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たらればさんの作品:第2部 100人の他人より大事なこと

「ふざけるな」と言われたら

たられば:先ほど、ツイートよりもリプライ、会話がメインというお話をされていたんですが、その「SNSでの会話」で気をつけていた点などはありますか? 浅生鴨:アカウント名で「NHK広報局」と名乗っていますが、「こういうことを呟くんだろうな」と思って見に来る人に対して、全然違うような、意外性を出せればいいなとは思っていました。 たられば:そういえば「びろーん」とか呟いていましたよね。 浅生鴨:真面目な、「自分の想像しているNHK像」がある人に対しては、「あなたの求めている情報は、このアカウントは出さないと思うので、他のアカウントをどうぞ」と紹介するようにしていました。 たられば:それはそれで「傷ついた」とか言われないですか? 「素っ気なくされた」とか。 浅生鴨:「傷ついた」というより「ふざけんな」のほうが多いですね。 たられば:怒られたらどうしてましたか? 浅生鴨:その相手のお叱りが「なるほど」というような、正しいお叱りであれば謝るし、単なる感情的な理由であれば、そこは別に謝らないでそのまま放置していました。 たられば:放置。 浅生鴨:なかにはちょっと誤解にもとづくような、言いがかりのようなものがあった場合には、そこはしっかり反論していました。 たられば:SHARPさんはいかがですか? SHARP:僕はもともとSHARP社内でテレビコマーシャルとかを作っていて、「アクオスは素敵なテレビですよ」って思わすような、そういう仕事が長かったんです。その頃にやっていたことって、イメージ的には素敵なコマーシャルをこう……上から目線で人に向かって流していた感じがするんです。コマーシャルって、それを見た人に憧れさせるっていうか、「いいなぁ、やってみたいなぁ」って思ってもらうために作るんですよね。 たられば:特に大手メーカーの宣伝ってそういう感じですよね。 SHARP:で、僕はそのあとだんだんWebの仕事をやるようになって、これはきっと今でもそうだと思いますけど、Webで主流のプロモーション活動って、「バズるムービー」とか「RTするだけで景品プレゼント」とか、もっとストレートな企画だと何か面白いことやって「こいつアホやな」と思ってもらってリツイートしてもらうとか……つまり、どっちかっていうと下から上にいくプロモーションかなって思っていました。 たられば:ふむふむ。 SHARP:そういうなかでツイッターをやり始めたんですけども、その「上から」と「下から」を両方見てみて、「あれ、よく見たら真ん中があいてるな」と思ったんです。 たられば:真ん中ですか。 SHARP:ええ。要するに「僕とあなたは同じ位置ですね、同じ目線ですよね」と。そういうコミュニケーションがあいてるなぁと思ったんです。だからその立場でいこうって決めて、あとはその位置に合った言葉を選んだり、しゃべり言葉を考えたり。 たられば:ふーむ…この話、鴨さんいかがでしょうか。 浅生鴨:僕が考えていたのは「パブリック」というものでした。つまり全員が平等な状態。そもそもNHKが最終的に目指しているところは「そこ」なんですね。公共の福祉だったり、民主主義の発展に寄与する。それってNHKの存在意義なんですよ。 だからNHKそのものをどうこうっていうよりは、そのさきにある「パブリックを作る」ってことを目指していれば、そんなにおかしなことにはならない。これは最初から決めていたわけではなくて、途中から気づきました。どこかでNHKという組織を超えた、パブリックというものに忠実にあろうとしていたところがあります。 たられば:いまの話なんですが、個人的にものすごい面白いなって思いました。まずSHARPさんが「上からとか下からじゃなく真ん中を目指した」っていうのと、「NHKのアカウントはパブリックを求めた」っていうですね、全然違うアプローチから結果的にとても似たスタイルになるっていうことですよね。これ、鳥肌が立つくらいびっくりしました。

