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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:心に響いた物語やキャラクターの魅力を「5分」で語り尽くせ!【暗記から全ては始まる(2)】

どうしたら、一流の漫画家として活躍し続けるための型を身につけ、自由自在に使いこなし、果てには型を破ることができるのか…?


それには、何にも増して “暗記” が大切だと佐渡島さんは言います。


今月の『企画のおすそ分け』では、クリエイティビティを高めるための暗記方法と、漫画家として暗記すべきことついて、4週連続で佐渡島さんに語っていただきます。


2週目の今回は「物語のあらすじと、キャラクターの性格の暗記」がテーマです。


***


大好きな漫画のあらすじを、他人に魅力的に伝えられるか?

(以下、佐渡島さん)

今週から、漫画家として暗記すべき項目について、ひとつずつ詳しく話していきます。


はじめは、漫画にとって最も重要な『物語のあらすじ』についてです。


まずは、自分が大好きな漫画を10作品、思い浮かべてみてください。そして、その10作品のあらすじを各作品ごとに伝えることはできますか?


実は、この質問を新人漫画家にすると答えられないことが多々あります。細部がうる覚えだったり、物語のどこに惹きつけられたのかを尋ねるとあやふやだったりします。


漫画家とは物語を創作する職業です。自分の心に響いた物語ですら空で他人に語れない状態で、人を魅了する新しい物語を創り出すことは難しいのではないかと僕は思っています。


そのため、プロの漫画家を目指す人には、自分の好きな作品のあらすじを細部まで記憶し、その物語の構造を自分なりに分解し、他人に魅力的に伝えられるくらい暗記することを薦めています


そして、複数のあらすじを暗記し構造化すると、人を惹きつけるための共通の型が浮かび上がってくるはずです。


主人公の感情が物語を通じて、どのように変化すると、読者は主人公に惹きつけられるのか。 どういうタイプの出来事が起こると、主人公の成長が魅力的に描けるのか。 ストーリーの起伏として、どういう出来事が中盤で起こると、読者を飽きさせないのか。


例えば、こういう問いに対して、自分の好きな作品を並べて構造化することで、自分なりの答えが見つかるのではないかと思います。


また、構造化する際のコツは、作品について5分程度で短く他人に伝えることです。


誰かに作品の魅力を短く伝えるためには、その作品を分解し、必要な要素だけを抜き出し、理解しやすいように並び替える必要が生じます。説明とは、構造化の基礎が詰まっている作業なのです。


そのため、暗記したら、誰かに話す。うまく説明できなかったら、その理由を考えて、また話してみる。その繰り返しで、構造化を進めていってください。


そして、自分の好きな作品の暗記と構造化が終わったら、次は自分の好みとは違うけど、世の中的に大ヒットしている作品に対しても何作品かやってみましょう


そうすることで、多くの人に受け入れるためには何を押させておいた方が良いかという視点も芽生え、より型に対する理解が深まるはずです。


好きなキャラクターの性格や生い立ちを詳細に語れるか?

次は、『キャラクターの性格』の暗記についてです。


先ほどのあらすじ同様に、自分の好きな漫画のキャラクターを10人、思い浮かべてみてください。そして、その10人の性格や、その性格が形成されていった生い立ちについて、詳細に伝えることはできますか?


この質問も、ハッキリと答えられない人が多いように思います。


ただ、言うまでもありませんが、漫画にとってキャラクターは重要な存在です。読者がキャラクターに感情移入しない限り、物語の先を読みたいと思ってもらえません。


魅力的なキャラクターを生み出すためにも、まずは自分が惹かれるキャラクターについて暗記し、その魅力を構造化することが大切なのです。


そのキャラクターの個性や性格を形成する一連の出来事を細部にわたって暗記する。キャラクターの性格をうまく表している言動を抜き出してみる。そして、自分がなぜ惹かれるのかについて言語化する。


そういったアプローチをしながら、そのキャラクターの魅力を充分に他人に伝えられる状態になるまで暗記してみてください


これも、5分くらいで短く他人に伝えられるように練習することが、構造化をうまく進めるコツだと思います。


そして、ある程度進んだら、キャラクターをタイプごとに分類してみてください。


例えば、主人公の相棒、主人公のライバル、主人公の敵(対立する存在)、主人公の教師役といった具合です。


どういう性格の相棒がいると、読者が物語により惹き込まれるのか。どういった性格の敵が存在すると、勝負の結末が気になるのか。先生役は、どういう性格の教師役を用意すると、主人公の成長が魅力的に描けるのか。


そういった視点から、どういうキャラクターを主人公の周りに登場させると、良い作品に仕上がっていくのかの型が見えてくるはずです。


主人公の魅力は、主人公だけでは生み出すことはできず、その周りにいる人物たちとの関係の連なりで生みだされていきます。


キャラクターの性格の暗記と構造化を進め、キャラクターの性格パターンと、どういう性格の組み合わせが物語を面白くさせるのかのストックを、頭の中に増やして欲しいと思います。


(翌週へ、続く)


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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