ラリー元
老人と機械
シャープさんさんの作品:ネットの内と外を考える。スマホを機械と呼ぶ人たちのこと。

ネットの内と外を考える。スマホを機械と呼ぶ人たちのこと。

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口に出して読みたい元号、令和。言いたいだけの @SHARP_JP です。私はふだんツイッターを舞台に、自分の会社の製品をおすすめしたり、しなかったりしている。しない方が多いけど。おおざっぱに言えば、私はインターネットの中で宣伝や広報をするのが仕事です。


インターネットで宣伝とか広報というと、ITやらデジタルやらとくくられ、比較的新しい仕事だと思われることが多い。いやいやインターネットが新しいとかいつの時代だよ、とおっしゃる気持ちもわかりますが、新聞やテレビの世界と比べれば、依然として新しい側の仕事ではある。


お箸のようにスマホを使う若い人にはピンとこないかもしれないけど、日本の会社には、おどろくほどいまも「昔ながら」が息づいていて、新しくないのに「ずっと新しいまま」にされる職種や仕事がある。


特にツイッターなんて、若者の巣窟みたいなイメージはまだ色濃く、私の仕事は若者をターゲットにした宣伝、と社内で仕分けされることもしょっちゅうだ。使う人と使わない人、現場にいる人といない人の間にギャップがあるのは会社や組織の常だけど、「SNSは若い人たちの世界」という解釈はあまりに手垢のついたイメージではないかと、ツイッターを使い、ツイッターの現場にいる私なんかは思うわけです。


そもそも私は、世代で切り分けて宣伝方法を考える仕事をあまり信用していない。家電なんて、ランドセルや老眼鏡じゃあるまいし、年齢によってそれを必要とする切実さが変わるわけでもない。せいぜい、いっしょに暮らす人数が変われば、冷蔵庫や洗濯機に必要とされる大きさが変化するくらいだ。


しかも家族を構成する人数だって、1人が2人に、2人が3人へと、ステレオタイプに人生がシフトする時代でもない。世帯のあり方はすでに多様だ。ずっと1人だっていいし、いきなり5人で生活する人だっているだろう。


だから私は「今回の広告は若年層を狙ったクリエイティブでテコ入れを」みたいな意見は話半分で聞くし、あらゆる人の人生を年齢で区分するあなたの思考こそ、抜本的に見直さなければいけないのではと、こっそり思ったりする。人を年齢で区分けするヒマがあったら、私はひとりひとりの切実さにどこまで広告がタイムリーに寄り添えるかを考えたい。


だけどいくら人を年齢で区分けする行為から離れた仕事を志そうとも、なにかを企画したり発信したりする上で、私がぜったいに忘れてはいけない世代の人はいる。スマホやパソコンを「機械」と呼ぶ人たちだ。



老人と機械(ひびのし 著)



インターネットが当たり前に普及し、いくらツイッターが幅広い人に利用されても、そこに参入することができない人は必ずいる。それはインターネットやツイッターの外にいる人たちで、インターネットやツイッターの内側にいる私から見れば、私の仕事がぜったいに届かない人たちだ。私は自分のメッセージが「ぜったいに届かない人」を想像する時、いつもパソコンやスマホが機械と呼ばれる姿が思い浮かぶ。


だがパソコンやスマホを機械と呼ぶ人は、驚くほどあなたや私の身近にいる。たとえば、あなたや私の実家に。ふと実家を思うように、自分の圏外にいる人を思うこと。あなたや私にとって当たり前のツール、当たり前の製品にも、それが当たり前でない人の姿を、いつもありありと想像できること。そこには、人を乱暴に区分けしてなにかを伝える仕事に欠けてしまった、大事なことが含まれているはずだ。


また同時に、テクノロジーを機械と呼ぶ人は、決してテクノロジーの可能性が閉じられた人ではない。この作品の父親のように、おずおずとテクノロジーに踏み出す勇気を持つ人はいる。私たちはその勇気に寄り添うべきだし、いつだってその勇気にきっかけを提供することを諦めてはいけないはず。それこそ、テクノロジーに奉仕する、メーカーの人間の義務ではないか。


おそるおそるカラオケを再開し、離れた家族とコミュニケーションが増えるどころか、YouTuberまではじめたお父さんを見ると、私の仕事のゴールは「機械」という他人行儀な呼び名がなくなることなのかも、と思ってしまう。ひさしぶりに親から送られてきた写真が、拙いながらもくっきりとした縦動画だった時、私はその勇気を賞賛したくなる。機械がスマホと呼ばれる瞬間だ。

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