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シャープさんさんの作品:においと気配。フラグを嗅ぎつける話。

雨が続きますね、@SHARP_JP です。長い雨は洗濯物も乾かないし、泳いでいるのかと錯覚するくらい湿度がすごい。なにより移動したら靴が濡れる。あれが最悪。だいたい降りかかる雨に対して、いまだ傘と長靴くらいしか対抗策を持ち合わせないわれわれに、人類の叡智はどこいったと難癖もつけたくなる。なにが言いたいかというと、この時期の除湿機、ほんとうにいいですよ。あるいはエアコンの除湿ボタン、押したことない人も多いと思いますが、除湿は生活の質を向上させます。おすすめ。


長雨はうんざりすることが多いけど、同じ雨でも、なにげなく戸外に出たとたん、アスファルトの濡れるにおいで知る雨は好きです。雨粒を目にしたり、雨音を耳にするよりも前に、嗅覚で雨を知覚する瞬間。伝達のスピードや精度では光や音にかなわないはずのにおいが、なぜか先んじてその気配だけを伝えてくるようなあの感覚を、なんと呼べばいいのだろう。


においはいつもすこし抽象的だ。においで知ることは、視覚や聴覚に比べてどこか茫洋さをともなうものだから、その先にある対象を情報として把握するより、気配のような、ぼんやりしたものを伝えることに長けているのかもしれない。私たちは気配を、鼻で知る。

本当は君のことを考えている(ワダシノブ 著)

そしてにおいといえば、われわれがつい気にしてしまうのが体臭というものです。考えてみれば体臭も、そのにおいの快不快や好き嫌いは別にして、人の気配をいちはやく私たちに伝えるものだ。どこのだれ、どんな風貌の人間かを認識する前に、ふわりとそこに人がいることを伝える。このワダシノブさんの作品でも、冒頭の課長はまず汗のにおいを鼻にして、部下の気配を感じとり、それから彼のやつれた顔を見て、昨晩の徹夜を理解したのかもしれない。


だからこそ、部下を諭す言葉に「汗のムダ遣い」という表現が出てしまった。それにしても汗のムダ遣いとは、苦労と徒労を同時に感じさせる、言い得て妙な言い回しだ。


読まれた方はじゅうぶん理解されたと思いますが、この作品は、サクセスという男性向けシャンプーの広告として制作されている。だからお話は、完徹明けにサウナへ行くという部下に、シャンプーが手渡される。サクセスは頭皮にポンプを直接押し当てて洗う、直シャンというスタイルを取るそうで、私もまんまと興味が惹かれるほど、その快適さが描かれる。


直シャン後の部下はきっと、さわやかなにおいをまとって会社へ戻ったのだろう。ムダ遣いされた汗もすっかり洗い流され、課長はあらためて仕事の進め方についてお説教しようとした時、あのシャンプーは課長がわざわざ買って用意していたことが判明する。サクセスは苦労と徒労をねぎらう、課長の思いやりだったのだ。


そしてそれを読む私ははたと思い至る。この作品は、においに満ちている。汗のにおい。サクセスのにおい。そして大人のにおい。ここには色濃くただよう気配がある。それをBLと呼ぶのを、私は知っている。


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