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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:クリエイティビティに絶対必要なもの。それは“暗記”だ!【暗記から全ては始まる(1)】

プロの漫画家として活躍し続けるために、絶対に必要なものとは何か…?


それは、“型を身につけること”


いきなりゼロから新しいものを生み出そうとしても大抵うまくいかない。物語の型、キャラクターの型、感情表現の型…。まずは型を抑えることが大切だと、この連載『企画のおすそ分け』では、繰り返し伝えてきました。


では、どうやったら型を身につけ、自由自在に使いこなし、果てには型を破ることができるのか…?


それには、何にも増して “暗記” が大切だと佐渡島さんは言います。


「型を自由自在に使いこなすためには、型そのものや、それを使った表現を暗記している必要がある。調べればわかるでは不十分。スピードが遅いし、自分のものになっていない。自分のものになっていなければ、意のままに操れないし、抜け出せない


そこで、今月の『企画のおすそ分け』では、クリエイティビティを高めるための暗記方法と、漫画家として暗記すべきことついて、4週連続で佐渡島さんに語っていただきます。


1週目の今回は『暗記法』がテーマです。多くの新人漫画家は、暗記の仕方が間違っていると佐渡島さんは指摘します。果たして、正しい暗記方とは何なんでしょうか?


***


体に染み込んでいなければ、意のままに操れない。

(以下、佐渡島さん)

クリエイティビティに絶対に必要なものは何か?それは、“暗記”です。


これはマンガ家だけでなく、小説家、映画監督、俳優、デザイナーなど、クリエイティビティを求められる全ての職業に当てはまります。


これまでに僕が出会った一流の人たちは、強く影響を受けた事柄や、参考にしている対象の魅力について、全員が完全にそらで説明することができました。暗記により、まるで頭の中に資料室があるかのようです。


人は、オリジナルなものを創り出すときでも、必ず何かがベースにあります。それを、“型”と呼びます。


型を自由自在に使いこなし、その型を破るためには、型そのものや、それを使った表現を、頭に叩き込んでおく必要があります


「暗記をする必要などない、必要な時に調べればわかる」


そう言うかもしれません。ですが、それでは不十分です。スピードが遅いし、自分のものになっていないからです。自分のものになっていなければ、意のままに操れないし、抜け出せません。


主人公が、未来に絶望するシーンを描きたい。そんな時に、どういった展開で持っていくと一層の悲壮感が演出できるのか? どういう表情を描くと感情がより表現できるのか? その時のセリフは? 身振りや手振りは? 背景の演出は? アングルは? コマ割りは?


こういった時に、瞬時に自分の頭の中にあるストックから、最適な答えを導くことができるのが一流のマンガ家です。


これをセンスだけでやるのは到底無理です。そのため、活躍し続けているプロのマンガ家は常に様々なものを観察しては暗記し、自分のストックを増やし続けています。


暗記自体はクリエイティブな作業ではないかもしれません。しかし、クリエイティビティを一番速く手にいれる手段は、暗記なのです


分解し、共通要素を考え、ルールを見つけ出そう。

多くの人は、暗記が苦手だと言います。でも、それは暗記の仕方が間違えているだけです。


暗記で大切なのは、まずは基礎となる型を身につけることです。そして、その型に紐づけて様々なものごとを覚えていくと、ストックの量がどんどん増えていきます


これを料理で説明します。プロの料理人となって、オリジナル料理のレシピを作れるようになりたいと思ったとします。


行き当たりばったりで料理を作っていても、美味しい料理のレシピをつくることは難しいでしょう。仮に生まれたとしても、それはまぐれ当たりに過ぎません。


まず大切なのは、料理の基礎となる型を知ることです。実は料理とは、5つの要素の組み合わせで構成されています。焼く、炒める、煮る、蒸す、揚げる。この5つしかないんです。焼いて、炒めるか。蒸して、揚げるか。


この組み合わせごとの象徴的なレシピを幾つか覚えておいて、「こういう組み合わせをすると、こんな仕上がりになる」と記憶しておくと、あとは簡単です。使用する食材や調味料の差で、レシピのバリエーションが無限に生まれます。


このように、基礎となる型を身につけ、その型に紐づけて知識を増やしていく。すると、応用がきいて、オリジナリティのあるものが生まれます。


でも、多くの人は、暗記する時に暗記が目的になってしまい、結局は暗記ができず、暗記が嫌いという結果に陥ってしまうのです。


だから、漠然と暗記をするのはやめましょう。それでは、時間がいくらあっても頭の中のストックは増えず、クリエイティビティは育ちません。


覚えたものを分解し、共通の要素を考え、一定のルールを見つけ出すこと。これを意識して、暗記してみてください。


例えば、自分が大好きなマンガを5作品あげて、その全てのあらすじを空で語れるでしょうか? 


さらに、その全作品に共通している要素から、人を惹きつける物語のルールついて、詳しく語れるでしょうか?


よく新人漫画家や新人編集者で、読書量を誇る人がいますが、それだけでは役には立ちません。意識的に物事を観察し、型を見つけ、それに紐づけて知識を暗記をする。この暗記量が、クリエイターの基礎力になっていくのです。


そして、漫画家は暗記すべき項目が非常に多く求められます。物語のあらすじのパターン。キャラクターの性格のパターン。感情を伝えるための表情や構図のパターン…。


そこで翌週からは、漫画家として暗記すべき項目について、ひとつずつ詳しく話していきたいと思います。


(翌週へ、続く)

聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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