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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:感情表現のプロとして、32種類の感情を描き分けられるか?【暗記から全ては始まる(3)】

どうしたら、一流の漫画家として活躍し続けるための型を身につけ、自由自在に使いこなし、果てには型を破ることができるのか…?


それには、何にも増して “暗記” が大切だと佐渡島さんは言います。


今月の『企画のおすそ分け』では、クリエイティビティを高めるための暗記方法と、漫画家として暗記すべきことついて、4週連続で佐渡島さんに語っていただきます。


3週目の今回は「感情表現の暗記」がテーマです。


***


漫画家は感情表現のプロフェッショナルとなれ

(以下、佐渡島さん)

先週の「物語のあらすじと、キャラクターの性格の暗記」は、物語の脚本に関する話でしたが、今週はそれをどう見せていくのかという“演出”についての話です。


いい脚本が完成しても、それを演じる登場人物たちの表現がイマイチでは良い作品には仕上がりません。


すなわち、漫画家は感情表現のプロフェッショナルにならないといけないのです。


1980 年にアメリカの心理学者のロバート・プルチック氏によると、人間には8つの基本感情があり、その基本感情の組み合わせなどで32種類の感情に細かく分けられるとしています(プルチックの感情の輪の説明はこちら)。


彼が説く基本感情とは、怒り、恐れ、期待、驚き、喜び、悲しみ、信頼、嫌悪の8つです。


ここで質問ですが、「恐れ」と「嫌悪」の違いとは何でしょうか?


また、「嫌悪」を最も上手く表現していると思う漫画のシーンをあげられるでしょうか?


もし答えるのが難しいという場合は、それぞれの感情の特性に対する自分の理解が浅いのかもしれません。


一流の俳優であれば、演技をする際には、「このシーンで表現したい感情はこれだから、この演技の表現を使おう」と頭の中で計算して、撮影や舞台にのぞんでいるはずです。


それと同様に、漫画家であれば、シーンごとに描きたいタイプの感情を決めて、それを描くための表現方法を頭の中のストックから即座に引き出せないといけません


まずは、それぞれのタイプの感情ごとの特性を理解すること。


そして、その感情を表現するために、どんな表情を描けばいいのか。 どんな身振り手振りがあると、より伝わるのか。 どんなセリフがあると印象的になるのか。それを、自分の頭の中にストックしていく必要があります。


そのために、これから漫画を読む際には、「このシーンで表現している感情は何か?」を意識しながら漫画を読んでみてください。そして、上手いと感じた感情表現は、どんどんメモをとっていきましょう


それぞれのタイプの感情に対して、自分が上手いと感じる感情表現の具体例が10個くらいストックすることを、まずは目指してみてください。


自分の中に表情の基本的な型を持っているか?

それと、感情表現に関しては、やはり人物の表情が最も重要です。


漫画の人物が生き生きとするかは、表情で決まると言っても過言ではありません。読んでいて、平凡で退屈だなぁと思う漫画の絵は、たいがい人物の表情の豊さに欠けています。


笑う表情も、泣く表情も、それを表す基本的な型があって、それを崩して表現にバリエーションをつけていきます。


「Ns'あおい」などの作品の漫画家であるこしのりょうさんが書いてくれた表情の基本形の一覧がとても理解しやすかったので貼っておきます。




このように、それぞれの感情ごとに基本形となる型を自分の中に持つことが大切です。


そして、人物の表情や身振り手振りで感情がある程度表現できるようになったら、次は、その感情を伝える最適な演出のストックを増やしましょう


例えば、「怒り」を表現するのであれば、背景に雷を走らせた方がいいのか。雨の中で傘も持たずに佇んでいる方がいいのか。晴れの日に周囲が楽しそうにしているなかで一人だけブスっとしている方が怒りが伝わるのか。


どの表現が、その感情を伝えるのに一番適しているのかを、数あるバリエーションの中から選べるようになって欲しいと思います。


また、演出を考える際には、そのシーンの構図の見せ方や、効果音や効果線などの表現も欠かせません。


自分の頭の中の演出方法のストックを増やすために、漫画を読んだり、アニメを見るなかで、「この演出方法が素晴らしい」と思うものがあれば、それをどんどん暗記をしていってください


個々の感情について深く理解し、感情表現を自由自在に使いこなせる漫画家こそ、物語を最も魅力的に伝えられます。


一流の漫画家を目指すのであれば、感情表現のプロフェッショナルを目指していきましょう


(翌週へ、続く)


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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