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たけだまゆこさんの作品:ジンジャーマンクッキー


届いてほしい。

いや、届けないで。

あたしのジンシャーマンクッキー。


(YOUはどうして動物看護師に?きのこのはなし https://comici.jp/articles/?id=7156&userPage=6&userSort=1 
に書いた、私が中学生のときに読んで

「いつか同じような人に合えるかも知れない」

と淡い期待を持てた某月刊通信教育のお話を再現しました。 >いつかお礼を言いたい

ずっとお話を切り取って持っていたんですが、
発作のようにモノを捨ててしまう気持ちが不定期に波のようにやってきたときに捨ててしまったのだと思います。。。
ですので、最後の最後の展開を忘れてしまったので、そこは私の創作です。お話の流れは再現しています。) 

**

明日はクリスマスイブ。

みんなに食べてほしいから、クッキーを焼くことにした。

あたしは、クッキーなんて作ったことがないから、

ママに作り方を教わったんだ。

さっき、必要な材料を買ってきた。

街はすっかり着飾って、

きらきらとした町中の笑顔を映してるようだった。

わたしも嬉しくなって、

たーっくさん、材料を買い込んでしまった。

薄力粉、グラニュー糖、卵、そして、ショウガ。

クリスマスの衣装を着た可愛い雑貨屋さんで、

あたしはジンシャーマンクッキーの型を見つけた。

すぐそばに書かれたポップを読むと、

ジンシャーマンクッキーには、

「幸運の祈り」の意味があるらしい。

そこで、あたしは閃いた。

「あの子に、作って渡そう!」

**

パパもママも弟も、もう、寝ている。

他のクッキーはパパとママと一緒に作ったけど、

このジンシャーマンクッキーだけは、一人で作る。

じゃこじゃこじゃこ

あたしは、ショウガをすりおろし、
薄力粉・ベーキングパウダー・黒糖をあわせて振るう。



柔らかくしたバターと蜂蜜をよく練り合わせ、
そこに溶いた卵と生姜を順番に加えてさらによく混ぜ合わせます。 



かたかたかたかた

深夜のキッチンに音が響く。

振るった薄力粉・ベーキングパウダー・黒糖をボールにいれ、
そこに滑らかになるまで混ぜ合わせた
バター・はちみつ・しょうが・卵を加えゴムベラで切るように混ぜていきます。


かたん

うまく混ざったかな。

生地がまとまってきたら冷蔵庫で1時間ほど寝かせます。


ぱたん

冷蔵庫の「じー」っという音が、

静かなキッチンに響く。

オーブンを180度に温める。

ちょっと眠たくなってきたけど、

このクッキーは作りきる。

今日、あの子は、好きな人に告白する。

ずっと相談されてたから、

あの子がどれだけその人を好きなのか知ってる。

その人も、あの子のことが気になってるから、

きっと2人はうまく行く。

ジンシャーマンクッキーは「幸運の祈り」を運ぶ。

だから、あの子に届けてほしい。

均等な厚さに伸ばしたら、人型や動物型など好きな形に抜き取ります。
棒状にして包丁で均等な厚さに切ってもかまいません。

雑貨屋さんで買った

ジンシャーマンクッキーの型で、生地を型抜く。

ジンシャーマンクッキーは、

みんなにこにこしている。


あの子の告白が、うまく行きますように。

天板に生地を並べ、15分ほど焼いて完成です。

…?

ジンシャーマンクッキーが泣いてる。

なんでだろう。



あ、

違う、これ、あたしが泣いてるのか。

あたしの目から、ぽとぽと涙が落ちる。

ちょっと今頃やめてよ、あたし。

もう、何度も話し合ったでしょ?あの子の恋を応援するって。

あの子が笑顔になるなら、それでいいじゃない。

泣いているジンシャーマンクッキーを手に取って、じーっと眺める。

あなたは、

わたし、なのかな。

ねえ、ジンシャーマンクッキー。

お願いだから、あたしの想いを届けないで。


あの子は親友だから。

あたしの想いは届いてはいけない。

届いてしまったら、この幸せな関係が壊れてしまう。

あの子の笑顔を見てることが、あたしの幸せなの。

あの子が好きな人のことを話すときに気づいた、

ちくちくする気持ちは、

ずっと見ないようにしてきたんだよ。

今更、なんだよ。

あたしは、あの子の幸せを応援するって決めたんだよ。


ねえ、ジンシャーマンクッキー。

あたしの想いを届けないで。

泣いているジンシャーマンクッキーも、

あたしは一緒にオーブンに入れた。




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