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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:「楽しめるゲームの型」をマンガに応用し、作品の魅力を引き出そう!【他メディア展開から、企画の強度を磨く②】

コルク代表で編集者の佐渡島庸平さんが、長年温めてきた大ヒットを狙えるかもしれないマンガの企画を紹介しながら、アイデアを練る際の考え方も同時に伝授する連載「佐渡島庸平 presents 企画のおすそ分け」。


2月は、0から1を生み出す企画の立て方ではなく、1を10にするための企画の磨き方についてお届けしています。テーマは、『他メディア展開から、企画の強度を磨く』です。


第1週の小説に続き、第2週は「ゲーム」への展開から企画の磨き方を考えてみましょう。


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「楽しめるゲームの型」は「おもしろい物語に必要な型」でもある


佐渡島:マンガの他メディア展開で、ファンと作者が一番ハッピーになれるのは「ゲーム」で、いまは「ソーシャルゲーム」だと思います。中国では、二次展開されたソーシャルゲームのヒットが、マンガ家にとって貴重な追加の収入源になっています。


現在リリースされている多くのソーシャルゲームは、マンガや小説の持つ表現の豊かさに比べると、楽しめる幅はまだまだ狭い。それでも「楽しめるゲームの型」はあり、それは「おもしろい物語に必要な型」でもあります。この型にはめて、狭さを活かす物語を考えることもマンガの企画には必要ではないかと思います。


この型はソーシャルゲームだけでなく、これまでにヒットしたテレビゲームにも活用されているので、それらの事例を交えながら説明しましょう。


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主人公だけでなく、敵が戦う理由にも共感できるポイントを設ける


佐渡島:「楽しめるゲームの型」の構成要素には、「対戦」「成長」「育成」「収集」「交換」の5つがあります。


まずは「対戦」です。「敵」と言い換えてもよいかもしれません。私は、これが一番重要だと考えています。


魅力的な対戦には、「敵は何者なのか?」や「敵はどのような時に登場するのか?」など、丁寧な設定が必要です。


なかでも、敵が主人公と戦う理由に「これ、共感できるなぁ」と思えるポイントがあるとよいでしょう。「地球滅亡を企む絶対悪を倒す」ではなく、「敵と主人公の両方が正義である」ストーリーだと、大人でも楽しめる物語になります。圧倒的な悪を倒す勧善懲悪は、物語としてわかりやすいですが、大人にはリアリティがかけて感じられます。

敵と戦う理由をつくるのが非常にうまいと思う作品は、『機動戦士ガンダム』シリーズです。その設定の妙が、息の長い人気を誇る理由のひとつだと思います。



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登場キャラクターを量産できる世界観を構築する


佐渡島:「ソーシャルゲーム」への展開を考えた場合、キャラクターを続々追加させるために、敵も味方もキャラクターを量産できる世界観がマンガに内包されていることが求められます。さらに、強者のインフレ構造を感じさせない仕掛けが施されているかも大切なポイントです。『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』、『キン肉マン』は、次から次へとストーリーに合わせて様々なキャラクターが産み出されました。これらの作品は、いずれもソーシャルゲーム化されて、大成功しています。


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「成長」、「育成」、「収集」「交換」のやりこみ要素を盛り込む


佐渡島:2つ目の要素は「成長」です。『ドラゴンクエスト』シリーズを例に挙げると、主人公はモンスターとの闘いで経験値を獲得し、一定値に達するとレベルアップします。次のレベルアップに必要な経験値はわかるため、達するまでまた戦います。みなさんは、早くレベルアップしたくて、ストーリーそっちのけでメタルスライム狩りをした経験はありませんか?これも、楽しまれるゲーム設計の工夫のひとつだと思います。


3つ目は「育成」です。第1作目を除いたほとんどの『ドラゴンクエスト』シリーズでは、主人公以外の仲間たちをレベルアップさせたり、転職させたりして育成します。また、『ドラゴンクエスト5』ではモンスターを仲間にして育成したり、『ドラゴンクエストモンスターズ』シリーズでは、モンスターの配合によって新しいキャラクターを誕生させ、育成できます。読者の中には、ゲーム本編よりも育成に熱中してしまった方もいるのではないでしょうか。


最後の要素は「収集」「交換」です。装備品を集めたり、レアなアイテムを入手するためにマップの隅から隅までメダルを探索したり...。楽しめるゲームには、アイテムを全てコンプリートしたくなるような仕掛けが施されています。


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アイテムや呪文のネーミングを工夫する


佐渡島:『ドラゴンクエスト』シリーズには、成長や育成、収集したくなる仕掛けがたくさん盛り込まれていますが、なかでも武器・防具と呪文のネーミングは秀逸だと思います。


ストーリーの序盤に主人公が装備している武器はひのきのぼうで、防具はぬののふくです。次の段階になると、武器はこんぼう、どうのつるぎ、はがねのつるぎに、防具は、たびびとの服、かわのよろい、てつのよろいとグレードがアップしていきます。名前だけで、どちらを装備した方がよいかが直感的にわかるように工夫されているのです。


呪文も、メラとメラゾーマだったらメラゾーマの方が、イオとイオナズンだったらイオナズンの方が強そうですよね。収集するアイテムや習得する呪文などのネーミングを設定する際は、このようなわかりやすさを意識して考えるとよいでしょう。


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自分のコンテンツにおける「対戦」「成長」「育成」「収集」「交換」とは?


佐渡島:最後に、今回紹介した「楽しめるゲームの型」をどのようにしてマンガに活用するかを考えてみましょう。


対戦について、「物語の中で誰と戦い、何を困難とするのか?」や「何を大義に戦うのか?」という問いかけをすると、物語の設定が広がるでしょう。


次に、その対戦を通じて実現されるであろう「主人公にとっての成長は何か?」を問い、さらに「何を育成するのか?」を考え、「何を収集するのか?」についても検討しましょう。


これら全ての要素を予め設定することで、マンガが魅力的になるだけでなく、ゲームへの二次展開もしやすくなるはずです。


聞き手・構成 / 高橋淳一 @jayjaytakahashi & コルクラボライターチーム

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