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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:リアリティを作品に生むために、映像化した際の仕上がりを想像せよ!【他メディア展開から、企画の強度を磨く③】

コルク代表で編集者の佐渡島庸平さんが、長年温めてきた大ヒットを狙えるかもしれないマンガの企画を紹介しながら、アイデアを練る際の考え方も同時に伝授する連載「佐渡島庸平 presents 企画のおすそ分け」

 

2月は、0から1を生み出す企画の立て方ではなく、1を10にするための企画の磨き方についてお届けしています。テーマは、『他メディア展開から、企画の強度を磨く』です。


第1週の「小説」、第2週の「ゲーム」に続き、今週は「舞台・ドラマ、映画化」の企画の磨き方を考えてみましょう。


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リアリティのあるキャラクターとは?


「舞台・ドラマ、映画化」するって考えたときに、漫画家の人が頭の中でキャラクターを作っていくから、リアリティを欠いちゃうことがよくあります。


だからリアリティを欠かないように、過去の記憶をもとに、知り合いを変形させたり、自分を変形させたりして、キャラクターを作ったほうがいいよってアドバイスをしています。


あと、もうひとつの方法としては、現実にいる人の顔を使ってみて、その顔から性格を類推するやりかた。


新人漫画家であればあるほど、顔を軽視しています。顔と性格って、分かち難く結びついていて、関連しています。


だから、ぽっちゃりしているけどヒステリーなキャラクターだと説明がいる。ガリガリで骨ばっていてヒステリーだと、わかるわってなります。


青白い感じで、「実はメンヘラなところがあって」だと、「そうだよね」となるけど、すごく血色のいい人が、「実は俺、メンヘラなんだ」と言っても、「いやいや(笑)」みたいになったりする。顎の形、頭蓋骨の形、体型とかは、性格と連動しています。


新人だと作者が描きたい性格の表情だけでなく、体型、髪型、着る服とか、全部を想像する力って意外とまだないので、「この芸能人がこの人だったら、どうだろう?」って、やってみるといいです。


映画にはキャスティングプロデューサーという人がいて、どの役に誰をキャスティングするのかだけでも、すごい才能です。


だから、自分の作品は絶対に映像化されると思って、全部リアルな人だけでキャスティングしてみるのはすごく重要。


宇宙兄弟なんかは、実際のその人の性格とは違うと思うけど、明らかにその人っていう、小山さんの大好きな人たちが、いろいろとでてきます。くるりのボーカルの人とか、ラーメンズの人とか。


そのキャラクターにくるりらしさとか、ラーメンズらしさというのは残っていないんだけれども、その顔や雰囲気から想像する、丁寧さや細かさとかは、引き継がれていたりします。


第一話のポスターを作ってみよう!


あと、本と比べると、映像化ってすっごくお金がかかる。たくさんの人が巻き込まれます。本の場合は、作者が描きたいと思えばOKなんですが、映像化しようと思うと色んな人を説得する必要があります。


作品が売れてるからだけではしんどくて、映像化って聞いた瞬間に、なんらかの魅力みたいなものが感じられるかが、世界でも成功できるかどうかになってきます。


だから、自分の作品を一話書いたら、その一話のポスターを作ってみる。主人公を配置して、コピーを入れてみて、タイトルを入れてみる。そのポスターを見て、自分が観に行きたいと思うかどうかですね。


僕は地味な話を描きたい、人間味のある話を描きたいから、ハリウッドみたいな大味なのはやりたくないと言いながらも、自分のつくった一話目のポスターを見てみたら、「こりゃ、誰も行かないなぁ」と自分でも思うことは、すごくある。


人は言い訳がすごく上手い。本当は一瞬で魅了させられる物語が、思いつかないだけなのに、自分は地味な話が描きたいと、心底思っちゃっている人がすごくいます。


その人も本当は、派手な人を魅了する話を書きたくて、それを努力するために、新人として僕のところに会いにきたりしているはずだから。

地味な話が好きなんですって、自分の好きがわかっていると思っている人は、嘘をついている可能性があります。


例えば、小津安二郎の映画は、ポスターの構図から、なんとも言えない郷愁とか哀愁みたいなものが漂ってきていて、それを観たいと思わせる鋭さが実はあるんですよ。


だから、落ち着いた物語は存在する思うけれども、落ち着いた物語にも、すごい切れ味がどこかに潜んでいないとダメ。


そのためには俳優をリアルな人であててみる。そして、ポスターを作ってみるのは一個の手ですよね。


あと、映画とかドラマだと、リッチな背景を作り込むことができるけれども、舞台化だとリッチな背景を作り込むことはできません。


それでも、面白さが伝わることを考えると、瞬間的にシーンが変わったとわかる、記号みたいなものが必要。


キャラクターのことばかり考えていると忘れがちだけど、物語を作ってる時に、そのキャラクターたちが、どこで演技をすると面白いのかな?どこで演技をするとこの台詞が際立つのかな?って考えた方がいい。


崖の上で話しているのか?家の中で話しているのか?レストランで話しているのか?全部まったく同じ台詞でも、その三箇所だと、読者の受け取る印象って変わるはずです。


そこまで考えたほうがいいし、あとはやっぱり、自分のつくった台詞を役者が演じてくれる時に、本当に感情を込めれて喋れるのか?


「あっ、あなたはお父さんを亡くしてしまった◯◯さんですね!」みたいな台詞って、絶対に役者は気持ちを込められない。


新人の場合、まず自分の物語の設定をわかってくれない限り、物語がはじめられないと思っていて、各キャラクターに設定を言わせることを雑にやらせすぎています。


それは映像化した時に、俳優が監督に「この人、これをどんな気持ちで言っているんですか?」って聞いちゃうなっていう感じ。


だから、絶対自分で原稿を書いたら、それを自分で朗読しないとダメ。朗読した時に、感情を入れられているかどうかを確認して、役者が監督に聞かなくていいようなチェックをすることが、すごく重要です。


聞き手・構成 / 頼母木俊輔 @MOGGYSBOOKS & コルクラボライターチーム

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