ブロックとミュートの使い方

たられば:具体的なツイッターの使い方をもう少し教えてください。ミュートやブロックは使っていましたか? 浅生鴨:ブロックはいっぱいしましたね。すごいしました。 たられば:たくさんしましたか。 浅生鴨:「それがお互いのためだな」と思ったんです。NHKのあらを一所懸命探して、そのNHKに文句を言う…っていう人がいて。もちろん「ああしたほうがいい」、「こうしたほうがいい」っていうような、建設的なご意見ならいくらでも聞くんですけども、あまり建設的でないことに囚われ過ぎちゃうと、言っているほうも疲れるだろうなっていうのがあって。 たられば:ああ…そういう人はたくさんいますよね……。 浅生鴨:ここは判断が難しいところで、「全国にあまねく放送を届けなければならないNHKともあろうものが、ブロックするとは何事だ」っていうご意見は、「なるほどな」と思うところもあるんです。けれど、本当におっしゃりたいことがあるんだったら、それはお手紙なり、コールセンターに電話していただければいいわけで。それこそ「健全な民主主義の発展には寄与しないんじゃないか」っていう、そういう思いもあったんです。そういうこともあって、けっこうブロックしてましたね。 SHARP:僕はブロックはしないですね。したことがない。 たられば:ミュートはどうですか? SHARP:ミュートも、よっぽど連投する人だけです。仕事の邪魔になるときはするけど、それ以外はしないですね。 たられば:使い方の面ではそれぞれ違うんですね。それではもう一点、たとえば(企業公式アカウントではなく)一般の方で、ものすごく頻繁に話しかけてくる人がいると思うんですけど、そういう「常連さん」みたいな、仲良くなる人はいましたか? 浅生鴨:それは別に、仲良くなるならなります。ただ数(フォロワー数)が尋常ではないので、ほぼ識別できないです。1秒間に数百数千のリプライが来る世界なので、申し訳ないのですけども、いちいち見ていられない。 たられば:そうすると、返すべきリプライも返せなかったりするんじゃないですか? SHARP:たぶん人為的な限界を超えているので、そこは漏れても仕方ないなと思っています。ただやってるうちに、なんかアイコン覚えてしまうくらい喋ってくる人ってのは確かにいて、そういう人に対してはちょっと対応を控えるっていう心の動きは僕の中にはありますね。 浅生鴨:そうですね。「あ、この人、見たことあるな」というレベルだと、アイコン2000~3000くらいは覚えてるじゃないですかね。 SHARP:そうですね、なんとなく覚えています。 たられば:に…2000~3000ですか……。

タイムラインは「フラット」に

たられば:フォローバックに関してはどうですか? フォローされたアカウントをフォローし返す、という。 浅生鴨:今現在のNHKは「いっさいフォローバックしない」っていうルールになったので、フォロワーはゼロのはずです。あ、NHKのアカウント同士はあるかもしれませんけれど。僕がやっていたころは、基本的にはフォローしてくれた人はフォローするっていう方針にしていました。 たられば:おお、全員フォロー返し。 浅生鴨:そうするとどうなるかっていうと、タイムラインに出て来るものが全部フォロワーのツイートなんですよね。だから見知らぬ人ではなくて、常にこっちと接触のある人が出てくる。そうすると、そこにいきなりリプライで介入しても「いきなり知らんNHKが突然話しかけて来た!」みたいにはならない。 たられば:SHARPさんはいかがですか。 SHARP:僕は、フォローバックは基本的にずっとしていませんでした。たとえばタニタさんとかセガさんとか、流れのうえでフォローしたほうがいいなっていうアカウントはフォローしていましたけど、それ以外はゼロ。でも2年くらい前から、シャープのアカウントをフォローしている人に対して「あなたがフォローしているアカウントの中で、一番好きな人を教えてください」っていうのを何回か定期的にやってて、その推薦された人をフォローするようにしています。 たられば:あ、時々やってらっしゃいますよね。 SHARP:これは、「フォロワーの好きなものを知ろう」という話なんです。最初の「フォローバックはしない」というルールに比べるとだんだん緩くなっているんですけども、これをやっていると、なんか人が好きなものがタイムラインに流れて来て楽しくなるっていうか、フラットになるっていうか。

