だからそんな相手には、この作品のように、あやしい言葉はぜんぶ駄菓子に変換してやれば、その滑稽さも際立つのではないか。そうすれば、わかったふりしてしまう引け目も、少しは和らぐかもしれない。なぜかそんな処世術をこのマンガから学んでしまった。作者の小山さんも、いまごろ惑っていることだろう。

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