コラム
秋野ひろ
04月02日更新

ボクたちはみんな平成地獄ブラザーズになれなかった

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自分の理想を追求する。自分の決めたルールだけに従って生きる。

心の中に1人は、そんな思想を体現し、格好良く生きるヒーローが住んでいるのではないか。

狩撫麻礼ファンの人なら、『ボーダー』の蜂須賀が真っ先に思い浮かぶかもしれない。僕にとっては『天使派リョウ』のカヨさんがそれだ。


誰もが彼らに憧れ、そんな風になりたいと一度は願う。


では何故、憧れ、願うだけでとどまってしまうのだろうか。

自分の生き方を馬鹿にしてきた、友人を見下し利用した、外見だけを取り繕った、そんな相手に対し、殴り飛ばすどころか笑顔さえつくってしまうのは何故なのか。


それぞれの立場ごと答えは異なるかもしれないが、一般化すれば保身でしかない。

殴り返され、孤立するのが怖いからだ。


『ハード・コア』の主人公、権藤右近は、そんな僕たちのズルさを抉り出し、目の前に突きつけてくる。

これは殴り返され、孤立しながら、それでも理想を追い続ける彼の生き様を描いた作品だ。


右近の収入源は、彼の傾倒した思想家が世直し資金として想定している、埋蔵金を探す発掘作業だけ。

当然贅沢など出来ず、古びたアパートに1人で住んでいる。

一言で表すなら社会的弱者だ。


そんな彼が、自分の周囲にいる人達の間で揺れていく。

大きく分けると、自分が「不憫だ」と感じ守ろうとした友人たち「平成地獄ブラザーズ」と、唯一マトモな社会人として生きる弟との側だ。


彼らと接する中で、右近は、自分が少し行動を変えれさえすれば、社会を接点を持って生きていけることに気付く。

社会的弱者として生きる道しかないと思っていた右近に、新しい選択肢が生まれる。

だがそれには、今まで貫いてきた理想を曲げる必要がある。

いくつもの迷走の後で、彼は平成地獄ブラザーズと運命を共にすることを選ぶ。


そこで僕は、自分は右近が選ばなかった側にいることを思い知らされた。


誰にでも、本当に理想を最優先にするなら、それで生きていくことは出来る。

結局のところ、平成地獄ブラザーズになる覚悟が無いだけだ。

理想よりも他の何かを大切にしているだけだ。

簡単に理想を追いたいとぼやき、自分で選んだ現実に被害者ヅラすらしてしまう。

ラストシーンでは、自分の無責任さへの嫌悪感と、それを自覚したからこそ強まった右近への尊敬とが入り混じり、映画館で初めて涙を流してしまった。


「完」の文字が消えた後で、平成地獄ブラザーズが幸せに生きる未来を描きたくなってしまう。

だがそれは安全圏である立場だから出来てしまう祈りにも見える。


幸せになれる保証が無くとも、飛び込む覚悟があるか?

僕は狩撫麻礼の問いに、心をかき乱されながらも向き合い続けたいと思う。

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