100人の他人よりも5人の友達

たられば:次の質問は皆さん一番知りたいところなのかな、と思うんですが、ご両名はフォロワーを増やす努力はしましたか? したとしたら、どのようなことをしましたか? 浅生鴨:これは、正直言うとまったくしなかったんですよ。 たられば:参考にならない(苦笑)。 浅生鴨:そもそも「数を増やす」っていうことにあまり重きをおいてなくて。「数」よりもやっぱり「深度」とか「熱量」のほうがすごく大事だなって思ってたんです。 たられば:「深度」ですか。 浅生鴨:たとえば100人の他人よりも5人の友達がいたほうがいいし、5人の友達よりも1人の身内がいたほうがいいので、そこは「数」じゃなくて、本当に身内。例えば……NHKがとんでもない不祥事を起こしたとするじゃないですか。 たられば:不祥事、はい。 浅生鴨:そしたら100人のフォロワーはたぶん……。 たられば:離れる? 浅生鴨:離れはしないにしても、「あーあ、NHK、やっちゃったな」ってあきれるでしょう。5人の友達は「NHKしっかりしろよ」って言ってくれるし、1人の身内は「あんなことする子じゃない、何か理由があったに違いない」って言ってくれるかもしれない。それぐらい、その深度の関係性をどう作るかっていうことに注力していました。 たられば:なるほど…。 浅生鴨:「プロモーション意識」みたいなものはまったくありませんでした。あくまでも「パブリック リレイション」。プロモーションではなく「広報」なので。 たられば:SHARPさんはどうですか? SHARP:まず僕は「広告してフォロワーを増やす」ってことは絶対にやらないでおこうって自分の中で決めてました。今でも僕、ツイッターに関しては予算を断っているんです。会社のお金をいっさい使わない。なんらかのかたちであってもフォロワーを金で買わないってことは今でも守っています。 たられば:あ、なるほど、たとえば「100名様にプレゼントをあげます、条件はこのアカウントをフォローしてこのツイートをRTしてください」…みたいな企画はよく見かけますね。 SHARP:鴨さんが広報的な視点でおっしゃっているのとは別に、僕は宣伝とかマーケティングのところにいたんで、ちょっと感覚は違いますけど、「マーケティング」って要するに、こう、人を刈っていく感じじゃないですか。 たられば:刈っていく? SHARP:「ここにニーズがあるぞ!」とか、「10代の男子はこうだ」っていうのを見つけて、そこに向けてこう「財布の金を刈り取りにいく」っていうのがマーケティングやと思うんですけど、それもやらないでおこうと思ってて。 たられば:あー、なんとなくわかります。 SHARP:それで、どっちかっていうと一般にマーケティングの仕事って「(SHARP製品を)買ったことがない人に買わす」っていうのが本質的な仕事なんですけど、そうじゃなくて。 たられば:そうじゃなくて? SHARP:「買ってくれた人と喋るようにしていた」というひとつのコツ…、コツというか、僕が決めていたことですね。すでに(SHARP製品を)買ってくれた人のほうがおそらく仲良くなりやすいっていうのもあるし、仲良くなれば次も買ってくれやすくなるんやろなっていうふうに思っていたんで、よし僕はそっち側を担当しようと思ってやってました。いまでもそうですけど。

たくさんリツイートや「いいね」を集める方法は?

たられば:ちょっと言い方が難しいんですけど、大量リツイート狙いのツイートとか、1万いいねを目指すツイートとか、そういうのはどうですか? 浅生鴨:チェスのように「こういうふうに書くと、きっとこういう返事をしてくる人がいるだろうから、それに対してこういうふうに答えたら、きっとそれは多くの人がリツイートしてこういう反応が出てきて、じゃあさらにそのかぶせとしてこれを用意しておく」みたいな、詰将棋のような言葉遊びはやりましたけども、「いいね1万」とかそういうKPI的なものはまったく設定はしてないですね。 たられば:すごく高度な話になってきた気が……SHARPさんどうですか。 SHARP:SNSって、ある種のスキルみたいなものはありますよね。「構文」みたいなものとか、スラングみたいなところがあって、それをどのタイミングや文脈で使ったら面白いかっていうのは、続けているとなんとなくわかってきます。 たられば:「構文」というのはわかりやすいですね。 SHARP:それにしたって、たとえば1万リツイート超えたツイートをしたら、フォロワーが1万人増えるかっていうと、決してそんなことないですよね。せいぜい1000フォロワー増とかなんで、だからバズったらフォロワーが増えるっていう認識が僕にはあんまりないです。 浅生鴨:僕が「数」に興味がないっていうのは、たぶんNHKだったからっていうのもあるんです。NHKの番組って、たとえば視聴率1%で100万人に届くわけですよ。 SHARP:勝ち目がない(苦笑)。 浅生鴨:紅白歌合戦って、4000万人とかが見るわけです。そこで「フォロワーが10万人」とか言ってても、視聴率でいえば誤差の世界ですよ。だからそこは全然数字じゃなくて、その代わりに、漫然とテレビを見ている人じゃなくて、「こっちのこの2万人はいざという時にはこっちの味方をしてくれるぞ」っていう2万人を育てていくほうが圧倒的にいいんです。そういう感覚ですね。 たられば:いやー、今のはすごくいい話ではあるんですけども、はたして一般的な公式アカウントには参考になったのかならないのか…。 SHARP:綺麗事に聞こえるっていうのはわからんでもないですけど。 浅生鴨:でも、「本来は透明であること」とか、「毎日やること」とか「ちゃんと謝ること」とか、「人として当たり前のことをちゃんとやる」っていうのが一番大事な気がする。「面白いことをやってお客を引っ掛けてやれ」とか、「ちょっと騙してやれ」みたいなとか、「驚かせてやれ」、「怒らせてやれ」とかってよりは、丁寧に誠実にやることのほうが、よっぽど友達増えるというか。 たられば:ものすごく正しいと思います。 浅生鴨:普段から適当なことを言う面白さとは違って、やっぱり不誠実な人とはなかなか友達になりたくないじゃないですか。面白いこと言ってる、でもいざという時はやっぱり誠実ですっていう、なんかそういうキャラクターをしっかり立ててあげられれば。 SHARP:ただ、そういうスタンスでも、よく奢ってくれる友達には勝てないっていう、わりと別の問題もあるんですよね。ひょっとしたら1万円当たるっていうほうが強いんちゃうかっていうのあって。 浅生鴨:「フォローしてリツイートしたら100万円もらえる」とか。 SHARP:でもそれは、ある種の広告の手法ですよね。いっぽうで僕はそもそも広告としてはやってないっていうのと、そもそも僕は広告が嫌でこういうことやってるので、そういうのは手を出さないっていうのはありますよね。

