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シャープさんさんの作品:祈りながら、モノを売る人。仕事がデキるデキないの話。

家電業界は梅雨入りするとソワソワしはじめます。なぜならエアコンを筆頭に、夏の家電が売れ出すから。こんにちはソワソワしてる @SHARP_JP です。これは業界の法則なのですが、その年の夏が猛暑であればあるほど、エアコンは売れに売れ、反対に冷夏なら、気温と同じく販売台数は落ち込みます。


家電メーカーの売上で比較的大きな割合を占めるエアコンの販売が、人智を超えた夏の行方に左右されるなら、もとよりマーケティングだの広告だの、頭をひねる仕事もへったくれもないわけで、私にあれこれ指図するくらいなら、お前が夏の神様にでも営業へ行っとけ、と愚痴めいたことも言いたくなる。


天候に商売の成否が握られているわれわれに、ロジカルなプレゼンも、頭脳明晰なコンサルも、はたまた周到な管理を求める広告も、はたして必要かい?いまほんとうに必要なのは、会議じゃなくて、占いではないのかい?


人智を超えた存在に私たちの生活が左右されるのは、太古の昔からあるあるなわけで、だから多くの祭りや雨乞いが、人々の祈りから生まれ、連綿と続いてきた。そう考えれば、夏の行方に家電の売上が右往左往するのもなんら不思議なことではないし、そんな中で仕事のデキる人は、自分が制御できない不確定な状況にも、うまく対峙してきたのだろう。大昔より仕事のデキる人は、占いのような外部性を自分の中に組み込み、絶えず祈りながら、行動したのかもしれない。


うまく言えないのだけど、自分ではどうすることもできないことをコントロールしようと労力を注ぐ人より、自分ではどうすることもできないと半ば諦めつつ、そのことに並走しようとする人の方が、未来に結果を出すのではないか。そういうことを考えさせられたのが、このマンガです。


デキる営業マンとデキない営業マンの見分け方(じゅん@外資系マンガ家 著)


日頃から私たちは「あの人は仕事がデキる」と気軽に言う。しかし「仕事がデキる」とは、なにを根拠に評し、だれにとってのデキるなのか、ふと考えることがある。


このマンガでは、デキる営業とデキない営業が対比して描かれる。一読すれば、ほんとうにそうだよね、と思うことしきりだ。しかし何度か読むうちにこの対比は、相手をコントロールできる対象と見て対峙するか、相手を制御不能な対象として諦めるか、の違いだということがわかってくる。自分の言いたいことを言い、相手の行動をねじ伏せるか。自分の言い分は後にして、相手の意思を追いかけるか。人を操る能力を「仕事がデキる」と評するのか、人に寄り添う能力を「仕事がデキる」と評するのか。


言い換えると、強さを誇示するコミュニケーションと、弱さを共有するコミュニケーションの対比で、これはすなわち北風と太陽の話なのだな、と思い至る。


私たちはつい、人を制御する力を仕事のパラメーターとして評価してしまう。もちろん対象を支配してコントロールできる手腕は、勝つための立派なスキルだけど、他人を自分の人智を超えた存在として向き合い、祈りながらおずおずとコミュニケーションを図る方が、仕事として誠実なのでは、とも思うわけです。


「誰から買うか」の「誰」になれる人が、営業という仕事における、デキる営業さんの姿なのでしょう。モノを売る人が、その「誰」になるには、モノを売り上げる前に、パーソナルな信頼を獲得しなくてはいけないはずで、そう考えれば、モノを売るのに必要なのは腕力ではなく、そばに佇むことなのかもしれない。それはどこか、テレビやスマホの画面で繰り返される暴力的な広告のあり方にも通じるような気がして、だから私は、弱くていいから太陽でありたい、とも思うのです。

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