「文脈」に落とし込む

たられば:社内との調整で気をつける点、気遣っていた点、苦労した点などありますか? 浅生鴨:基本的には上下関係とか、ある種の(社内の)政治的な圧力とか、そういうものに巻き込まれるのは嫌だったんで、「誰が(ツイッターのアカウント運営を)やってるか」っていうのは、社内でも隠していました。 SHARP:会議とかも出ないとかね。 たられば:か、会議に出ない。 浅生鴨:ある種、誰からも独立した状態っていうふうにしようとは心がけていました。まぁ完璧にはいかないんですけどね。見つけてくる人もいますし、圧力に負けることもあるし、誘惑に溺れることもあるので。 SHARP:怒られますしね。 浅生鴨:ただ、たとえば「今のツイッターの大きなコンテクストの中にこの情報をこういう言い方で入れちゃうと反発を食らうな」っていうような文章を、「そのままこれを言え」って言われたときは、やっぱりそのまま呟くことはなくて、「ここはもうこういうふうにしないとダメですよ」って言って、ちゃんと変えるようにしてましたね。 SHARP:そういう人って、変えたら変えたでまたすごい怒るんですよね(苦笑)。 浅生鴨:はい。特にあの、NHKは「自分の文章は完璧で、絶対だ」と思い込んでる人が多いので、そうすると、「なんで変えたんだ」って言われることが多かったですけども、それでも変な反発を買うよりはそのほうがいいかなっていう。 たられば:「SNS文脈」に落とし込んだほうがよいと。すごいなー、まさに職能ですね。 浅生鴨:わかっくれている人は「これをうまいことやってね」って言ってくださるケースもあったんですけどね。 たられば:シャープさんの場合は、これだけ有名になっちゃうと、なかなか「社内匿名化」は難しいと思うんですけど、どう調整しているんですか? SHARP:いやでも、日本の会社ってまだまだITリテラシー低いですよ。アカウントを始めた時に日本の(SHARP社の)社員が3万人いたんで、「まぁスマホも作ってるメーカーなんだから、ツイッターアカウントを作ったら(社員のうち)10%くらいはすぐフォローするやろ」と思ったら、「3」とかやったから。 たられば:フォロワー数3。 SHARP:その時に、ああそうか、そういう意味ではあんまりこう、「会社の力をあてにするのはもうないな」って思ったのがひとつあります。 たられば:まあ…「3」ですし。 SHARP:苦労した点、一番しんどいのはあれです。誰かとやり取りして、それがウケて、でもそれに対して「いかかがなものか」って思う人がまぁ社内にいて、それで呼び出されるんですけど、そうすると「これがなんで面白いのかここで説明しろ」っていうのがありまして。やっぱりもうそれは地獄なわけですよね。 たられば:あ、自分のギャグを自分で解説させられる。 SHARP:だってこっちは文脈もあったり、ツイッターのその時の空気もあったり、全部織り込んでやってるいるわけじゃないですか。それをあとから呼び出されて「君、これはどういうところが面白いのか説明したまえ」って言われるわけです。いやもう一番しんどかったですね。 たられば:「なんでこれ、石田三成に話しかけてるんだ」とか。 SHARP:それぞれその瞬間には意味はもちろんあるんですけど、だけどそれをあとで「解説しろ」っていうのは地獄でしたね。 浅生鴨:「やれよ」って思いますよね。「(自分でSNSを)やればわかるから」って言うしかないんですよ、本当に。 SHARP:そういうときに、ツイッタージャパンの人が見るに見かねて、一回SHARPアカウントのフォロワー調査みたいなのをしてくれたんすよね。 たられば:へー! SHARP:それで「フォロワーの9割が【ゆるいのはいい】と思ってます」っていうデータが出たり、あとはたとえば「冷蔵庫を買う時に、同じ値段でこっちとこっちとで迷ったら、ツイッターアカウントのことが脳裏に浮かびますか?」っていう設問で「浮かぶ」っていうのが86%くらいあったりとか、そういうデータを出してくれたんです。それでちょっと助かったところがあります。 (※参考データ浅生鴨:だからほんと、一番いいのは、企業のトップの役員なりがSNSを一回やってみて、空気を感じる、まぁできれば失言して炎上するくらいのことを役員がやってみるといいですよね。 SHARP:「まずスマホを持て」って話ですよね。もうそこから。

あの頃に会った人たちとは

たられば:続いての質問です。ほかの公式アカウントとの交流は、どのようなやりとりを心がけていましたか? 浅生鴨:これは、最初すごい悩んだんです。特にNHKなので、一般企業とやりとりをすることがはたして許されるのかって悩んで、一応NHK内の法務部のようなところに相談をしてですね、そこが「相手の企業の利益につながるのであればダメだ」と。 たられば:ふむふむ。 浅生鴨:でもたとえば「NHKがTBSをフォローしました」とか、「日テレとやりとりしました」っていうので、それでTBSの知名度が上がるのかっていうと、もう変わらないですよね。なので、そういう意味ではある程度知られているとか、ある程度人気があるとか、そういったところとはわりと普通にやりとりをするようにしました。 たられば:そこはでも、多少の制約はあったんですね。 浅生鴨:やりとりにしても、積極的にこっちから仕掛けるのは本当にごく稀な話で、向こうから何かやってきたときに切り返すくらいのことが多かったかなという気がします。 たられば:今の話は「ネガティブ方面」だったとおもうんですけど、「ポジティブ方面」で仲良くしほうがいいかなだとか、一緒になんかやったほうがいいみたいなことはないですか? 浅生鴨:ああ、あれは2009年でしたか、いろんなラジオ局の人とかを集めて、まあオフ会ですよね。行ったことがあります。たぶん今のNHKアカウントではそんなことはできないんだろうなと思うんですけど、もっというと、みんなツイッターとかやってなかったんで、だから誰も知らないんです。だからできた、という面もあって。 たられば:ちなみにそのオフ会は、行ってよかったですか? 浅生鴨:もちろんです。(その時の参加者と)いまだにずっとつきあいありますよ。 たられば:おおー、それはいいですねえ。シャープさんどうですか? SHARP:当初は、「会社同士が喋る」っていうものの目新しさっていうか、人同士じゃなくて会社同士が喋ってるっていう新しさが面白いんだろうなって思ってやっていたところがあるし、もっと言えば、お互いのPRを補完しあうことになりますよね。 たられば:補完しあう、というのは? SHARP:お互いのフォロワーに向けてお互いをPRできるわけです。だからある種の拡散補完みたいなことでいいかなって思っていました。でも、そういうふうにやっているうちに、ふと「もともと僕はお客さんと喋るためにこういうことやってきたのに、企業の人と仲良くするためにやるのもなぁ…」って思ってきた部分もあります。なので、基本的には「その交流が文脈になる人」と話すようにしています。たとえば、今日はタニタさんもこの会場に来ていますけど、「私とタニタさんの間に物語がある」というか、見ている人がそこに奥行きとかを認識してもらえるケースだとか、もっというと、そういう認識が作れる人と話すようにしています。 →第3部へ続く

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